キッチンひとさら

ニンジンのピューレ



ランチセット880円


『キッチンひとさら』さんである。すごいのである。うまいのである。手間がかかっているのである。マスター(女性だからミストレスというべきなのか)シェフの愛想が抜群に良いのである。そして安いのである。


どうだ! 参ったか!


京都に引っ越して何が良いかといえば、メシ屋にとてつもなく恵まれていること。これに尽きる。住まいから歩いて(歩いてですよ、ということはどんだけ飲んでも大丈夫ってことです)5分圏内(たったの5分ですよ、ということはどんだけへべれけっても平気だってことです)に、いったい何軒お店があることか。


犬の散歩ついでにうろうろ見ている限りでは、少なく見積もってざっと50軒、見落としているお店があることを計算に入れるなら百軒ぐらいあるかもしれない。和食、洋食、中華に細かく見れば、中華だって上海家庭料理なんてところがあれば、海鮮中華がある。北方餃子専門店もある。ご存じないかもしれないが、餃子は中国でも北が本場である(と聞いたことがある)。


洋食は言うまでもなくフレンチ、イタリアンがよりどりみどりだ。これだけ競争が厳しいと、どのお店も何がしかの特長をアピールしておられる。どこもうまそうである。和食なんて天ぷら専門店があれば、鍋屋があり、手打ちそばもある。もっと気楽なお好み焼き屋さんも揃っている。


ちなみに引っ越してきて最初の夜は、歩いて1分のお好み焼き屋さんに行った。これが大当たりのコンコンちき、うまいし、店長がとっても機嫌の良い人だし、安いしで一発で気に入ってしまった。そりゃ学園前にもありましたけれどね、お好み焼き屋さん。サービスも味もすべてにおいてこのお店の方が上回っている。ちなみに、こちらは『たちばな』という。


というぐらいにお店に恵まれていて、行って見たいところは山ほどあればまだそのうちの5軒ぐらいしか行けてない。そして、今日ようやく新たに巡り会ったのが『キッチンひとさら』さんというわけだ。


飾り気のほとんどない店である。入り口一間、そのまま奥までカウンターだけで8席ほど。ガラス戸に「本日のランチ」と書いた黒板がぶら下がっている。メニューはと見れば、サラダ、自家製パン、ニンジンのピューレ、鶏の豆乳クリーム煮、アジのフライ、ひじきごはんにお味噌汁。しかも化学調味料は使っていませんと。


パッと見てお店にコストがかかっていないことがわかる。場所は仏光寺通りを新町から少し西に入った南側。京都のど真ん中ではあるが、ちょっと裏通りである。恐らくは家賃もそんなに高くないだろう。という店を女性シェフが一人で切り盛りしている。


ランチはワンメニューしかないが、一品ずつ温めたり、揚げたりしてとてもていねいに作っていることがわかる。こりゃ期待できるかもと思って、最初のパンを食べて確信した。これは当たりである。自家製パンの塩加減が絶妙、かつパンの耳がしっかりうまいのだ。


次に出てきたニンジンのピューレは、自然の甘みがとてもさわやか。しかもていねいにニンジンをすりおろしているからだろう、舌触りがクリーミィである。続けて出てきた鶏の豆乳クリーム煮は、味付けにかすかに醤油を利かせているようで、豆乳、醤油の絡み具合が絶妙。アジのフライはカレーソースがかかっているのだが、とろみがほんのり甘く、かりっとしたフライに合う。


そして最後のひじきごはん。ひじきは細かく、じゃこと小さな海老まで入っている。味付けは正統京風、うす味とはいえしっかりしたうま味だ。そして、食べ終わって少し話をしてみると、ご出身が奈良だというではないか。これは縁である。


聞けば、このお店は居抜きで入れたから、お金がかかっていないとのこと。その上で一人でやっているから、コストを抑えられている。その分をお客さんに還元しているという。料理を作るのが好きだから、手間をかける。その手間が味に生きているのは、確かな技を身に付けられているからだろう。


京都へ来られる方、ぜひ『キッチンひとさら』へ行かれんことを。もちろん、このブログをお読みで、京都は来られた方はぜひご連絡ください。ご案内しますので。


何しろディナーセットは12品ぐらいでてくるのだ。それで一人2400円である。早くディナーを食べに行きたいと思う今日のランチであった。

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Z会式大人道場/Z会編』
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