Change is Chance



1990年比25%減


民主党マニフェストに詠うCO2排出目標だ。この目標を巡って経済界は「そんなの無理だ」「そんなことをしたら日本企業の競争力が落ちる」などと騒いでいる。確かに厳しい目標ではあるのだろう。しかし、仮にこの目標を達成できたとき自分たちがどれだけ優位になるかを考えてみてはどうだろうか。


よく言われる松下流改革である。コスト削減を考えるなら3%を目標にするのではなく3割をめざす。かなり無茶ではある。しかし無茶な目標を掲げることによって、自分の思考の枠を良い意味で「ぶっ壊す」ことができる。


なぜなら3%削減なら現状の延長線上でがんばっても、何とか達成できそうな気がする。従って基本的なマインドセットは変わらない。ところが3割削減となれば、まったく別のパラダイムが必要になってくる。求められるのは発想の転換、ブレイクスルーはそこで起こるのだ。


では民主党政権になって企業の経営環境はどう変わるのだろうか。マーケティングのイロハのイ、事業環境をとりまくマクロの状況変化をきちんと考える必要がある。いわゆるPEST分析である。PESTとはPolitical(政治的=法律、税制など)、Economical(経済的=景気、物価、為替など)、Social(社会的=人口、世論など)、Technological(技術的=新技術、特許など)の頭文字を取ったことばだ。


マクロの変化は必ず、プラスとマイナスの両方向の影響を与える。例えばCO2削減に関して言えば、電力産業を筆頭に鉄鋼や化学などCO2排出量の多い産業にとってはマイナスに働くだろう。しかし発電機器に関しては明らかに新しいマーケットが生まれるはずだ。これを見越して九州や北海道には「風車村」ができつつあるという。


「風車に使われる部品は約1万5000点。従来の自動車の半分近くあり、関連産業が広がりやすい。実際、九州には三菱重工を核に「風車村」とよばれる部品産業の集積が生まれつつある(日経産業新聞2009年9月2日付1面)」わけだ。


これにより造船関連の部品メーカーが息を吹き返しているという。民主党へのChangeがChanceを生んだ好例ではないか。エネルギー関連でいえば、LEDの普及にもいっそうの弾みがつくのではないだろうか。もしかしてこうした動きを読んだ上で思い切った低価格化に動いたのだとすれば、シャープにはすばらしいまでの先見の明があったということになる。


民主党マニフェストの目玉は他にもある。中でも影響力の強そうなのが子どもへの手当と高速道路の無料化、もう一つあげるなら製造現場への派遣禁止だろう。子どもへの手当については、とりあえずマイナス要素が見あたらない。そりゃ確かに財源をどうするのか、これ以上国債を増発して大丈夫なのかといった議論はあるのだろうが、これは別次元の話だ。


子ども手当が出ることで明らかに恩恵を受けるのが学習塾業界だろう。ここには明らかに追い風が吹く。それをどう活かすのか。つい最近いくつかの大手塾が提携や吸収合併に動いているのは、このチャンスを逃さないための策だ。


高速道路無料化に関しては、一部で「全部はやらない(本当にそんなことを仰ったのか馬淵議員は?)」などという話も出ているが、とりあえずダメージを受けるのが、フェリーに鉄道だ。一方では高速道路を使う事業者には極めて有利な条件がもたらされることになる。例えば高速バスであり、運送業だ。


といった具合に今回の政権交代のようなBig Changeは当然、Big Chanceを生む。このチャンスをいかに活用するのか。追い風を受けるための帆を膨らませて、加速を付ける動きをできる企業にはまさに恩恵である。


あとは民主党の皆さんが、何としても、既存利権勢力からのどんな抵抗があったとしても、マニフェストを実現してくれるよう応援するばかりだ。



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昨日のI/O

In:
『中空構造の深層』河合隼雄
Out:
島根大学インタビュー原稿
K社さまインタビュー原稿

昨日の稽古: