なぜ『ひとさら』さんは一皿なのか


小さなお皿が合計9つ


のっけから、食い散らかした写真で申し訳ない。が、この絵こそが、このお店の核心を語っているので、あえて載せてみた。880円のランチメニューを食べ終えたあとの様子だ。


サラダ、自家製パン、玉ねぎのムース、里芋のお団子焼き、イワシフリット、じっくり煮込んだカレー、ごはん、お味噌汁、自家製抹茶のムース。


わざわざ一皿ずつ出してくれる。『キッチンひとさら」さんである。このお店についてのエントリーは、これで3回目。ちょっとしつこいかもしれないが、お店に行くたびに書かずにはいられないのだ。
http://d.hatena.ne.jp/atutake/20090503/1241331939
http://d.hatena.ne.jp/atutake/20090418/1240029300


名は体を現す。店名がすべてを物語っていることに、今日気づいた。食べ終わって、お皿を並べてみると9つある。一つひとつのお皿はとても小さい。それはシェフが、おいしいものを少しずつたくさん食べてほしいと考えているからだ。


であるなら、忙しいランチメニューぐらいは大皿にいろんな種類の料理を盛り合わせて出しても良いではないか。普通はそう考えるのかもしれない。一人の客に9つも皿を使うということは、洗い物もそれだけ増えるということ。ましてや一人で切り盛りしているお店である。本当なら洗い物は少しでも減らしたいと思って当然である。


しかし『ひとさら』さんのシェフ(女性ですよ)は、決してそんなふうには考えない。なぜなら「おいしいものを、少しずつ、たくさん食べてほしい」と、それだけを考えているから。


おいしいとは、どういうことか。素材を選び、ていねいに下ごしらえをし、細心の注意を払って調理をして、味付けを仕上げる。さらに温かくいただくべきものは、そのうま味が最も活性化されるあったかさで。冷たいままを楽しむ料理なら,きりっと冷して。


そのためには、温かい料理と冷たい料理を一つの皿に盛っちゃダメなのだ。一つひとつの料理を、面倒だけれども、ひとさらひとさら取り分けて出さないと、本来のおいしさが損なわれるのだ。だからこそ、一つひとつの料理を、一人分ずつその都度調理するのだ。


おそらく、シェフはそのすべての作業について「面倒だ」などとは、まったく思っていないのだろう。そんな考えはつゆほども頭にはなく、ひたすら「どうしたら、よりおいしく食べてもらえるか」だけに集中しているのだと思う。


だから『ひとさら』さんの料理は、食べる人を洗脳する。どの料理を食べても「あぁ、この名前の料理は、この味がベストなんだ」と思わずにはいられない。さらに、これは個人的なクセの問題なのかもしれないけれど、同じメニューを繰り返し食べたくなる。


ここは少し説明が必要かもしれない。今日のランチでは、三品目の玉ねぎのムースは、ニンジンの冷たいスープにしても良かったのだ。どちらかを選べるコース設定になっていたのである。玉ねぎのムースは前回のエントリーで書いた絶品である。


それが絶品なら、ニンジンの冷たいスープだってすばらしいに決まっている。決まっているのだから、いま食べなくて良いと思ってしまうのだ。それより、まだ舌に記憶が残っている玉ねぎのムースを、もう一度食べたいと考えてしまう。それぐらい、美味しいのである。


これをもって『キッチンひとさら』さんの洗脳的美味と名付けることにした。そんな料理を、とんでもないお値打ち価格でたべさせてくれるのが、このお店なのだ。考えてみれば、最初に出してくれるサラダでさえ、一人分ずつ調理している。サラダも決して付け合わせなどではなく『ひとさら』さんでは料理なのである。


昨夜は出張で帰りが遅くなるために、晩ご飯は一人で『ひとさら』さんで食べようと決めていた。帰りの新幹線の中から、晩ご飯のことを考えて、とっても幸せな気分に浸っていた。ところがお店に行ってみると、満席である。個人的にはめちゃめちゃ残念でがっかりしたけれど、それでも『ひとさら』さんのようなお店があることを、一人でも多くの人に知ってもらえたら、その方がうれしい。



昨日のI/O

In:
『マイ・ビジネス・ノート』今北純一
ルナスケープ社近藤秀和社長インタビュー
Out:


昨日の稽古:

拳立て、レッシュ式腹筋