鳩山首相とオペレーションズ・リサーチ


成長の限界―ローマ・クラブ「人類の危機」レポート

成長の限界―ローマ・クラブ「人類の危機」レポート

カギは1972年


この年『成長の限界ーローマ・クラブ「人類の危機」レポート』が発刊された。レポートをまとめたのはイタリアのシンクタンク「ローマクラブ(→ http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%9E%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%83%96)」だ。


当時25歳だった鳩山青年は、このレポートを読んでショックを受けた。そのとき受けたショックが、政治活動の原点になっているという。だからいきなり「CO2削減25%」などと言い出すのだろう。


ところで25歳のときに鳩山氏が、どこで何をしていたか。スタンフォード大学院でオペレーションズ・リサーチを研究していた。鳩山青年は東大工学部で応用物理・計数工学科を学んだバリバリのロジカル人間なのだ。


Wikipediaによれば、氏がスタンフォードで学んだ

オペレーションズ・リサーチ(operations research、米)、オペレーショナル・リサーチ(operational research、英)あるいはORは、数学的・統計的モデル、アルゴリズムの利用などによって、さまざまな計画に際して最も効率的になるよう決定する科学的技法。複雑なシステムの分析などにおける意思決定を支援し、また意思決定の根拠を他人に説明するためのツールである(→ http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AA%E3%83%9A%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3%E3%82%BA%E3%83%BB%E3%83%AA%E3%82%B5%E3%83%BC%E3%83%81


成長の限界』をまとめるために使われたのも、同じくオペレーションズ・リサーチであるという(厳密には、システムダイナミクスというそうだが)。だから鳩山青年には『成長の限界』が突きつけてくる警告が、深刻なものとして身にしみたのだと推測する。


前段が長くなったが、ポイントは鳩山首相がかつて、不確定要素に満ちた地球の未来を予測する手法を、科学的に学んだ人だということにある。ここからがようやく本題となる、かつ申し訳ないことに、元ネタは『クーリエ・ジャポン』3月号126〜127Pに掲載されている「国際ニュース解説室/佐藤優」である。


佐藤氏は、鳩山首相オペレーションズ・リサーチの専門家だったことを踏まえて、懸案となっている普天間基地の移設問題について「日本にとってもっとも有利な状況を作り出そうとしている(前掲誌)」と読み解く。


もし、そうだとしたらどうなるか。ここから先は、筆者の仮説である。


鳩山氏の発言は、マスコミによく「ぶれている」と批判される。しかし、もしかしたら氏は自分の発言を意図的に「ぶらしている」のではないか。


なぜ、そんなややこしいことをするのか。理由は、最適解を探り当てるためである。駐留米軍の問題はロングレンジで考えるしかない。考慮すべき期間が長いということは、それだけ多くの利害関係者が関わることを意味する。変数が多いだけに簡単に最適解など見えてくるはずがない。


そこで前提となる条件を自らの発言によって意図的にいろいろ変えているのだ。条件が変われば、関係者ごとに受ける利害も変わってくる。当然、それぞれの反応も変化するだろう。その変化具合を読もうとしているのではないだろうか。


さまざまな利害が絡み合って現実に起こっている問題とはまさに「複雑なシステム」に他ならない。そうした問題を最も効率的に解決するための科学的技法こそが、鳩山首相の研究したオペレーションズ・リサーチである。首相の学問が確かなものなら(スタンフォードで博士号を取っているのだから、折り紙付きだと思うけれど)、いま首相の頭の中ではおよそ考え得るすべてオプションについて、そのメリット/デメリット・シミュレーションが行われているのではないだろうか。


そうした見方に立つなら、今はあえて国民新党社民党、あるいはアメリカ政府にも好きなようにいわせて、その出方とそれに対する世の中の反応を見ている節があるように思えてくる。民社党内にうごめくいろいろな考え方についても、その影響力や背景、巧緻さなどを見極めているようにさえ感じ取れる。しかも外見はあの風貌で、あのアクションをとりながら。これもすべて計算尽くだとすれば、鳩山首相の真の姿は、底がみえないぐらい懐が深い人、となるだろう。


よく鳩山首相の言葉は「宇宙人的」などと揶揄される。しかし、実態は、その真意を、我々凡人が理解できていないだけなんじゃないのか。最終的に発せられた言葉は、氏の脳内で完結した思考の結晶である。結論が出る過程で行われたはずの高度な分析やアルゴリズムを知るよしもなく、結果だけを聴かされる方としては「何が、何だか」状態になって当然、じゃないのだろうか。


願わくば、この仮説が単なる仮説に終わらないことを。



昨日のI/O

In:
ロボット・クリエイター高橋智隆氏インタビュー
Out:


昨日の稽古:

ジョギング3キロ/20分