受験勉強は役に立つのか


3000問vs300問


息子が中学受験のための勉強をがんばっている。お父さんとしては、何とか応援してやりたい。できることは何かと考えた末、彼のいちばん苦手な算数に付き合うことにした。


最初は机を隣に並べて、同じ問題集をせぇ〜ので一緒にやる。「さっすが、お父さん!」と改めて尊敬されたいところではあるが、これがそうは簡単にいかない。以前のエントリーでも書いたように(→ http://d.hatena.ne.jp/atutake/20080609)、小学校6年生では方程式は禁じ手である(実際にはそうではないことが、後にわかったのだが)。


というか、方程式を使えば確かに解けるのだが、計算がやたらややこしくなったりして時間がかかる上、計算まちがいすることもしばしば。なかなか難儀するのである。では、一体どうやって解けば良いのだと解説をみれば、何ともエレガントな解法があることがわかる。


という状態の4月5月を過ぎると、塾での勉強が激しさを増してきた。とにかく毎週持って帰ってくる宿題の量が半端じゃない。一週間でだいたい100問ぐらいある。しかも、どれもこれも問題を一読して「はいわかりました」となるレベルじゃないのだ(息子は授業で習っているから、すぐにわかるらしいけれど、こっちはそうはいかない)。なんというか問題そのものが長いというか、ややこしいというか。


はっきりいって、その問題にすべて付き合うとなると、こちらも相当な時間を覚悟しなければならない。そこで。


まず息子に一通りやらせて、わからない問題だけ解説を作るということで妥協してもらった。それ以来、息子が解いてきた問題が約3000題、私が解説を作るために考えた問題が300題ぐらいというわけだ。1問の解説を書くのに5分から10分ぐらいかかるから、これだけでもなかなかな作業量ではある。


おかげで賢くなった。


息子がではなく(もちろん、彼の学力もそれなりに向上しているわけだが)、私が。算数の解説を作るためには、たいていは図を書かなければならない。数式を書くのも、もちろん手書きである。だから平面図や立体図を書くのが上手にもなった。大した進歩である。もしかしたら鉛筆で数式や図をせっせと書いたことで、頭のどこかがうまい具合に刺激されもしたかもしれない。


最初は立体図形の問題がどうにも苦手であった。ということは、当然その親のDNAを受け継ぐ息子も立体は嫌いだったということだ。ところが、何問も繰り返して解いているうちに、だいたいパターンがあることが見えてくる。そうなればしめたものである。得意げに説明してやろうとすると、敵もさるもの「お父さん、立体はぼく、もうだいたいわかってんで」とのたまう。善きかなである。


そして方程式そのものではないが、方程式的考え方をうまく取り入れた解法も塾で教わるようになった。これがまた臨機応変というか優れて実用的というか。方程式を知っていると何も考えずにxだのyだのを使ってしまうところを、より実践的に最短・最簡単で答えにたどり着くには未知数をどう設定すればよいかを考えさせるのである。


そうして解いてみると、あら不思議。シンプルに方程式を立てて解くと、途中段階でめちゃややこしい分数計算などを処理しなければならない問題が、あっさり整数で解けたりする。かと思えば、妙なカタチの回転体の体積などは重心の移動で考える、などというこちらが知らないようなこと(もしかしたら高校のときに習ったのかもしれないが)を教えてくれたりもする。


受験勉強についてはもちろん賛否両論ある。あまりにも詰め込みが過ぎたり、厳しく追い込んでしまうと中学に入った時点で燃え尽き症候群になる恐れがあるといわれれば、確かにその通りだとも思う。でも、とりあえず楽しそうにやっている分には、どんどん先に進んでもいいんじゃないだろうかとも思う。


うちの息子君がどう思っているかと言えば、残念ながらまだ算数は難しい、でもやってておもしろい「とき」もあるとのこと。一緒に取り組んでいる父親ほどには楽しんでいないようだけれど嫌々やっているのでもなさそうだ。


少なくとも小学校だけではできない勉強(というか、むしろ学問と呼んでもよいような部分もあると思うのだけれど)にふれる機会があるのは、よかったんじゃないかと思う。


ただちまたでは「中学受験は親の受験」と言われるそうで、親の負担は経済面も含めて相当なものだ。だが、50を前にして弱り始めている頭を鍛え直すのには絶好の機会となった。そして息子と机を並べてかなり濃密な時間を過ごすこの一年間はたぶん、私にとっても得難い時間となった。なので少なくとも、うちの場合中学受験は親のぼけ防止には役に立ったといえる。これが息子にも何らかの役に立つことをひたすら願う。


昨日のI/O

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