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BBT on DVD 大前研一ライブお試し版 1,050円

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このエントリーは、R+さんの『BBT on DVD 大前研一LIVE(月フルプラン)』についてのレビューです。3月頭から実に2ヶ月のフル参加、その第三回レビューです。


DVDが7本


毎週一回、DVDが送られてくるから7週間で7本になるのは当然ではある。しかしこの蓄積効果が『BBT on DVD 大前研一LIVE(月フルプラン)』の大きなメリットにつながってもいる。つまり一つのテーマを継続的に追いかけることができるのだ。それも、大前さんと一緒に。


たとえば普天間基地の問題である。前回のエントリーでも書いたように、このテーマについては個人的に強い関心を持っている。その理由は、佐藤優氏が鳩山首相オペレーションズ・リサーチの専門家として高く評価しているからだ。


佐藤氏曰く「ああ見えて、鳩山氏はいくつもの選択肢をもっていて、どれが最適なソリューションかを熟慮しているのではないか」というわけだ。もっとも最近の鳩山首相の動き、発言を見ていると、どうも今回ばかりは佐藤氏が間違っているように思えてならない。


こうした問題意識を抱えているので、毎週送られてくるDVDを見ていても、普天間に関する大前先生の発言が特に意識に飛び込んでくる。そんな中で非常に興味深い三つのコメントがあった。


一つ目は3月28日号である。普天間基地問題についての解説の中で、大前先生は、アッと驚くオプションを紹介している。それは、佐世保と鹿児島にいる自衛隊基地と沖縄の米軍基地を交換するというもの。この案そのものは、雑誌『FACTA』に掲載されていた軍事評論家・田岡氏の発案らしい。しかし、そこまで目配りして情報を仕入れていることがすごい。そして、このスワップ案は、ある意味極めて合理的な側面ももっている。もちろん長崎、鹿児島両県が反対することが予想されるが、落としどころとしてはあり得る案だろう。


仮に鳩山首相の「本当の」腹案が、この沖縄・九州スワップ案だとしたら、さすがに佐藤優氏が評価するだけのことはあると思う。鳩山首相がよく言葉にする「沖縄の人たちの痛みを、私たちも共有しなければならない」というセリフと照らし合わせても違和感のないアイデアだろう。その後の経緯を見ていると、このスワップ案は鳩山氏の腹案ではなかったようだけれど。


二つ目は4月11日号にある。同じく普天間基地問題の解説で大前先生は、鳩山首相に対して「もっと人間を知り、心理を読むべきだ」と説かれた。この言葉も刺さった。なぜなら、ちょうど同じタイミングで、あるシステム工学の専門家から同じ指摘を伺っていたからだ。


つまり、確かに鳩山首相オペレーションズ・リサーチの研究者であり、その理路については十分にわかっているのだろう。しかし、科学者が研究対象とするのは、あくまでもモノである。さまざまな変数を条件に入れて思考することには長けていても、その変数に人間心理という極めて厄介な要素を組み込むことはまずない。ところが現実を動かす上では、人間心理が大きな力を果たす。そこで鳩山氏は、とんでもない読み違いを起こしているのではないか、と専門家の方は教えてくれた。


純粋な科学者であるが故に(あるいは科学的思考に偏りすぎているために)、鳩山氏は人の心を読めない。そのため首相でありながら、人を動かすポジションにありながら、閣僚も国民をもうまく動かすことができないでいる。その通りなのかもしれない。鳩山首相を表してよく使われる「まるで宇宙人のような」という比喩も、この流れの中でなら理解できる。


三つ目は4月18日号での指摘で、普天間問題をアメリカはどう見ているのか、ということ。これは日本のマスコミを見ているだけでは、完全にミスリードされてしまう視点だ。


日本のマスコミは、普天間問題はアメリカにとっても大問題であり、万が一、これを予定通りに解決できないと、アメリカにとっても大変な政治(軍事? 外交?)問題化する、と騒ぎ立てる。しかし、それは本当なのか、というクリティカルな問題提起を大前先生はされる。


その上で自前の情報に基づいて大前氏は、ずばっと一刀両断的な視点を提示する。すなわちアメリカがいま抱えているアジェンダの中で、普天間問題など、まちがいなく上位50位以内には入っていない、ということ。今のアメリカには、普天間などに関わっている暇などまったくなく、他に外交上の問題がいくらでもある。


しかも、そもそも長期的には海兵隊はグアムへ撤収することが既定路線となっている。日本国内では「普天間は問題」なのだろうが、アメリカにとって普天間は大したイシューではない。こうした普天間問題のアメリカ政府内でのポジションを、民主党はまったくわかっていないから、下手に動いては問題をややこしくさせているだけではないか。


これが大前先生の見立てである。こうした知見を毎週一回、DVDで好きなときに見ることができる。非常に価値の高いプログラムだと思う。



昨日のI/O

In:
孔子伝』白川静
Out:
京都大学・宇津野教授インタビュー原稿

昨日の稽古: