売れるように創り、実際売れてるクルマ


受注は月間販売目標の8倍


トヨタの『ハチロク(86)』が売れている。ハチロクといえば、筆者の世代にとってはAEである、レビンである。ライトウェイトスポーツ最高のFRと言ってもいい。ノンターボ・ツインカムエンジンのシャープな吹け上がりを楽しむ車であり、ノンターボだからこそドリフトをコントロールしやすいクルマでもある。


ちなみに筆者はRX-7(FC3)に乗っていて、ドリフトをし損ねてくるっと回ってしまったことが3回ほどあった(あ〜こあかった)。ロータリーのターボは、いきなりドカンとくるからドリフトコントロールなんて、腕のないドライバーには無理なのだ。


ともかく『ハチロク』が売れている。売れるように創り、狙い通りに売れたと言っていい。これはなかなかすごいことだが、マーケティングの王道、STPをきっちり抑えた上で、STPにバチっと整合性のとれたProductとあれば売れる。しかも、現時点でハチロクにはガチの競合がない。売れないほうがおかしい。


ハチロク』のSTPを整理すると
Segmentation:スポーツカー>FR>ノンターボ>ドリフト可 かなりとんがって絞りこまれている
Targeting:スポーツカーマニア>走り屋>(峠愛好者?)
Positioning:下図の通り



このSTPを受けたコンセプトが『スポーツカーは、カルチャーです』。このコンセプトコピーには、いささか違和感を感じないでもないが、まあ目をつむるとしよう。では『ハチロク』はどのようなProductに仕上がったのか。


「86は90%以上の部品が新設計だ。普通は逆で10%ぐらいが新設計。市場調査をするとスポーツ車を欲しい顧客は多かったが、『他のクルマとおなじ部品が使われていると思うと買う気がなくなる』と世界中で言われた(日経産業新聞2012年4月23日付14面)」。こんな設計がまかり通ったのは、おそらくトヨタでは2000GT以来の珍事ではないか。


さらに「開発には節目の締め切りが何度かある。通常は締め切り後は一切変更不可だが、86は何度かそのルールを破った(前掲紙)」というのも同じく、トヨタではまずあり得ないことではないか。


しかし開発者は、STPとProductの整合性にこだわった。そのテイスト、トーン&マナーに徹底的にこだわった。その結果86はベストセラーになりつつある。エアコン無しのスパルタンモデルで200万円を切っているのだから、売れないほうがおかしいだろう。


ただ一点、残念なのはエンジンを自社開発しなかったこと。決してケチを付けるわけではないが、スバルのボクサー4はベストチョイスだったのだろうか。それだけが疑問だ。




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In:
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Out:
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昨日の稽古:

懸垂