大前流思考道の奥義


大前研一通信特別保存版PartIII  パスファインダー  <道なき道を切り拓く先駆者たれ!!>

大前研一通信特別保存版PartIII パスファインダー <道なき道を切り拓く先駆者たれ!!>



このエントリーは、R+さんから送っていただいた献本『パスファインダー』へのレビューです


「じゃ50分ほど、話すから」


そう言って大前研一さんは話し始めた。9年前にスタートした私にとってのエポックメイキングな仕事、インタビューシリーズの第一号が大前氏だったのだ。そのお顔はテレビでお見かけしていたし、著書も読んでいた。取材のレジメを事前に送り、さて、どう質問を切り出そうかと考える間もなく大前さんは語り始めた。


そしてきっちり50分間、話し終えると「これぐらいで記事になるでしょう」といって取材終了。こっちは必死にメモを取っているだけでほとんど何も質問することなく終わった初回の取材は、強烈なインパクトを残した。取材テープを書き起こしてみると、見事なまでに話が整理されていることがわかり、さらにたまげた。


付け加えることは何もなく、順番の入れ替えに悩むこともない。字数制限に合わせて、テープ起こしの生原稿を絞るだけで清書ができてしまう。この人の頭の中は、一体どうなっているのかと驚き、世の中にはこんなすごい人もいるのだと自分の不明さを思い知らされもした。


その大前さんがあちこちで語ってこられた珠玉のメッセージを一冊にまとめたのが『パスファインダー』だ。読んで字のごとく「パス=自分の進むべき道」を「ファインダー=見つける人」である。そんな人間になれよという激励の言葉があり、そのためには何を、どう心がけるべきかを語った言葉が並べられている。


といって「こうすればいい」という安直なノウハウは書かれていない。なぜなら安直にノウハウに従う人は、その時点で「パスファインダー」ではなくなってしまうから。


象徴的なパスファインダーとして紹介されているのが、松下幸之助であり、本田宗一郎だ。松下幸之助氏は小学校を4年までしか通っていない。本田宗一郎氏の学歴は中卒で終わっている。だから、良かったのだと大前氏は説く。なぜなら彼らは、自分には無限の可能性があることを決して疑わなかったから。


「偏差値のない我々の時代は、皆、自分の未来は無限だと思っていた(同書16ページ)」
「いわれたとおりのことをいわれたとおりに覚えた生徒が優秀だと評価される。日本では、基本的に「質問する力」を養成していないのです(同書20ページ)」


この二つの文章に、今に至る本質的な問題点が凝縮されている。パスファインダーとして何より必要なのは、自分で課題を見つけ、問題を立て、自分の頭で考え抜くことだ。そしてとても残念なことだけれど、おそらくはほとんどの人たちが学校で、問いの答え方は教わっても、問いの立て方そのものは習わない。

だから
4+3=□ という問題を解くことはできても
○△□=7 というように自分で問題を考え出すことはできない。


○、△、□の中に入る数字、記号の組み合わせは無限にある。現実の世界そのものが、まさにそういうものなのだ。無限の組み合わせの中から、どの一つを選ぶのかを『決める』ことが、自分の道を選ぶことになる。それが「考える」ことの本当の意味だ。


では、なぜ「考える」ことが必要なのか。

いまは「答えのない時代」です。新しい発想で新しいアイデアを生み出せる人間しか生き残れないから、未知の領域に立たされたとき、自分の頭で考えて、問題解決できる人材でないとメシを食っていけない(同書21ページ)


こうした傾向は今後、ますます強く厳しくなっていくだろう。その中で生き残っていくためにも、大前さんの言葉はしっかりと胸に刻み込んでおいた方が良い。


この本はぜひ、ペンシャープナーとして使いたい。いつも鞄の中に入れておいて(そのためにとてもコンパクトに作られている)、通勤電車の中でパラパラめくる。クライアントを訪問する前にどこかで、さっと一ページだけ読んでドアをノックする。一日の仕事を終え明日の予定を考えるときに、お気に入りのページをさっと眺める。


読むだけで終わってしまってはもったいない本でもある。


読みながら思いついたことをどんどん書き込んでいけばいい。そのために書き込めるスペースも取ってある。と考えればこの本は、日本の伝統武道で、免許皆伝の時に師から渡される目録とも考えられる。記された教えに、自分なりの解釈を折に触れて書き込むことで、目録は自分だけの手控えとなる。それはやがて自分が誰かに教えるときの免許の元となるだろう。


単に読むだけはなく、使い込むべき書。それが『パスファインダー』である。


昨日のI/O

In:
上田埼玉県知事インタビューメモ
Out:


昨日の稽古: