コミュニケーションはどうなるのか
つぶやき進化論 「140字」がGoogleを超える! (East Press Business)
- 作者: エリッククォルマン,竹村詠美,原田卓
- 出版社/メーカー: イースト・プレス
- 発売日: 2010/07/29
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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このエントリーは、R+さんから送っていただいた献本(正確には出版前のゲラ)『つぶやき進化論』についてのレビューです。
全職員425人にツイッターアカウント
今朝の日経新聞九州版では一面に載ったという。関西版では掲載されていないが、電子版にはある。佐賀県武雄市のとんでもなく素晴らしい話である。同市では全職員にツイッターアカウントを持たせて、情報発信に活用したり、住民からの要望を受け付けたりするという。
武雄・Theがばい市長・樋渡啓祐氏ならではの発想と行動力だ。政治家はもとより首長が、ツイッターアカウントを持つケースは珍しくも何ともない。あるいは市町村が情報発信装置として一つのアカウントを持つケースも増えている。とはいえ職員全員にアカウント、というのは日本初の試みだろう。
こうしたニュースが流れると「インターネットを使えない人、ツイッターをやっていない人には不公平じゃないか」という反論が、きっと出るのだと思う。
しかし、そういうことを言っている時代なんだろうか?
本書が、さまざまなケースを引きながら訴求しているのは、まさにこの点。『そういうことを言っている時代』ではない、ということ。
コカ・コーラにメントスを放り込むビデオをYoutubeで見られた方は、たくさんいらしゃっるのではないだろうか。
このビデオを、Youtubeで最初に見たコカ・コーラ社の人間は、さぞやたまげたことだと思う。まさかコーラでこんな事が起こるとは、思いもしなかったはずだ。だが、実際にダイエットコークにメントスを放り込むと、まるで手品のように、勢いよくコーラは噴き出す。
然る後にコカ・コーラ社は、どういう対応をとったか。実験をやっている二人組を、スポークスマンとして採用した。そういう時代なのだ。この場合に、コカ・コーラ社に採ることのできた選択肢は、もちろん他にもあった。
もっともハードアタックとなるのが、このおとぼけ二人組を名誉毀損あたりの罪状で告訴することだろう。もちろん、このオプションもコーラ社社内では真剣に検討されたものと推測する。しかし、結果的に採用されたのは、その正反対とも思える対処法である。結果的に、このビデオは今日(2010.8.01)の時点で1200万回再生されているようだ。
さらには、類似のビデオが、これでもかというぐらいアップされている。『そう言う時代』なのである。これが同書が説く『つぶやき』の恐ろしさだ。もはや『つぶやき』は誰にも止めることができない。その本質は、もしかしたら、恐ろしく不公平な世界が、一部で誕生しつつあることなのかもしれない。
ツイッターでのつぶやきが、つぶやいた本人に何らかのメリットをもたらす確率は、その人がどれだけ多くの人からフォローされているかに左右される。当たり前の話である。フォロワーが100万人いる人は、自分のつぶやきが瞬時に100万人に届く。こんなメディアは、これまで存在しなかった。
生後6ヶ月の赤ちゃんへのプレゼントでは、何が喜ばれるのか。100万人のフォロワーに尋ねれば、参考になる意見もきっとたくさん寄せられるだろう。一方、筆者のようにフォロワーが160人ぐらいしかいない場合は、同じことをつぶやいたとしても、たぶん誰も答えてはくれないだろう。
もっとも、つぶやきの内容についてもう少し突っ込んで考えるなら、フォロワーの多い人のつぶやきのすべてが、わざわざ読むに値するかといえば、決してそんなこともない。だから、どうなのだ。そんなこと、関係ないのである。
とはいえ、仮に1万人からフォローされている人なら、例えば「あいむ・あっと・ぎんざ・なう」と、つぶやくときにも、1万人に自分のツィートが届くことを意識しながら書き込んでいるだろう。そのことに、どんな意味があるのかは、今のところ、まったくわからないとしても。
好むと好まざるとに関わらず、我々はツイッターの機能する世の中に暮らしている。日本に比べるとツイッターやFacebookの普及が早かったアメリカでは、こうしたコミュニケーションツールを活用することによって、誰が、どんなメリットを得ているのか(誰が、どんな風に損をしているのか)、そんな事例を本書はたくさん教えてくれる。
つぶやきを活かして、ひと山当ててやろうと思う人は言うまでもなく、ツイッターに代表されるソーシャルメディアには、世の中をどう変える可能性があるのかを知りたい人は、必読の一冊だと思う。
昨日のI/O
In:
つぶやき進化論ゲラ原稿
『悪党』ロバート・B・パーカー
Out:
O社事業報告書用原稿