亀井の真意



かつて日本では徳政令、棄損令が出されたことがある


政令とは「日本の中世、鎌倉時代から室町時代にかけて朝廷、幕府などが債権や債務の放棄を命じた法令である」


棄損令とは「江戸時代幕府が財政難に陥った旗本・御家人を救済するために、債権者である札差に対し債権放棄・債務繰延べをさせた武士救済法令である」


いま幸運にも民主党政権に潜り込んだ大臣が、主張しているのは棄損令の方だろう。この方の主張するとおりにもし今後、棄損令に近い法案が成立したらどうなるだろうか。確かにいま、資金繰りに困っている中小企業は一時的に助かるのだろう。


だが、物事には良い面があれば悪い面もある。メリットがあればデメリットもある。作用があれば反作用もある。政を司る長であるなら、その双方に目配りした上、トータルでどうなのかを判断する必要がある。


さらに政を治める人たちにはもう一つ、絶対に忘れてはいけない視点がある。時間軸をしっかりと長く持って考えることだ。目先のことだけにとらわれることなく、大げさに言えば『国家百年の計』をいつも頭の中に置いておくこと。件の大臣にそうした視点があるのだろうか。


いまから何年か前、まだ前の党に在籍されていたとき、この人の考え方が新聞に出ていたことがある。あるテーマを巡って、対立する意見を持つ政治家二人に意見を聞くといった形式の記事だった。残念ながらそのテーマが何だったのかは覚えていないが、強烈に印象に残っていることが一つある。


この人の言っていることには、まったく何の論理的整合性もなかったことだ。正確に言うなら「主張はあるが、その根拠と推論の形式がむちゃくちゃ」だった。なぜ、そんなことを覚えているのか。理由は二つある。一つには当時、個人的にクリシンにはまっていて、新聞の記事とあれば何でもかんでもクリシン的に分析するクセがついていたこと。


もう一つには、特に政治家の意見について「この人の言っていることの背景にある内在的論理と根拠」について考えることを自分に課していたこと。だから、この人のでたらめぶりがひときわ印象に残ったのだ。


やがて彼は自民党を追われ、挙げ句には刺客を送り込まれて議員の座さえ奪われかねないところに追い込まれた。そのどん底から見事に復活したのだから、地元での力は大したものなのだろう。つまり、身の回りの人に目先の利益を引きずり込んでくることによって、歓心を買う能力には長けているのだ。


が、それで国士が務まるのだろうか。そもそも、なぜ鳩山首相がこの人を要職に就かせたのかが不明だが、彼にとってはようやく巡ってきた我が世の春である。ここはいちばん、とりあえずいま困っている人たちを助けることで自分の名前を後世に残したいと考えたのかもしれない。


だが、彼が元・自民党出身であること、ロジックで物事を考える力はなくとも情理で人を動かす術だけには優れているのだとしたら、彼の発言の背景には別の可能性も透けて見える。民主党政権の早期転覆である。


彼がいまこそ、民主党政権の足を引っ張る絶好のチャンスと見ている可能性はないか。そこで考えるべきは、彼の主張が万が一にも通って、企業の返済が一時的に凍結されたらどうなるかだ。金融業界が深刻なダメージを受けるだけにとどまらず、まず間違いなく海外から日本への投資も引き剥がされていくだろう。当たり前である。


もちろん片方では棄損令により、一時的に息をつくことのできる中小企業は多いのだろう。が、そうした企業がその先、再度よみがえる力を持ちうるのかどうか。日本企業が世界からどう見られるのかを考えてみれば、答えを出すのはそう難しいことではない。


さらに深刻なのは、日本という国自体が、他の国からどう受け止められるかではないか。どう考えても日本沈没への道をまっしぐらに突っ走ることになる。もしかしたら、これこそが彼の真の狙いなのではないのか。


すなわち、やはり民主党ではダメだったのだ、日本を任せるのは。結果的にこんなにも経済状況がひどくなってしまった。やはり、日本は自民党でなければ………、と国民に納得させる。


しかる後に再度復活した自民党政権で「これは俺の手柄だからな」とアピールし、要職に就く。こんな謀略を描いているのが亀井氏の真相なのかもしれない。


いやいや、そんなに手の込んだことを考えられるはずもなく、ただ単に目立つことを言ってみたいだけで、深謀遠慮など何もない、という可能性の方が高いとは思うのだけれど。それにしても、ひどい!


昨日のI/O

In:
某上場企業財務資料
Out:
京都大学農学部・近藤教授インタビューメモ

昨日の稽古:富雄中学校武道場

・基本稽古
・移動稽古
・ミットスタミナ稽古
・組み手稽古