『やってみせ』の実践



京都新聞2011年3月19日付朝刊より


合計1000人が2000人に


前回のエントリーで書いた武雄市のホームステイは「タウンステイ」と名前を変え、さらに受け入れ人数が1000人から2000人へと倍増された。そして、すでにホームステイでの受け入れが605名に上っている。その動きの早さには、ただ圧倒されるばかりだ。


念のため再度書いておくが、佐賀県武雄市では被災者を『ホームステイ』をメインで受け入れるというのだ。公民館や体育館などに避難所を設置し、そこに入ってもらうだけではない。それらも併用するが、メインはホームステイである。


もちろん被災者の方からすれば、見知らぬ人の家に世話になることへの気遣いもあるだろう。被災者同士で固まっている方がいいとおっしゃる方もいるはずだ。でも、中には、畳の上でゆっくりしたいと考える人もいるに違いない。


受け入れ体制は、さまざまな選択肢があった方がいい。とはいえ最初に、このホームステイ構想を聞いたときには、それはすごいと思ったものの、果たして市民がどれだけ協力されるのだろうかと余計な心配もした。


しかし、それはまったく杞憂に終わった。武雄の方々はとにかく動くのだ。なぜ、動くのか。市長が率先垂範、身を以て動くからだと思う。今回のホームステイでも、市長自らが受け入れ先となるという。といえば「そりゃ、市長さんだから、さぞかしでっかい家に住んでるんだろう。空いてる部屋だって、いっぱいあるだろう」と思われる方もいるかもしれない。


が、それは違う。市長の住まいはアパートである。失礼な言い方かもしれないが、決して豪勢なマンションではない。マンションとも呼べないこともないが、ともかくごく普通のお部屋である。そこで被災者の方を自ら受け入れる。その動きが、市民の皆さんを動かす力になる。


募金の呼びかけにしてもそうだ。自分が街頭に立つ。募金箱を持つ。自らの声を枯らして、市民の皆さんにお願いする。いつも、自らが先頭に立って動くのである。だから、人はその動きに付いていくのだ。これこそがリーダーシップではないか。


「○○市では、被災者の皆さんをホームステイで受け入れたいと思います。ついては受け入れ先となってくださる市民の方は、ぜひ市役所までご一報を」と呼びかけるだけではないのだ。「うちの市でも、募金をやろう。職員を何人か街頭に立たせてくれ」と指示するだけではないのだ。


当面は最低2週間以上としながらも、受け入れが永住になりそうな予感も持ち、そのための覚悟も決めているという。となると、受け入れた方たちの仕事が必要になるはずで、そこも何らかの考えがあるのだろう。


『やってみせ、いって聞かせて、させてみて、褒めてやらねば人は動かじ』と語ったのは山本五十六元帥。それを地でいくのが、武雄市長・樋渡啓祐氏である。



昨日のI/O

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『雑文集』村上春樹
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