SMARTな時代の財布


厚さ13ミリ


薄手の財布が人気らしい。財布といえば、札入れに万札をぎっちり……、というのが憧れだった(嘘だけど)。印刷会社を辞めて、コピーライターの修業にと入ったデザイン事務所の社長が、ぎちぎち財布を持っていた。


そういえば、あの社長は「僕ちゃん、最低でも50枚はお札を持っていないと不安なタイプなの」みたいな、たわけたことをおっしゃっていたな。トレスコ(って、わかる人いるだろうか?)の置いてある暗室で、印刷会社の社長さんとよく賭けトランプをやっていたし。


それはともかく。最近、ちょっと気になる広告を地下鉄に乗るたびに見かける。要するに財布の中に、どれぐらいお金を入れていれば安心できるか、という調査をベースにした広告である。たいていの人は、自分の年齢×千円分ぐらいは持っていたいと考えるらしい。


この「年齢×千円札」説は、むかし世話になった方からも聞いたことがある。その方は病院を回る営業をされていたのだが「40歳を超えたら、それぐらいのお金はいつも持っていないと恥をかきますよ」と教えてくれた。ちなみに、その方の場合は、毎朝奥さんが財布をチェックし、足りないお金を補充するシステムになっていた。うらやましい話である。


さて、薄い財布である。たとえ中身はわずかであっても、財布はそれなりにがっしりと存在感ある方が良いではないか。と、思うこと自体が、古いのかもしれない。


今どきの若い方にとっては、財布自体が問題ではなく、財布をポケットに収めた状態での、洋服のシルエットこそが重要なのだ。すなわち、ごつい財布を上着の胸ポケットなり、パンツの後ろポケットに突っ込み、そこがいかにも財布入ってます状態にふくらむのは、ださいのである。


新聞記事に曰く

服のデザインが細身になり、ポケットなどの膨らみを気にする人が増えているためだ(日本経済新聞2010年7月16日付朝刊35面)


スマートグリッド然り、スマートハウスなる新語もある。何ごとも「スマートに」が時代の合い言葉なのかもしれない。もちろんスマートを実現するだけのテクノロジーの進化もある。suicaICOCAなどさまざまな電子マネーの普及も、財布のスマート化を後押ししているのだろう。ちなみに、いま手持ちのICOCAカードを見れば、頭にちゃんとSMARTと記されてあった。


残念ながら関西では、まだお目にかかったことがないが、東京ではICOCAでタクシーに乗れる。コンビニもICOCAで買い物できる店が増えている。キヨスクなら関西でも、ICOCAでオッケーだ。昨日などは滋賀県の田舎の駅の自動販売機で、ICOCAを使ってジュースを買えた。


京都駅の中の店なら、たいていどこでもICOCAが使えるし、つい最近できた京都駅近くのイオンでも同じように使える。


実際のところ、このよういICOCAを使える店がどんどん増えていけば、現金を持つ必要はなくなってくるだろう。そもそもICOCAを使えなければ、クレジットカードで払えばいいわけだし。


ということで、財布の中のキャッシュは、年齢×千円札分とはいかないのだが(正直にいえば、息子の年齢分にさえ届いていないことがほとんどだ)、ICOCAもあるし、いざとなったらクレジットカードもあるし、それでいいのかもしれない。


ただし、貧乏性ゆえに、もしかしたら、どこかで使えるかもしれない、各種ポイントカードをたくさん詰め込んでいるために、財布自体は決してスマートではない。こういうところが、五十代ならではの、もっささ、なのかもしれない。


ということは、各種ポイントカードを一元化して、もっとスマートにしてくれるサービスがあれば、きっと受けると思うのだけれど、いかがだろうか。


昨日のI/O

In:
『女たちよ!』伊丹十三
Out:
O社事業報告書原稿


昨日の稽古: