エネルギーを将来どうまかなうか


日本全体で30%


日本の発電に占める原子力発電の割合だ。今回の事故で、原発の危険性が明らかになった(というか、今回のような事故は起こらないはずだったのだが)。だから原発をやめるべきだという声が大きくなっている。一方では、原発をやめたら、今の電力をまかなえないではないかという議論もある。


事故により漏れた放射線で、原発近辺には、今後(おそらく未来永劫といっていいぐらい長期間)人が住めなくなったといわれている。方や、今のところ、事故で死んだ人はいないではないかという反論もある。


あるいは仮に、今後、今回の放射能漏れで亡くなる人が出てくるとしても、交通事故の死者も毎年1万人ぐらいはいるのだから、原発と自動車は今の暮らしを維持するための必要悪ではないか、といった論調もネット上のどこかで見かけた。


原発分は、少なくとも東電に関しては、停止している火力発電所を復活させれば、需給バランスの改善は可能という意見があった。しかし火力発電は、長期的に考えた場合には、一次エネルギーを海外からの輸入に頼らなければならない日本にとっては、エネルギーの安全確保の点から問題があるとの指摘がある。


それなら原発分の電力は、太陽光発電風力発電など再生可能エネルギーでまかなえば良いではないかという考え方がある。これに対しては、少なくとも現時点の太陽光発電風力発電の技術では、安定した発電量を継続的に確保することはできないといわれる。そりゃ確かにそうだろう。


もう少し中期的に考えて、日本の今後のエネルギー需要がどう変化するのかを考えに入れてみる。すると人口が確実に減っていくのだから、エネルギー消費も減るとの予測がある。2050年には2010年の75%ぐらいになると推測されている(三菱総研「2050年エネルギー環境ビジョン」より)。それなら原発がなくても良いのではないかという考え方も成り立つ。


では、残りの75%をどうまかなうのか。


中期的には問題はここに絞られるのではないか。40年後(自分は恐らくこの世にはいないだろう)に電力消費量が今の7割ぐらいに減るなら、原発分がなくなっても大丈夫なのかもしれない。しかし例えば今の7割とはいえ、それだけのエネルギーをどうやって確保するのかという問題は残る。


火力発電は恐らく難しいのではないか。その理由はエネルギー源となる石炭、LNG原油などが枯渇する恐れがあることが一つ、仮にタールサンドやオイルシェール、あるいはメタンハイドレードなどの現時点では採算が合わない資源が採算ベースに乗ってきたとしても、CO2排出の問題が残る。


あと40年間、今以上のペースでCO2を出し続けるとどうなるのか。実際のところ地球温暖化がどうなるのかは、わからないというのが正直なところだろう。ただし、最善から最悪のシナリオがある中で、最悪のシナリオ通りになった場合には、地球は人の住めない星になる。そして、最悪のシナリオは、ある時点を超えてしまってからでは後戻りできない。このリスクをどう考えるか。


宇宙空間で太陽光発電をして、そのエネルギーを地球に電磁波かなんかで送ればどうかというアイデアもある。これなら天候に影響されずに太陽光エネルギーをフル活用できる。問題は莫大なコストを世界でどう分担するのかにかかっている。


と、ここまでの話の中の技術的な面は、すべて現時点での可能性がベースになっている。技術はブレイクスルーする可能性がある。だから地熱発電が救世主になる可能性があり、宇宙空間での太陽光発電にも可能性はある。もちろん太陽光発電の効率が飛躍的に高まり、発電した電気を同じく高効率に蓄電できるバッテリーが開発される可能性も否定できない。


技術的なブレイクスルーでいえば、福島原発よりはるかに安全性の高い原子力発電ができるようになることも考えられるのではないか。あるいは少なくとも、福島原発で指摘されているような初動対応での人為的なミス撲滅の可能性もあるのかもしれない。


被害が拡散している現状では、冷静に考えることはなかなか難しいけれども、自分たちの子どもたちの子どもたちのためには、どういうエネルギー環境が望ましいのか、を冷静に考える必要はあると思う。



昨日のI/O

In:
北里大学病院24時』足立倫行
Out:
S社様社史原稿

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