1円当たり顧客満足度


一泊4980円


非常にリーズナブルなホテル『スーパーホテル』については、以前のエントリー(→ http://d.hatena.ne.jp/atutake/20081016/1224153739)
でもご紹介したことがある。筆者の顧問先がある新居浜スーパーホテルは、定宿とさせていただいてもいる。リーズナブルな価格を実現するために同ホテルは、とても合理的な考え方をされてもいる。


例えば客室には電話がない。今どき、ほとんどみんなが携帯電話を持っているのだから、わざわざ部屋に電話を付ける必要はないでしょう、という割り切りがその背景にある。また部屋の鍵もない。チェックイン時に渡される領収書に記載された暗証番号が鍵の代わりになる。おそらくリアルな鍵を付けたり、カード型の鍵を使うよりも、この方が長期的なコストパフォーマンスが高いのだろう。


その合理主義の極めつけは、夜間にスタッフがいなくなることだろうか。こればかりは、さすがに「もし夜中に、お客さんが急に具合が悪くなったらどうするのか?」という疑問が残る。とはいえ、夜間のスタッフを置かないことが人件費削減につながることは間違いない。


というぐらいにラジカルな考え方を徹底するスーパーホテルだが、実は「宿泊費を日本一低くする考え方よりも1円当たりの顧客満足度を上げようとしています(日経MJ新聞2010年9月27日付け3面)」のだという。


1円当たり顧客満足度という考え方がおもしろい。仮に顧客満足度を100点満点として考えればどうなるか。帝国ホテルが満点だとしても、宿泊費が5万円なら、1円当たり顧客満足度は100/50,000=0.002に過ぎない。


これに対して、スーパーホテル顧客満足度が60点だとすればどうなるか?60/4980=0.012である。帝国ホテルの6倍にもなる。満足度は、対価とのバランスで決まるのだから、スーパーホテルの考え方には一理ある。


もちろんホテルを評価するポイントは、設備だけでなく人によるサービスから接客、付帯設備に至るまでいろいろな要素がある。だから帝国ホテルが満点で、スーパーホテルが60点という採点自体がおかしいと指摘される方もいるだろう。


では逆に考えて、スーパーホテルの1円当たり顧客満足度が帝国ホテルと同じ0.002でいいとすれば、スーパーホテルの満足度は約10点で良いことになる。そう思えばかなり納得感が出てくるような気がするけれど、いかがだろうか。


それはさておき、指標としての1円当たり顧客満足度は有用性が高いのではないだろうか。単に安くするだけではなく、かといってオーバスペックになることは慎重に避けながら、価値と対価のベストバランスを探る考え方が、1円当たり顧客満足度ではないだろうか。


これを考えるためには、当然、顧客像が明確になっていることが前提条件となる。つまり、どんなお客様から評価されたいのか。スーパーホテルの場合はこのターゲット像がはっきりしているのだろう。


だからこその超合理的割り切り主義と考えれば納得がいく。電話がなくても困らない人たち、部屋のカギに暗証番号で問題なく操作できる人たち、であれば、夜中に急に何か起こることもたぶんない、ということ。


顧客像を明確に意識して、1円当たり顧客満足度を考える。真似のできる経営手法だと思う。




昨日のI/O

In:
マーケティング・インタビュー』上野啓子

マーケティング・インタビュー 問題解決のヒントを「聞き出す」技術

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Out:

昨日の稽古:京都壽康苑道場

・体ほぐし
・基本稽古
・ミット稽古
・型稽古