勝負はデリバリーで決まる


世界物流拠点82カ所


Amazonは、今年「世界13カ所に物流拠点を新設する(日経産業新聞2012年5月1日付3面)。昨年までで69カ所だから、プラス13で82カ所となる。一つ物流拠点を作るのに、どれぐらいの投資が必要になるのかは見当もつかない。けれども、13カ所もの新設は、拠点数にして20%弱の増強だ。Amazonが拠点整備に非常に積極的であることはよくわかる。


翻って日本では、衣料品通販サイトの「ゾゾタウン」が、物流センターの取り扱い能力を4倍に拡張する(日経MJ新聞2012年4月30日付11面)。これにより対応できる商品の取扱高が4000億円になる。ちなみに、同社の物流強化投資については「新物流センターは、複合賃貸物流施設『プロロジスパーク習志野4』をリースする形で運営する。(中略)リースの総額は125億6700万円(前掲MJ紙)」


ネット通販の勝負を決める大きな要素が、デリバリー力だ。ゾゾタウンはネット通販ではAmazonよりはるかに後発だが、衣料品分野にセグメントを絞り込むことで、勝機を見出そうとしている。デリバリー体制強化に動いているのは、Amazon成長の歴史からしっかりと学んでいるからだろう。


ところでゾゾタウンは衣料品専門、では、Amazonは何が専門か。書籍やCD、ではない。Amazonの「1〜3月期の売上高は前年同期比34%増の131億8500万ドル。(中略)部門別売上高は書籍やCDなど「メディア」が同19%増の47億1000万ドル、「家電・その他」が同43%増の79億7500万ドル(前掲・産業紙)」。


Amazonはもはや、世界最大の本屋さんではなく、世界最大の通販ショップだ(さらにいうなら、世界最大の小売業を目指している)。といえば、Amazonが最近、遂に始めたテレビCMを思い浮かべる方もいるかも知れない。あのCMのメッセージは「Amazonには大人向けから子ども向けまで、男性にも女性にもセンスいいファッションアイテムを揃えています」だろう。


Amazonのビジネスモデルの最大の強みは、実はデリバリー、つまり物流にある。何を頼んでも、すぐに届く。注文した品と場所によっては、買いに行くよりも早く手に入る。品揃えはすこしずつ拡大しながら、決め手は脅威のクィックデリバリーで勝負しているのが、Amazonの本質ではないだろうか。


ジェフ・ベゾスAmazon創業時にライバルはウォルマートだと宣言していたという。Amazonウォルマートのビジネスモデルを比較し、仮にAmazonウォルマートに本当に勝つことがあるとすれば、それはどのような条件が満たされた時か。これを考えるのは、なかなか面白い思考実験になる。


カギは物流拠点の数だと思う。


2010年のAmazonの売上高は過去最高を記録し、342億400万ドル(2兆8389億円/83円=1ドル)、純利益11億5200万ド ル(956億円)、営業利益率4.1%となった。2012年は1〜3月期のペースが続くと仮定すれば、420億ドルとなる。ウォルマートの売上が2011年1月期で4,189億ドル、Amazonの10倍ぐらいあるが、こちらは前年対比の伸び率で見れば3.4%しかない。


仮にAmazonが、前年対比34%増で伸びていけば、10年でウォルマートの2011年度の売上高を追い越すことになる。Amazonがこれから、どのような成長戦略を描くのかは、その物流拠点投資が教えてくれる。


ちなみに、今のところ日本には、今年開設予定の2拠点を含めて物流拠点が11カ所ある。日本国内で30カ所、世界で200カ所の物流拠点が完成したときの、Amazonはどんな企業になっているのだろう。



Amazonの沿革とビジネスモデルをまとめた小冊子(PDF)を創りました。読んでみたいなんて奇特な方がもしおられれば、お名前と所属をメールでご一報いただければと思います。




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大阪市立大学・某准教授取材原稿

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