その人について聴くおもしろさ



広報のプロ7人


前回のエントリーでご紹介したコラム『女子広報の本懐〜彼女がコミュニケーション上手なわけ(→ http://wol.nikkeibp.co.jp/article/column/20090902/103970/)』を書くため、この夏からせっせと広報さんにインタビューしてきた。


これが実にエキサイティングなインタビューなのだ。そもそも人の話を聴くのは大好きである。大きく分けて「しゃべりたい」派か「聴きたい」派かと問われれば、明らかに「聴きたい」派である。幼少の頃は人並みに自己中&おしゃべりな方だったと言われるのだが、多感な青春期をブンガクの世界に籠もりきって過ごしたがために、いささか口が重くなった。


故に人としゃべるのが、どちらかといえば苦手である。とはいえそれだけでは社会生活をまともに営めない。苦肉の策として選んだのが、聴き手に回ることだった。職業上の必要もあって、この人生戦略はなかなかに功を奏す。


人の話を聴いて文章としてまとめる。これはライター仕事のみならず、プランナーとして、さらにはコンサルタントとしてものすごく役に立つ能力となっている。今曲がりなりにも食えているのは、この能力のおかげだ。そして、おそらく人の話を聴くことについては経験知が大きく物を言う。すなわち聴くことに意識を集中して人の話を聴く経験を重ねてきたことが、自分にとっての得がたい財産となっているのだ。


さて、広報さんの取材である。これは従来の取材とは、まったく趣の違う取材となった。これまでの取材は、その人がよく知っている何か特定のテーマについて話を伺うのだ。例えば環境問題に詳しい女性国会議員に環境問題の現状と世界の動きを聴く、あるいは経常利益率が異常といえるほどに高いメーカーの経営企画室長に、その企業の戦略について聴く。


明快である。インタビュイーも何について答えれば良いのかが、よくわかっている。ところが広報さん取材は違う。


『あなたはなぜコミュニケーション上手なのか。その秘訣は何か』がお題だ。そんなこと、いきなり聴かれても、というテーマではないか。最初はかなり難しい取材になると覚悟した。なぜならこちらの下調べがまったくできないから。社会的なテーマなり、特定企業についてなりならばいくらでも事前調査ができる。ところが、今回はそうはいかない。


事前に何もインプットできないと言うことは、勢い出たとこ勝負にならざるを得ない。しかも、これまでお会いした広報さんについては、その中のお一人こそよく知っていたものの残りの方は初対面、もしくは一回お会いしただけ。何も知らない、わからない。まさにおっかなびっくり状態でお会いして、いきなり「あなたは、どうしてコミュニケーション上手なのですか」などと切り出すのだ。これは真剣勝負である。


だから、実はめっちゃおもしろいのだ。もちろん、一応取材のフォーマットは決めている。こんなことをお聞きしたいのですと事前に質問項目を送ってもいる。しかし、いざ話を聴いてみると、必ずどこかでぐぐ〜っと深掘りするポイントにぶち当たる。


いろいろ聴いているうちに「ここが勘所じゃないだろうか」と感じるポイントにぶつかるのだ。この瞬間はちょっとした鳥肌ものだ。とはいえ焦らず、慎重に質問を組み立てながら聴きだしていく。これが極めて新鮮なのだ。従来のインタビュー仕事にともすればありがちな予定調和は一切ない。むしろ、今聴いている話が次にどう転がっていくのかがまったく見えない。このスリル感、これこそがもしかしたら本当のインタビューなのではないか、そんなふうにさえ思えてくる。


といって話がどこにずれていっても構わない、わけではない。あくまでも通奏低音として流れているのは「なぜ、あなたはコミュニケーション上手なのか」という根底の問いである。これを意識しながら、相手の話を聴き込んでいくと「あっ、それちゃうん!」と閃く瞬間がある。


非常におもしろいことに、この閃きはどうも相手にも共有されているらしい。「なんだか話しているうちに、自分でも気がついていなかったことがわかりました」なんて言ってもらえることもある。いや、実におもしろい。


これって、もしかして仕事にならないか、なんてことを思ったりする。つまり「あなたの知らない、あなたのとある側面。私とお話ししながら見つけてみませんか」なんて具合に。と思ったが、これってインチキ宗教と紙一重のような気もするなあ。


★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
ホームページ、リニューアルしました。
ぜひ、一度見てやってください。
http://www.com-lab.org/
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

昨日のI/O

In:
『文章作法入門』中村 明
Out:
樋渡・武雄市長インタビューラフ原稿
孔 怡氏インタビューメモ

昨日の稽古:

拳立て・レッシュ式腹筋