転ばぬ先の杖


このエントリーは、R+さんから送っていただいた献本『MacPeople2月号』についてのレビューです。



「やっと、できた!」と思った瞬間、フリーズ


モリー16メガ時代のマックでは、よくあったトラブルだ。特に複数のアプリケーションを同時に走らせていたりするとてきめんである。例えばQuarkXPressを使いながら、ちょっとしたイラスト処理をIllustratorで加えるときなどがそう。


いったんQuarkを終了してからイラレに取りかかれば、まず問題は起きないのだけれど、忙しいときにはそのわずかな時間が惜しい。祈るような気持ちでイラレも立ち上げてデザイン終了。後はEPS保存してQuarkに貼り付ければオッケーというところで、イラレはたびたびフリーズした。まるで、それがお約束であるかのように。


こうなると、それまで機嫌良く動いていたQuarkまできっちり止まってしまうのがMacの小憎たらしいところだ。せっかく微に入り細を穿ち、面倒な数値入力による調整を繰り返しながら仕上げたレイアウトがパーになったときの気分は、あとワンピースはめ込めば完成まで仕上げたジグソーパズルを、大きなくしゃみをしてひっくり返してしまったようなもの。泣くに泣けない、けど、泣きたい。


あるいはIllustratorに直接文字を打ち込んだりするのも、相当に綱渡り的な作業といえた。本当に慎重に、少しずつ、ほんの二つか三つの言葉を打ち込んだら、速攻変換してコマンドSをかける。じゃないと、いつレインボーマークが回りだすかわかりゃしない。ひとたび、こいつがクルクルし出すと、たいていアウトである。


Macは一日に8回落ちるのに、Windowsなら一日一回も落ちないことがある」などと妙なけなし方を、その頃はよくWindowsユーザーからされたものだ。何しろエディターで文字を打っているだけでも落ちることがあるのだ。そういうときには動きを止めたモニターに表示されている原稿を、手書きでせっせと写し取ったりもしたものだ。


とはいえ、こうしたトラブルはまだかわいいものである。Macはよく、突然死んだ。それも、あたかも最悪のタイミングを見計らっていたかのように。


例えば、午前中に提出しなければならない企画書を抱えた朝である。前夜は遅くまでかかって(明け方までかかることがしばしばだった)プランを考え、下書きを作っている。ほんの一休みのつもりがつい寝過ごしてしまい、えらいこっちゃ寝坊してまったと焦りながら仕事場に着き、パワーボタンを押す。


そんなときに限って、いつものニコニコMac君ではなく、泣き虫Mac君、通称SadMacが現れるのだ。


こいつが出てくるとお手上げである。リスタートをかけて動き出せば儲けもの。たいていはフロッピーから起動したり、最悪の場合はOSを一から入れ直してみたりと焦りながらいろいろ手を尽くすがかなわず、結局はサービスマンに来てもらって治す羽目になる。もちろんクライアントは怒りまくり、電話口で罵詈雑言を浴びせられるのだ。


というような不安感や不安定さは、さすがに今のMacにはない。まず落ちない。平均して一日12時間ぐらいスイッチオンになっているが、ここ5年ほどシステム上のトラブルが起こった記憶はない。一度だけiBookのハードディスクがご臨終となったが、これは寿命である。


いまやMacBook Proには4ギガものメモリーが積まれてるようになった。おかげで、これでもか、というぐらいにいくつものアプリケーションを立ち上げて同時に動かしても平気である。


しかも万が一、動かしているアプリのどれかがトラブったとしても、何も心配するには及ばない。そのアプリだけを強制終了すればよいのだ。他のアプリに影響が及ぶことはまったくなく、もちろんシステムがフリーズすることなど皆無である。それぐらいに安定しているのが、今のMacなのだ。


だからといって油断は禁物、相手は所詮、機械である。いつ、何がキッカケとなって機嫌を悪くするかわかったものではない。そんな万一のときのための備えが本号の特集2「マックを救う即効テクニック」というわけだ。


もしかしたら今のMacユーザーは、トラブルなど知らない方の方が圧倒的に多いかもしれない。とはいえ、トラブルが絶滅されることはあり得ないといっていい。いくら自分の使い方が間違っていなくとも、壊れることはある。それが機械の宿命である。ましてや常時ネット接続が当たり前となっている環境を踏まえれば、どんなウイルスが忍び込んで悪さをするかわかったものじゃない。


マシンが立ち上がらない、といった致命的なトラブルこそ免れるとしても、挙動が不安定になったり操作が重くなったりすることぐらいは十分考えられる。そんなときはmixiなどのコミュで相談する手もあるが、肝心のネットにつながらなくなるリスクもあるわけだ。


そんなときのお助けマンとなるのが今号の特集。記事にはネット接続不可となったときの対処法までが詳しく書かれている。この特集を切り取って保存しておけば、深刻なハード面でのトラブル(例えばハードディスクがまったく動かなくなったなど)をのぞいて、何らかの対応をできる可能性が高い。


仮にどうしても自分の手に負えなくてサポートサービスを頼むときでも、自分で試みた対処法を告げれば、トラブルを特定しやすくなるはずだ。


いくらMacがトラブルフリーになったとはいえ、忙しいときほど、あるいは重要な作業をしているときほど問題は起こる。これはマーフィの法則である。そんなときのための『転ばぬ先の杖』としてMaoPeople2月号は手元に置いておいて絶対に損はしない一冊である。



昨日のI/O

In:
『「騙されない!」ための経済学』森永卓郎
Out:
アゲハ社長様インタビューメモ
ひとさらホームページ

昨日の稽古:

・懸垂