凍える夜の安眠法
体感温度零度
ちょっと大げさかもしれない。けれども、盆地京都の冬は底冷えがする。キリキリと寒さ募る京の町のビルの1階で眠る。築40年以上のビル故に、暖房装置は屋上に設置された巨大なガスエアコンとなる。これを稼働させると、ご近所一帯に響き渡るような唸り声を発する。
よって町が寝静まる夜間に、エアコンを動かすのはご法度となる。1階に火の気はない。しかも、玄関を塞ぐガラスの引き戸は立て付けに若干の難があり、真ん中に5ミリほどのすき間が空いている。もちろん、風の抜け道はないので、夜風が吹き込むことはさすがにない。
けれども、寒気はしんしんと忍び込んでくる。早い話が半端なく寒いのである。そこにただ一人、ふとんを敷いて寝ている。家族は4階でぬくぬくと眠っている。暖気は高いところへと上がっていく。3階では火の気もある。ならば、わざわざ寒々しいところで寝なければよいのだが、諸事情によりそうもいかない。
これでも、夏から秋にかけては実に快適な寝室であった。何しろ畳にして二十畳ぐらいの空間を独り占めしているのだ。そのゆったり感たるや半端ない。坪庭に向けて開いた窓にかかるロールスクリーンを上げておけば、やわらかな朝の光が差し込んでくる。目覚めも、心地良い。毎晩、少しずつ場所を変えて眠る、などというバサラチックな芸当もこなしてきた。
やがて季節は巡り、冬に入っても、寒さが本格化するまでは、なんてことはなかったのだ。だが、しかし。
1月に入ったある夜、いつも通り瞬殺で眠りに落ちたものの、夜中の1時頃に目が覚めた。背中がちめたいのである。腰のあたりがこわばる感じがする。敷布団の上にタオル地のシーツを敷き、毛布をかけ、さらに掛け布団との間に薄い布団もはさんでいるのだが、冷えは下からやってくる。
ビルの1階である。畳の下はおそらくコンクリートの基礎で固めてあるのだろう。想像するだけに寒々しい光景だ。そこからじんと冷えきった空気が、畳を通して伝わってくるのだ。敷布団の下に手を入れると、ひんやりとしている。冷気は下から攻めてくる。
その夜は結局、体を丸めることで寒さに対抗した。けれども、完全に打ち負かされた。仕方なく3時前には起き上がり、4階に行って仕事に取りかかった。ま、眠れないなら、仕事すればいい。そして早く起きたら、次の日はもっと早く寝ればいい。7時に床につけば、2時に起きたとしても7時間眠ったことになる。
と思って寒さに対抗しようとしてみたのだが、さて。時に寝るのが遅くなることもある。そんな時は、もう寒いのである。皮膚が体の内側にきゅ〜っと縮こまっていくような感じである。酔いの力を借りて何とか眠りに入ることはできるものの、すぐに目覚めてしまう。
これは何とかせねばと思って考えた。必要は発明の母なり。要するに冷たいのは背中である。それなら体の上にかけている毛布を下に敷けばよいではないか。だが、それだけではお腹の上がスースーする。ぽんぽんもぬくぬくでないと、眠れるものではない。
ならばと考えた。敷布団の真ん中辺りに毛布を敷き、その毛布の両側を真ん中に向けて折り返せばよいのだ。これなら上下に毛布があることになる。考えれば知恵は出るのである。やれうれしやとばかりに、毛布に潜り込む。このとき、すでに毛布の上に小布団、掛け布団がセットされているので、潜り込む際には慎重さを要する。あわてて入るとぬくぬく空間を確保できなくなるのだ。
これで、この冬を乗り切れる。
と思ったが甘かった。基本的に寝相はよい方だが、それでも若干の動きはある。動くと上にかけている毛布がずれるのだ。ずれると体の表面が寒い。これでは熟睡できぬではないか。どうすればよいのだ。万事休すかと思ったが、やっぱり少し考えれば知恵が出てくるものだ。
毛布のセッティングを逆にすればよいのである。しかも、折り返して体の下になる部分は、右と左を少しばかり重ねあわせるのだ。さらにナイスアイデアも一つ。足元も折り返して、体から出る熱を逃さないようにすればどうだ。これぞ毛布式寝袋(寝袋式毛布の方が正解か、どっちでもいいけど)である。
今のところ、これで何も問題はない。この先、どれほどの寒さが来ようと乗り切れそうな気がする。夜、寒くてお困りの方、ぜひお試しあれ。
うん? なんか根本的なところで間違っているような気がしないでもないけど、気のせいということにしておこう。それはそれ、これはこれ。そして人生は続く。Life goes onである。
昨日のI/O
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