お一人さま時代の終わり


前年比1.5倍


オンラインゲームの利用時間を伸ばしている複合カフェがある。複合カフェ最大手ヴァリック。同社は昨年末に新業態の複合カフェ「快活オンラインCAFE」を開いた。ここが若者の新しいたまり場として人気を集めている。


複合カフェ業界自体は「3年連続で市場規模の縮小にさらされ(日経産業新聞2012年3月26日付17面)」ている。複合カフェとは、ごく大ざっぱにいえば、いわゆる「ネットカフェ」のこと。個室やブースに区切られたスペースで、基本的に一人でインターネットを楽しむ(たいていの場合はオンラインゲーム)スペースだ。


軽食や飲み物が用意されているほか、コミックを読むこともできるし、中にはシャワー施設を整えているところもある。だから、そこをねぐらに生活する人ネットカフェ族も生まれた。が、いささか「ダークで危ない系」イメージがつきまとうことや、実際に放火による大事故が起こったことなどもあって人気が落ちていた。



そこで複合カフェが打ち出した新たな戦略が『脱おひとり様』、あるいは『新しい若者のたまり場』だ。


STPで考えれば、次のようになるだろう。
Segment:ゲーム>オンラインゲーム>複数でプレイ
Target:ゲーム好き(ただし一人よりみんなで楽しみたい人)
Positioning:ひとりで楽しむ→みんなで楽しむ



ポイントは、オンラインゲームを楽しみたいニーズは変わらないものの、その楽しみ方が変化しているということ。一人ではなく『みんなで』がキーワードだ。実際、複合カフェ自体の市場規模は縮んでいるが、オンラインゲームの市場は拡大基調にある。


「日本オンラインゲーム協会(東京・渋谷)によると、オンラインゲームの市場規模は10年に前年比2.5%増の1329億円。04年から6年連続で増えた。ゲームでできた仲間とみんなで遊べるのがオンラインゲームの1つの魅力だ(前掲紙)」


ここで勝手な仮説を一つ立ててみたい。


オンラインゲームが人気を集める大きな理由として、おひとり様より、みんなで遊んだほうが楽しいことがわかってきたのだと思う。おそらく、今の年代にして40代以降の人たちなら、そんなの当たり前じゃないかと思われるに違いない。けれども、それ以下の年代層の人たちは、みんなで、それも年齢の異なる人と一緒に遊ぶ楽しさを、ほとんど知らなかったのではないか。


なぜなら、今の30代以下の人たちは、幼稚園から小学生の間に、年齢の異なる子どもと一緒に遊んだ経験が、あまりないと推定されるからだ。その背景にあるのは、遊び場所と遊び方の変化だと思う。


遊び場所の変化とは、近所の公園や空き地が誰かの家に変わったことを意味する。遊び方の変化とは、何人かの子どもたちが集まる屋外での遊びから、多くても3人ぐらいまでで楽しむ部屋の中でのゲームへの変化である。


子ども時代に、たくさんの年の違う子どもと一緒に遊ぶ経験をしてこなかった世代が、今、オンラインゲームを通じて、いろんな人と一緒に遊ぶ楽しさに目覚めた。


これにより、一人よりみんなを好むトレンドが大きなうねりとなってきた。もしかするとシェアハウスが人気を集めていることや、朝活や勉強会に人が集まりがちなこと、SNSが人気を集めていることも、同じ要因が背景にあるのかもしれない。


脱・おひとり様は、これからの時代のマーケティングコンセプトの一つになるのではないだろうか。



昨日のI/O

In:
『時計まわりで迂回すること』堀江敏幸
Out:

昨日の稽古:

基本稽古・移動稽古・型稽古・約束組手・ミット稽古