2兆円で解消する(かもしれない)格差


定額給付金は2兆円


昨日、国会で補正予算案が通った。が、ちょっと待てである。ここは誰もが「おかしい」「そんなの役に立たない」と疑問符を付ける予算の使い方をするのではなく、それこそ「麻生太郎、立派なり」と後世に名を残す予算を作ってはどうか。


名づけて「格差解消教育予算」である。ほとんど公明党のゴリ押しで(ということは創価学会に相当な寄付が集まることが推測される)、バラ撒かれる定額給付金などではない。格差を解消する一助となる、あるいはいまの教育の流れに一石を投じる予算の使い道がある。


2兆円で何をするのか。学校に補助教員を雇うのだ。


対象は小学校の低学年だけでいい。いまざっと新生児が年間100万人ぐらいのはずだから、小学1年生も100万人と仮定する。この子どもたち20人に一人の割合で補助教員を付ける。必要な人数は5万人である。


さて2兆円の予算で5万人ならどうなるか。あくまで算数の(できれば国語にもつけたいけれど、そこは絞るとして)授業だけを補助してもらう要員とする。ならば年間200万円ぐらいの人件費を払えばよい。これで必要な年間予算は1000億円となる。2兆円あれば20年間雇い続けることができる。


年間200万円はいくらなんでも安いというのなら、400万円にしたらどうなるか。これでも5万人を10年間雇い続けられる。このあたりのやり繰りは、いくらでも変えられるはずだ。


では、その補助教員に何をしてもらうのか。教員というからには教員免許がなくてはならぬという堅苦しい議論は、この際なしにしよう。なぜならあくまでも補助教員である。彼らに求める役割は、小学校の最初の算数の授業ですでにリタイヤしようとする子どもたちの相手をすること。だから誰でもいいというわけではないが、そんなに難しい業務を課すわけではない。


授業についていけなくなりかかった子どもたちに「もうちょっとがんばれ。ほら足し算だったらこうなるだろ」とか「引き算なんて簡単だよね」とか。あるいは「じゃ一緒にかけ算の九九を覚えようよ」等々子どもたちのそばについて、ごくごく簡単なフォローをしてもらう。


これがもしかしたら格差社会の解消のための『初めの一歩』となりはしないか。なぜならば、格差はおそらく小学校時代、それも低学年から始まっているからだ。これをイニシャルデバイドという。


格差社会に教育が影響しているとする研究『階層化日本と教育危機』(苅谷剛彦/有信堂)によれば、小学校に入る時点で子どもにはすでに何らかの格差がついてる可能性が指摘されている。低所得層世帯を中心に、親が教育に対して何ら期待していない可能性があるというのだ。自分たちが勉強をがんばらなかったから、低所得層に甘んじているのか。あるいはその親の世代から低所得そうだったが故に、勉強をがんばっても仕方ないと諦めたのか。


その因果関係はちょっと措くとして、重要なのは低所得層を中心に教育に期待しない=勉強をすすめない親が増えているという事実である。だから、小学校入学時にすでに子どもたちの間では、勉強に対するモチベーションが微妙に違う。


その微妙な差異は、小学校以降でどんどん開く方向でいま固定されつつある。すなわち、ピッカピカの1年生時代にはそれほど差はないのに、学年を重ねるにつれてどんどん勉強がイヤになっていく&家でも勉強しなさいといわれることのない子どもたちが増えていく。恐らくは割る数が二ケタのわり算が入ってきたあたりで何分の一かが脱落し、さらには分数に進んだ時点で相当数の子どもが算数を決定的に嫌いになる。


長じて彼らは、学校の勉強から降りることを自己評価するようになる。ここで決定的なインセンティブデバイドが起こる。当然の結果として身につける教育レベルに差が付き、それが所得に反映されるサイクルができつつある。というのが『階層化日本と教育危機』の問題意識である。


その先に何が待っているのか。おそらくは格差の強化であり、固定化だろう。そこで、冒頭の補助教員の出番となるわけだ。とにかく小学校低学年時代、まだ接し方次第では子どもたちのモチベーションを刺激することが可能で、その成果が出やすい段階で落ちこぼれることを防ぎ、勉強するおもしろさを感じさせ、学ぶクセをつける。


だから補助教員には、教務能力が特別なくても良い。ふつうに子どものそばにいて、勉強をがんばる助けをしてやれば良い。勉強することはいいことだし、勉強したら誉めてもらえることを実感させるのだ。というような補助教員を全国で5万人雇うのに2兆円使う。これなら誰も反対しないのではないか。ついでにいえば5万人の雇用が10年ないしは20年確保されるわけだ。


こういうお金の使い方をしてこそ「麻生さん、よくぞやってくれた」と後世に必ず名を残すことになると思うのだが、いかがだろうか。何なら漢字の読み方も教えるともっと良かったりして。




昨日のI/O

In:
Monotaro瀬戸社長インタビュー
Out:
カクヤス佐藤社長インタビュー原稿


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