フィットネスクラブの似て非なる戦略


38%vs29%


フィットネス大手が若者層の集客に苦しんでいる。38%とは、ルネサンスの39歳以下会員比率だ(日経産業新聞2012年4月4日付16面)。4年前に比べて、2011年3月期末は6ポイント低下している。一方、こちらも大手のセントラルスポーツは20代、30代会員併せて29%である(前掲紙)。


空前の(といっても過言ではないと思う)マラソンブームだったり、健康志向が強いにもかかわらず、この数字ではフィットネス業界の先行きはあまり明るくない。現時点で会員の大多数を占めるのは、やはり団塊を中心とする50代以上の世代なのだろう。


そこで、ルネサンスセントラルスポーツ共に若年層の集客強化に取り組んでいる。同じターゲットを狙っているのだが、その戦略が明らかに異なる。フィリップ・コトラー先生の『価値の3層モデル』を参考に考えると、両者の違いが明確になる。


『価値の3層モデル』では、製品やサービスの価値を、中核価値・実体価値・付随機能の3つに分解する。中核価値とは、顧客がその製品やサービスで手に入れる核となる便益のこと。実体価値は、製品の特性を構成する要素である。そして付随機能は、中核価値には直接的な影響は与えないものの、その存在によって製品・サービスの魅力が高まる要素をいう。



フィットネスクラブなら、中核価値をひと言で表せば「ヘルシー&ビューティ」となるだろう。実体価値は「施設・プログラム・インストラクター」、付随機能は「アメニティ設備・接客・立地」などである。


では、ルネサンスセントラルスポーツの若者集客戦略はどう違うのか。


ルネサンスは「運動靴のいらないフィットネスクラブ(前掲紙)」をアピールしている。通常、フィットネスクラブで運動するときは、靴を履き替える。ところが、実はこれが以外に面倒である。クラブに置いておく人はともかく、そうではない人は持ち歩かなければならない。仕事帰りにふらっと行きたいと思っても、靴がなければアウトである。


そこでルネサンスは、裸足OKのスタジオを作り、素足でできるプログラムを作った。この場合、コトラーの3層モデルで考えれば、中核価値に変化はない。実体価値の施設とプログラムを素足対応に変えたのだ。


一方、セントラルスポーツは、ルネサンスとはまったく異なる方向性のようだ。同社は「施設の外でのイベント活動を勝機につなげる戦略(前掲紙)」を採っている。その背景には同社なりの社会情勢の読み(PEST分析ですね)がある。


すなわち同社は「インターネットの交流サイト(SNS)の急速な広がりを受け、会員同士が交流できる機会を提供することは若者獲得のカギになる(前掲紙)」という。そこで会員以外でも参加できるスポーツイベントを開いて集客に努めるらしい。この戦略では、中核価値に「交流/友だち作り」を加えている。


確かに、ことフェイスブック限っていえば、このSNSはオンライン上よりもリアルでの活動を促進する機能がある。とはいえ、フィットネスクラブの中核価値として「交流」が、若年層に受け入れられるかどうか。


セントラルスポーツが、どのような具体策を実施するのか。すなわち4Pの中でもProduct(具体的なイベント内容や、交流を意識したプログラムなど)、Promotion(イベントの告知などの広告、プロモーションなど)に注目してみたい。


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昨日のI/O

In:
『その「うつ」うつ病か』飯島幸生
Out:
某インタビュー原稿
セミナーテープ起こし

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