外交の根底にあるロジック
フォーリン・アフェアーズ・リポート2010年6月10日発売号
- 作者: ロバート・カプラン,ロバート・ゲーツ,テッド・ターナー,ほか,フォーリン・アフェアーズ・ジャパン,Foreign Affairs Japan
- 出版社/メーカー: フォーリン・アフェアーズ・ジャパン
- 発売日: 2010/06/10
- メディア: 雑誌
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このエントリーは、R+さんから送っていただいた献本『フォーリン・アフェアーズ リポート6月号』についてのレビューです。
中国の対外行動は、エネルギー資源、金属、戦略的鉱物資源を確保する必要性によって導かれている(『フォーリン・アフェアーズ リポート6月号』p8)
この一文にある「中国の対外行動は」の部分を、「日本の対外行動は」と置き換えてみたとき、日中の違いがくっきりと浮かび上がってきます。ちなみにこの部分の前段には
アメリカのように世界政治に対して使命感を持ち、自国と同じイデオロギーや統治システムを世界に拡大しようと試みること(前掲誌P8)
という一文があります。アメリカには、中国と同様、対外行動に際しての基本的なロジックがあるわけです。
もとより、日本が対外活動において、まったく何の内在的論理も持っていないとまでは思いません。しかし、少なくともこれまでのところは、そうした論理を表だって感じることはなかった。
ただ、対外活動の軸なくして、よく世界第二位の経済大国に上り詰めることができたものだと、これまでの日本(というか、正確には私より上の世代の日本人)の力に改めて敬服もします。人しか資源のない日本の、その人的資源の強みを再確認する思いです。
今回のレポートの何よりの価値は、とかく日本のマスコミでは感情論に終始しがちな日中関係が、日中いずれでもない第三者の客観的な視線にはどう映っているのかを学べること。この意味で、レポートは極めて刺激的な内容に満ちています。
それは例えば
すでに中国は現体制後の(朝鮮)半島でのデザインを終えている(前掲誌14P)
といったテクストや
北京は台湾を単に軍事的にだけでなく、経済的、社会的にも包囲しようと考えている(前掲誌18P)
といったテクストに象徴されている。
こうした極めてリアリスティックなロジックが、国際政治の背景にはある。のだとすれば、問題意識はやはり日本の外交に立ち戻ってきます。日本は一体どうなのか。ここで思い浮かぶのは、軍隊を持たない国家の特殊性が、日本外交の意志決定には大きな影響与えているのかもしれないということ。
なぜなら
敵対勢力の行動を枠にはめるのがパワーの本質(前掲誌17P)
だから。だとすれば日本は、こうしたパワーを持たない国と考えられます。軍隊と自衛隊の違いが、日本を特殊な国家にしたのか。そもそも特異な国家だったからこそ、軍隊ではない自衛隊という存在が、日本では成立しえたのか。
憲法9条を改正するとか、自衛隊の位置付けを変えるといった議論をする前に、日本は対外行動の基軸として、どんな考え方を持つのかを問い直すべきなのではないか。しかし、その時日本人が、今の中国のように(前掲誌レポートの筆者、ロバート・カプラン氏の見立てですが)『エネルギー資源、金属、戦略抵抗物資源を確保する必要性』をあからさま、かつ全面的に打ち出すことができるのか。
日本人のメンタリティとして、そんなことが果たして可能なのか。では、仮に、そうしたあからさまな態度を取れない場合、何の資源ももたない日本は、これから、どうやって世界の中で生き延びていくのか。
あるいは資源に関して、そこまでリアリスティックな捉え方をしている中国が、あえて日本に貴重な食料を供給し続けている理由は何か。その背景にはどのような「対外行動についての思惑」が隠されているのか。そんなことを考えるキッカケを、同誌は与えてくれました。
昨日のI/O
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MRI研究本部長インタビュー記事