段ボール箱との戦い


その数、約90箱


本箱の本を全部入れるのに、これだけの段ボール箱が必要だった。前回の引っ越しはフルお任せパックだったが、今回はお運びだけ。荷造りはもちろん、箱から出すのも自分でやらなければならない。


とはいえ、本は基本的に形の決まったものである。それを段ボールに入れるだけなら、これは極めて単純作業。いくら二部屋分の本棚の本を全部詰めるといっても、そんなに大したことはないだろうと考えていた。引っ越しが土曜日だから、前日の金曜日一日あれば、楽勝だと思っていたら、これが大間違いだった。


まず最初の本棚に取りかかった時点で、いかに自分の見積りが甘かったかを思い知る。とりあえず最初の本棚の本を入れるのに10箱の段ボールが必要となった。うちの本棚は基本的に前後二列体制で本が詰め込まれている。だからごく普通の本棚ではあるけれども、結構たくさんの本が詰め込まれているのだ。


その本棚が全部で9本ある。加えてこれまた本がぎっちり詰め込まれたカラーボックスが5つある。一つ目の本棚を詰め終えてわかったのが、決定的に段ボール箱が足りないこと。単純計算で考えても90箱は必要だ。今回の引っ越し屋さんはかなり綿密な見積りをして行ったらしく、サービスも含めて段ボールは80箱置いていってくれた。


が、家にあるのは本だけではない。家族3人住まいとはいえ、やたらと荷物が多いのだ、なぜか。本以外の荷物をほぼ詰め終わった時点で、残っている段ボールは40個ほど。本以外にも結構たくさんある机まわりのごちゃごちゃしたものまで入れるとなると、あと80箱ぐらい必要だ。


これはえらいこっちゃと引っ越し屋さんに電話すると、段ボールを届けてもいいが、クルマが出払っているので夜になるという。本棚一本にかかった時間から考えて、夜に持ってきてもらったのでは徹夜しなければならない恐れがある。そこでわざわざクルマに乗って、こちらから取りに行った。


そしてどんどん詰めて行く。本だけを詰めるのは、それほど面倒な作業じゃない。ほとんど何も考えずに入れる。なまじ、この本がこの本棚にあるのはおかしいではないかとか、おや、こんなところに探していた本があったか、などとやっていたのでは時間切れになる恐れがある。


この『なんも考えずに本を箱に入れる』作戦で、本棚はわりとあっさりと片付いた。が、そこから先、机まわりのごちゃごちゃを何とかやっつけるのには、えらい時間がかかった。机まわりのごちゃごちゃとは基本的に紙である。これまで書き溜めてきた企画書や原稿、あるいはそれらを書くために集めた資料類だ。


作ってから時間が経っているものをこの先、使うことはまずないだろう。ないとは思うが、捨てるのは忍びない。というか、今からだと捨てに行く時間がない。勢い、これも段ボールにしまわなければならない。これが意外に手間取った。


朝から始めた作業の、何とか先が見えたのが夜の9時前ぐらい。残りは明朝5時起きぐらいで何とかカタがつくだろうということで、ようやく晩ご飯にありついた。


引っ越し屋さんは10畳間と6畳間を埋め尽くした段ボール箱を見て、応援を呼んだ。見積りではスタッフは4人となっていたが、最終的には10名に増員されていた。そして昼前に荷物は積み終わり、いざ京都へ。


今回の引っ越し先は住まいと仕事場の2カ所にわかれることになる。私は仕事場で荷物を待ち構えることにする。最初に家具(といっても本棚9本と机が三つ)とミニ冷蔵庫、ソファが運び込まれる。この時点までは引っ越し屋さんも元気で明るく、冗談も口にしていた。


が、段ボールを運び込むにあたって、どんどん口数が少なくなる。「あと、どのぐらいでしょう?」恐る恐る尋ねると、まだ3分の一ぐらいですとか、あと50ぐらいですとか。家具だけが運び込まれた状態では広々としていた仕事場は、段ボールだらけになってきた。部屋の真ん中に空けたスペースが段ボールで埋まり、机の上が段ボール置き場となり、クローゼットの前で段ボールで塞がった。


その最後の段ボールを運び終わった引っ越し屋さんは、うんざりといった顔つきをしていた。でも、これから、その段ボールを開けていかなければならないのは自分だ。これはえらいことになった。そして決めた。これからは本を一冊買ったら、これまで買った本の中から一冊処分することをルールにしようと。



昨日のI/O

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