四つ葉のクローバータクシー



1400台中わずかに4台


京都のヤサカタクシーといえば、そのシンボルマークは三つ葉のクローバーと決まっている。ところが、突然変異があるのだ。同社が抱える総台数1400台のタクシーのうち、わずかに4台だけは、マークが四つ葉のクローバーが付いている。


四つ葉のクローバーといえば、幸運のシンボルである。だから、同じヤサカタクシーに乗るなら、四つ葉に当たりたいと思うのは人情だろう。ところがその確率は、わずかに0.3%弱。ざっと330回乗って1回あるかどうかとなる。


この幸運・四つ葉のクローバータクシーは、同社のプロモーションに何らかの効果をもたらしているのだろうか。


実は、筆者は昨年、この僥倖に恵まれた。たぶんゴールデンウィークの前後である。息子を丸太町まで送っていくために烏丸通りに出て、何気なく拾ったタクシーが、このラッキータクシーだったのだ。とはいえ乗る前にわかっていたわけではない。乗り込むまでは何も気づかず、乗車後に運転手さんが「おめでとうございます」とか何とかいって記念品をくれてわかったのだ。


写真は、その時もらったシールである。ちょうど京都に引っ越してきて一ヶ月ほどの頃で、これは引っ越し早々幸先が良いわいなどと喜んだことを覚えている。もちろん、それ以降、タクシーに乗るなら『ヤサカの四つ葉』を探すようになったのだが、さて。これがなかなか遭遇しない。遭遇しないどころが、見かけることすらない。


住まいが町中にあるゆえ、まわりを走っているクルマも多い。当然、タクシーもたくさん見かける。そのたび、じっと目をこらして、よもや四つ葉ではないかとサーチしてみるのだが、さっぱりである。去年の連休から今に至るまで、未だ一度もお目にかかっていないのだ。


一月半ほど前に、たまたまヤサカタクシーに乗る機会があったので、四つ葉のタクシー確率を尋ねてみたら、返ってきたのが冒頭の答だった。いうまでもないがヤサカタクシーを予約するときに「いっちょ、四つ葉の奴で頼んますわ」などとオーダーしてもダメである。どこかのタクシーだまりに行けば、巡り会えるというわけでもないらしい。四つ葉は基本的に流しだけだという。


しかも四つ葉を運転できるのは、ベテランドライバーに限られているそうだ。推測するに、無事故歴が長く(おそらくは無事故のドライバーに限定されるのであろう)、客あしらいもよい(そういえば、以前乗ったときの運転手さんは得も言われぬあったかみを感じさせた)、売上も優秀なドライバーのみの特別車なのではないだろうか。


つまりヤサカタクシーに勤める運転手さんたちにとっては、一種のステイタスシンボル的存在が、四つ葉タクシーなのであろう。ということは、運転手サイドには何らかの効用をもたらしている可能性がある。


しかし、お客さんサイドにとってはどうなのか。


四つ葉に巡り会いたいがために、ヤサカを選ぶ、というシチュエーションは基本的にはあり得ない。流しのタクシーを拾うときに「あ、おたくは四つ葉じゃないから結構です」なんて断りを入れることは不可能ではないにせよ、かなり勇気を求められる振る舞いとなるだろう。その昔『乗車拒否』といえば、ドライバーが近距離の客に対してやる不埒な行為だったが、乗客サイドの乗車拒否とはこれいかに、である。


そもそも、タクシーを待っているときに四つ葉限定で待つ、などということは非現実的である。ヤサカさん限定でも確率は0.3%なのだ。京都中を走っているタクシー総数を分母とすれば、その確率はさらに二桁ぐらい小さくなるだろう。


では、四つ葉タクシーの存在によって、ヤサカファンが増える効果は期待できるか。これまた、難しそうだ。なぜなら、四つ葉じゃないけれど仕方がないからヤサカにするかという選択をするシーンも想像できない。むしろ現実的には逆のパターンの方がありそうだ。


すなわち「せっかく四つ葉のタクシーに乗ったろと思って、何台もやり過ごしたのに、ちっともけえへんやんけ。けっ、腹立つからMKにでも乗ったるわい」となるわけだ。


ヤサカさんは、このあたりの顧客の思惑について、どうお考えなのだろうか。ぜひ伺ってみたいところである。


昨日のI/O

In:
井出祐昭氏インタビュー
Out:
リードコピー750本ノック

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