処罰された自民党



308対119


自民、民主がなぜこれほどまでにドラスティックに入れ替わったのか。少し前の日経に興味深い考察が載っていた。「日本の有権者は初めて自民党を処罰することに成功した(日本経済新聞2009年9月5日付朝刊5面/ビル・エモット氏へのインタビューより)」


自民党は処罰されたのである。そう思えば、実に納得がいく。では、何に対する罰を受けたのか。いくつかすぐに思い浮かぶだろう。いずれも首相、自民党の総裁が犯したものばかりだ。


しつこく考えれば、どれぐらい前までさかのぼれば良いのかがわからなくなるので、とりあえずわかりやすさ最優先でいけば、まずは小泉さんとなるのだろう。構造改革、郵政改革など非常にわかりやすく、言葉の響きも良い改革をいろいろ手がけてきた。その結果何が起こったかと言えば「格差社会」の本格化ということになっている。


もっとも、この点については少し前のエントリー(→ http://d.hatena.ne.jp/atutake/20090831/1251685306)でも書いたように、真相は異なるようにも思う。まあ、小泉さんは置くとして、その後三代がひどかったことは間違いないところ。


美しい国」などという訳のわからないスローガンをひっさげて登場した安倍首相は、土壇場にさしかかる前に職場放棄した。軍隊用語でいえば敵前逃亡である。軍法会議にかけられれば、極刑をもって償わされるところだろう。にも関わらず安倍氏は、何のつもりか知らないが、今ではいっぱしの自民党重鎮を気取っている。


お次は福田さん。小泉首相時代の立ち居振る舞いを見る限りは、安倍さんよりはるかにましだと思われたが、ぎっちょん。二世議員のひ弱さをもろに露呈した。しかも、なまじ頭が切れるだけ始末が悪いというか、嫌みが増すというか。首相の座を放り出したときの捨て台詞「私は自分自身を客観的に見ることができるんですよ。あなたとは違って」を忘れられない人は未だに多いのではないか。


そしてとどめを刺したのが麻生さんだ。今だからこそ、少し引いた視点から見れば、自民党の幕引き役としてこれほどふさわしい人もいなかったのかもしれない。何せ一国の首相でありながら、愛読書はマンガである。過去の首相たちが時に引用した漢籍などおそらく、生涯一度も読んだことがないのだろう。


その麻生氏の最大最悪の功績は、ろくに漢字を読めなくても首相が務まるおめでたい国として日本を世界にアピールしたことだ。その麻生氏の大の仲良しである中川氏は、記者会見に泥酔して臨むような人物でも大臣が務まる国として、これまた日本を世界に知らしめてくれた。


いくら何でも、ひどすぎるじゃありませんか。日本人みんなが、麻生さんや中川さんと思われてしまっては手遅れになる。そんな危機意識の結果が、今回の選挙結果になっているのだろう。要するに日本を代表する政党と言うにはあまりにもふがいない自民党を、ほとんどの国民が罰したのだ。


懲罰はなにも自民党だけに向けられたわけではない。自民党とセットで税金を貪ってきた官僚たちにも「NO」は突きつけられた。


ここで少しだけ官僚の弁護をするなら、霞ヶ関にいる大多数、おそらくは8割程度の官僚は、めちゃくちゃ真面目である。毎日終電までのハードワークに勤しんでいる。しかも40代ぐらいまでは給料だって決していいわけじゃない。公務員としての誇り、良心を持って仕事に打ち込んでいるのだ。ただ、彼らの上にいる奴らがダメなだけである。


ともかく、こうした自民党中心システムの腐敗ぶりが明らかになり、それを処罰したのが今回の選挙だったのだ。きつい言い方をするなら民主党が選ばれた、わけではないのだと思う。だから、民主党にはこれからがんばっていただきたい。ぜひとも、官僚と癒着することなく、でも真摯な国家公務員とは共同して、彼らを族議員との調整で疲弊させることなく、その能力を遺憾なく発揮できるように。


GDPでは遅くとも来年、中国に抜かれてしまうだろうけれど、まだまだ日本も捨てた国じゃないことを世界にアピールできるような、そんな政府を作ってほしい。



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昨日のI/O

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『中空構造の深層』河合隼雄
Out:
樋渡・武雄市長インタビュー原稿
孔 怡氏インタビュー原稿

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