首相のビジョンとバリュー




311:(7+3)


民主党議員(無所属クラブなどを含む)と社民党国民新党の比率だ。衆議院の定数は480、だからもちろん民主党単独で絶対的多数となる。これが参議院では事情が微妙に違ってくる。


115:(5+5)


民主党社民党国民新党の比率が大きく変わってくる。衆議院が10/311(=約3%)なのに対して、参議院では10/115(=約9%)だ。そして参議院の定数は242、つまり民主党だけでは多数を取れない。これが鳩山さんのアキレス腱となっている。致命的な欠点となっているといってもいいかもしれない。


いわゆるキャスティングボート社民党国民新党に握られているのだ。そのために亀井さんなどは「私がウンといわなければ、何も決まらないのだ」とまでのたまっておられる。衆議院ではわずかに3議席しか持たないのにも関わらず、ワケの分からない金融モラトリアム法を無理やり通したり、郵政の逆戻り法案をゴリ押ししたりできるのは何故か。


民主党さん単独じゃ、参議院過半数を取れないでしょ、と脅しをかけることができるからだ。それでいいんでしょうか、鳩山さん。確かに参議院では単独過半数を取れないかもしれない。だから社民党国民新党に気をつかうという論理は、一見もっともに思える。でも、一国のリーダーとしてみたとき、現状はちょっと頼りなさすぎはしないだろうか。


別にアメリカに与するわけではない。とはいえ日本がアメリカに頼らずに生きていけるハズもないことは誰だってわかっている。そして鳩山さんはオバマ大統領が日本に来たとき「Trust me」と断言したというではないか。


このことばがどういう文脈の中でいわれたのかは知らない。だからことばだけを一人歩きさせて、どうこういっても仕方ないことはわかっている。それでも首相の言葉として世間に流布している実情を、アメリカは交渉材料として使ってくるだろう。表向きは基地問題として、真の狙いはアメリカの借金引受問題で。


今は少し戻しているけれど、アメリカは明らかにドル安を容認している。それが国内景気を回復させるための方策だと考えているのだろう。通常なら円売り介入してしかるべきところを日本は動けない。これは勝手な推測だけれど、アメリカから何らかの圧力が掛かっているのではないか。


圧力効果を高めるための絶好の口実を、鳩山首相基地問題アメリカに与えている。そう思う。


そしていくら絶対多数をとれていないとはいえ、数でいえば参議院でも第一党は民主党なのだ。少々強行採決を使っても良いではないか。一番近い時期に行われた衆議院選挙では、圧倒的な国民の支持を受けたのではないのか。その勢いをなぜ活かせないのだろう。


このまま亀井・国民新党に翻弄され、社民党に好きなことをいわれていては、次の参議院選挙でこの両党が勢力を伸ばすことも考えられる。それでいいのだろうか。そうなったとき、民主党政権運営はますますやりにくくなるのではないか。


ここは一つ、民主党国民新党社民党の内在的論理の違いをはっきりさせておくべきだ。そこをみんなに明確に理解してもらえるようにしておくべきだ。もしかしたら、そんなふうに事を荒立てるのは「友愛」の精神にもとるとでも考えているのかもしれないが、ここというときには白黒をはっきりさせておくのがリーダーの役目ではないか。


ビジョンを明確に、そこからミッションを定め、バリューをクリアに示す。これがリーダーシップの要諦だと思う。現状を見る限り、鳩山首相からは何のリーダーシップも感じ取れない。


という状況を小沢さんはなぜ放置しているのだろう。これもとても不思議だ。が、ここも深読みするなら、小沢さんはポスト鳩山を見極めようとしているのかもしれない。もともと鳩山さんはつなぎ、自民党からあまり急激な路線変更をすれば反発も激しくなる。そこでいったん鳩山さんでソフトランディングを図り、次に本命を持ってくる。


いま、内閣で動きが目立つ人たち、苦労させられている人たちの中に、その候補がいるのだろう。としたら、やはり岡田さんなんだろうか。とりあえず今の岡田外相の動きをアメリカがどう見ているのか。今後、中国とロシアに対して岡田さんが、どんな動きをするのかはしっかり見ておいた方が良いのかもしれない。


あるいは前原さんは、今の日米関係についてどう思っているのだろう。ぜひ、聞いてみたいところだ。


昨日のI/O

In:
現代思想の断層』徳永恂
Out:
某社向け企画書


昨日の稽古:

・肩ほぐし