何かに頼る、頼りたい気持ち


ビジネスマンの5人に2人ぐらい


地下鉄で、ときどき数えてみる。年齢による差は、あまりないみたいだ。手首に巻いている人の割合が、40%ぐらいか(ちょっと多すぎるような気もするけれど、あくまで感覚ということで)。「最近、なんか数珠をしている人が増えてるなあ。なんでやろなあ」と家人に言うと、あんた、あほちゃう光線を飛ばされた。


パワーストーンと言うらしい。ちょっとググってみると、あるある。パワーストーンだらけである。いろんな願いを叶えてくれるパワーストーンがある。恋愛、お金、人間関係、婚活、仕事に美容・健康。何でもこいである。


これはおもしろい。例えば収入アップブレスレットには「収入を増やしたいなら、このブレスレット」みたいなコピーが添えられている。これがルチルクオーツ、シトリン、スモーキークオーツといった石でできているらしい。お値段は14,800円なり。


パワーストーン相場からみて、これが安いのか高いのかは知らない。けれども、個人的に「それほんまに効果があるのか」相場から見ると、べらぼうな値段だと思う。そりゃ、もちろん、鰯の頭も信心からという諺があることも知っている。だからパワーストーンに御利益がないとはいわない。


でも、それはパワーストーンそのものの効果じゃなくて、パワーストーンをつけているんだから心理効果である。いや、もちろん、そのことにこそパワーストーンの効果があることもわかっている。でも、なあ。と思わないでもない。薬の世界で言われるプラセボみたいなものだろう。


だから、自分には絶対に効果がない。よって14,800円はベラボーなのである。つまり自分にとっての価値はゼロなのだ。従っていくばくかでも対価を支払って、パワーストーンを手に入れることはあり得ない。ただ、人によっては、効果があることは否定しない。それは、たぶん次のようなサイクルになっているのだろう。


おれ、大枚はたいてパワーストーン買っちゃったからね。これつけてると、収入が増えるんだからね。気分良いんだからね。だから、ほら、今日は天気も良いし、なんか良いことアリそうじゃん。よ〜し、仕事もバリバリ頑張るぞっと。


という気分で会社に行けば、上司から「おや、○○くん、今日は元気で明るいね。じゃ、今日も一日頑張ってくれよ」みたいな声をかけてもらって、さらにテンションが上がっていく。そのまま営業に行っても、ハイテンションは続いているから、何となく機嫌良いですオーラが出て、それはお客様にも伝わる。よって商談成立でめでたしめでたし、みたいな。


ことがそう単純に運ぶとは思わないけれども、少なくとも、それなりのお金を払ったパワーストーンを手に巻くことによって、気持ちのベクトルをいささかでも変えることにはつながるのだろう。だからパワーストーンが売れているのではないか。


と考えれば、別にパワーストーンでも、本物の数珠でも、ご祈祷をしてもらっても、占いでやるべき事を指示してもらっても、何でも良いわけだ。という状況で出てきたパワーストーン、意外にうまいところを点いた商品なのかもしれない。


それにしても14,800円のパワーストーンの原価はいくらなんだろう。とか結局はお守りと同じようなものなのだとしたら、なぜ古来伝統のあるお守りじゃなくてパワーストーンなんだ、という次の疑問が出てきた。


昨日のI/O

In:
『14歳の子を持つ親たちへ』内田樹名越康文
Out:
S社50周年誌企画
某書原稿
梅沢由香里氏インタビュー原稿

昨日の稽古:

懸垂・腹筋・指立て