オバマさんの演説vs?


視聴回数8700万


YouTubeでの再生回数である。昨年3月、YouTubeにチャンネル「You Choose '08」が開設され、これが大統領選挙での一種のポータルサイトとして機能した(日経産業新聞2008年11月4日付け4面)。


オバマ氏、ヒラリーさん、マケイン氏たちは選挙演説をするたびにビデオを撮り、せっせとYouTubeにアップする。それを全米の人が見る。おそらく今回の大統領選挙は、史上初めてネット動画が本格的に活用されるケースとなった。そしてネット活用の巧拙が結果をある程度左右したのではないだろうか。


オバマ氏は潤沢な選挙資金を持っていたが、その多くはネットを見た人たちからの小口献金だったという。チリも積もれば山となるのだ。


そのオバマ氏の演説をYouTubeで何回か見た。大統領選挙の演説を見るのは今回が初めてではなく、前回もかなり熱心に見ていた。このときはCNNが配信する動画ニュースが中心だ。


何がおもしろいって、さすが皆さん大統領候補だけあって、ものすごくわかりやすくて、しかも内容の深い英語を話されている。だからその頃取り組んでいた英語の勉強にはまさに最高の教材だったのだ。ちなみに前回大統領選で印象に残っているのは、ヒラリーさんとエドワーズさんである。


今回もヒラリーさんは、ほれぼれするような(って、どんなだ?と突っ込まれるとうまく説明できないけれど)演説ぶりだった。が、彼女にも増して思わず知らず引き込まれたのが、オバマ氏のスピーチである。


どこで読んだのかも思い出せないぐらいのうろ覚えで申し訳ないが、そもそもオバマ氏が今回大統領候補になったキッカケは、4年前にどこかでやった(民主党の誰かを応援するためだったと記憶する)演説にあったという。オバマ氏の演説には、それを聴いていた民主党員すべてをエンパワーメントするぐらい強烈な力があった。そのことを覚えていた人たちの熱烈な支持があったからこそ、まだ40代後半にも関わらず大統領候補に名乗りをあげることになった。


もとより、いくらYouTubeをうまく活用したとはいえ、それはあくまでメディアに過ぎない。ポイントはコンテンツ、すなわちオバマ氏のスピーチにあるのだ。もちろん優秀なスピーチライターを抱えているのだろう。が、たとえばテレビ討論などで繰り広げられるリアルタイムな話を聴けば、オバマ氏自身がいかに優れた話し手(ということは問題意識が常に明確であり、それを的確な言葉で表現できる能力を持っているということだ)であるかが、よくわかる。


初めにことばありき。『ことば』こそが人を動かすのである。


だから政治家であるならば、何よりもまず自分の『ことば』に敏感でなければならないし、公の前ではつねに自分の語る『ことば』に責任をもたなければならない。逆にいえば、オバマ氏はそれだけの『ことば』を語れるからこそ、アメリカの大統領足りえるのだ。


語る『ことば』に深みを与えるのは、その人の生き様である。敏腕ライターが原稿を作れば、それなりのスピーチをすることは不可能ではないだろう。しかし、自らの生き様(ということは問題意識とそれについての思索の積み重ねということ)をバックボーンにもたない『ことば』、上っ面のスピーチで語られる『ことば』は軽い。


と同時に恐ろしいことに、生き様が『ことば』に出るということは、仮に普段の愛読書がマンガでしかなかった場合、ふとした弾みにもれる『ことば』もマンガ並みを超えることはできないのが理路である。


翻って日本の政治家を見たときに『ことば』に力を持つ人が、どれだけいるだろうか。あるいは、このように考えてみてはどうだろうか。日本の政治家の中に、アメリカの大統領候補になり得るほど『ことば』に力を持っている人が誰かいるだろうかと。


日本でもYouTubeニコニコ動画で『ことば』を配信している政治家はいる。が、その『ことば』はあまりに薄く、浮いている。その話からは残念ながら何も伝わってこない。というか最後まで聴こうという気にならない。


ただ

ニコニコ動画派遣労働者問題を追及する志位和夫共産党委員長の予算委員会での質問が数万回視聴された事実は軽く見るべきではない(前掲紙)

という事実に、少しだけ希望を感じる。まだ然るべき人の『ことば』は、きちんと通じるのだ。


であるなら、自らの『ことば』に自信のある政治家は、YouTubeでもニコニコ動画でも何でもいいから、もっともっと『ことば』を発するべきである。だれか政治家のスピーチ・ポータルサイト&恪付けもできるサイトでも作ってくれないかしらん。


昨日のI/O

In:
ヨセミテ・津田全泰社長インタビュー
Out:
近畿大学工学部インタビュー記事


メルマガ最新号よりのマーケティングヒント

「タイムマシン経営」
http://blog.mag2.com/m/log/0000190025/
よろしければ、こちらも。

□InsightNow最新エントリー
「変わり続ける企業ユニ・チャームのすごさ」
http://www.insightnow.jp/article/2426

昨日の稽古: