形容表現に注意


九電会長に深々と頭を下げる古川・佐賀県知事


昨日、博多駅で買った毎日新聞一面の写真に付けられていたキャプションである。記事では佐賀県九州電力から多額の寄付を得ていたことが記されていた。また原発立地県が、原発事業者から寄付を受けるのはいかがなものか、といった大学教授によるコメントも加えられていた。


最初、違和感を感じたのはキャプションである。どこが引っかかったのか。「深々と」という副詞だ。次の二つの文章を比べてみてほしい。
九電会長に頭を下げる古川・佐賀県知事
九電会長に深々と頭を下げる古川・佐賀県知事


この副詞には、書き手のある意図が明確に込められている。そう感じるのは私だけだろうか。


「やらせメール」事件以来、九電といえば『悪者』というのが相場となっている。であるなら、その会長こそは、悪者の親分と見なされるだろう。そうした人物に「深々」と頭を下げるのは、どういう人物なのか。


しかも、頭を下げている人物は、相手から多額の寄付を受けている。こいつも悪者なのだ、と読み手に思わせたい。そんな意図が透けて見えるようだ。


その記事の正誤、善悪を問題にしているわけではない。言いたいのは、新聞記事にはある種のバイアスがかかっている可能性に、いつも注意すべきだと言うこと。この記事は、その典型的な例のように思えた。


仮に、古川知事が、誰に対しても「深々」と頭を下げる方だったら、どうなるのだろう。もとより知事が人とあいさつされるすべてのシーンを見たはずもないので、確証を持って言えるわけではない。けれども、少なくとも私の取材に応えていただいた時の知事は、一ライターに過ぎない私に対しても「深々」と頭を下げてくださった。それは、こちらが恐縮するほどの礼儀正しさであった。


新聞記事に、何らかの形容表現、あるいは読み手の感情に訴えかけるような言葉遣いが使われている場合、要注意だと思う。


昨日のI/O

In:
『私の國語教室』福田恒存
Out:
C社プレスリリース原稿


昨日の稽古:

肩ほぐし