弁当男子の時代


一人で外食する回数・金額が減った人22.1%


ビジネスパーソンの2〜3割が、外食する回数、金額ともに減ったと答えている。これは調査が行われた時点での実績レベルでの数値だ(日経産業新聞2009年2月6日付4面)。


すでに起こってしまったことなので、これについてはどうこう言っても仕方がない。そりゃ、これだけ倒産だ、人員削減だ、百年に一度の大不況だって騒ぎ立てられれば、外食してお金を使うより少しでも貯めておいた方がいいんじゃないかと誰だって思うだろう。


だから今のままでは定額給付金なんていくらバラ撒いても無駄に終わると思う。だってみんな、使うお金は少しでも切り詰めておきたいって考えているのだから。


一人あたまでみれば1万2000円は大したことないかもしれないけれど(だからほいほい使ってしまいそうな気もするけれど)、たとえば4人家族なら5万円ぐらいになるのだ。家族に子どもがいれば、確実に5万円は超える。これはちょっと大きい。残しておきたい額である。


という話をしたいのではない。外食産業にとって問題なのは、この先である。今はしんぼうしているけれども、それもちょっとしんどくなってきた。だから、そろそろちょっとぐらい外食してプチぜいたくな気分を味わいたいではないか。そう考える人が増えつつあるなら、これは朗報である。今後のトレンドに期待できる。


ところが、だ。まだまだダメみたいである。


少なくとも現時点では全体の3割以上の人が外食利用を、今後も減らしたいと考えているらしい。これは問題だ。まだまだ、多くの人が景気の先行きについて決して楽観していないからだろう。それもむべなるかな。一国のリーダーがあれほどまでにお気楽にふらふらされていては、少なくとも首相が変わるまでは日本も変われない。すなわち景気がよくなることなどあり得ない、と感じても当然だ。


今さら言うまでもなく、経済なんて心理に左右される面が大きい。みんなが大丈夫、このリーダーなら何とかしてくれると思えば、少しずつではあっても明るい気分が広がり、お金も使い始めるだろう。が、今ですらまだ最悪には達していないのではないかと疑心暗鬼状態である、何をどういってもダメだろう。


しかも、噂によれば(どこかの新聞で読んだ記憶がある)麻生さんは「日本のどこが景気悪いってんだ。アメリカやイギリス、ロシアに比べればずいぶんマシじゃねえか」なんてことを例のべらんめえ調でのたまったらしい。そりゃ確かに麻生さんが通っているような高級レストランに料亭、ホテルのバーには依然としてセレブな方たちが来られているのかもしれない。


しかし、客単価500円ぐらいのうどん屋さんや2000円未満のもつ鍋屋さんの経営状況を見ていると、単価下落はじわりじわりと効いてきている。それこそ昼ゴハンは何とかワンコイン以下に抑えて、缶コーヒーを買うお金をとっておきたい。そんな人たちが増えているのだ。『千円亭主』なんて言葉があったけれど、それも今や『ワンコイン亭主』へ下落しつつある。


特に四国は深刻である。四国以外の人はほとんど気にしないだろうけれど、クライアントが四国にある身としては、このところ四国中央市で立て続けに起こっている倒産劇にはほんとうにハラハラさせられる。


そういう状況があるから(必然的に)登場したのかどうかはわからないけれど、実にタイミングよく日経MJ新聞が取り上げていたのが『弁当男子』である(日経MJ新聞2009年2月4日付16面)。

自分で弁当を作って職場に持参する若い男性、いわば「弁当男子」がじわりと増えている(前掲紙)

そうだ。この「じわり」というのが微妙な表現で、実数としてどれぐらい増えているのかはわからないが、確かに凝った弁当を若い男性が持ってきていれば目立ちはするだろう。


実際数字の裏付けも若干はあるようで、男性に人気の弁当箱が少しは売れていたり、弁当箱が入るビジネスバッグが売れていたりする。ほんまかいなと思わないでもないが、そうらしい。少なくとも49年間生きてきて、弁当など一度も作ったことのない身としては簡単には信じられないのだが。


ただ、こうした話が出てくるとそろそろかなと思わないでもない。ええ加減、みんな、節約一辺倒の暮らしぶりには飽き飽きし始めているはずだ。だから、このあたりで何か明るいキッカケでもあれば、トレンドは変わると思うのだけれど、どうなのだろう?


果たしてそのキッカケは何か、そしていつか。入学シーズンぐらいに例えばクルマの売れ行きが底入れした、なんてニュースが出てくると流れは変わるんだろうけれど。あるいは麻生さんが退陣して、自民党に救世主が現れるとか(誰かいるんだろうか?)。そうなってほしいものだ。


と書き終わってから、娘さんの弁当をせっせと作っている知人がいることを思い出した。



昨日のI/O

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Kiwi Friend野口社長インタビュー原稿
綾戸智恵さんインタビューメモ

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