スカイプはNTTをぶっ壊すか


全世界で4800万人、日本だけなら90万人。


画期的な音声通話ソフト「スカイプ」のユーザー数だ。まだまだ臨界値
には遠い。しかし、今後爆発的に普及する可能性がある。このスカイプ
基本的にはIP電話の一種と考えていいのだが、これまでのネット電話
とは音質を含め使い勝手がまったく違う。


その最大の理由は、中央サーバーを介さずにユーザー同士が直接接続す
るシステムになっているから。P2Pを使っている。そのためにたとえ
ば通話のための通信帯域を充分に取れる。だから音質がよい。そのうえ
ユーザー同士の通話は、海外を含めて完全に無料である。


もちろん通常の電話へかけることもできる。その場合は1分約3円、携
帯電話が相手なら1分約20円だ。海外へかける場合も料金は変わらな
い。国際電話、国内電話の区別がなくなる。


とりあえずNTT関係者は、この先の展開に青ざめているのではないだ
ろうか。


ユーザー同士が無料となれば、誰が使うか。すぐに思いつくのが企業だ
だろう。つまりある企業がスカイプを導入すれば、少なくともその企業
内の社内電話は完全に無料になる。


しかも、つい最近一般電話からの着信もできるようになった。さらには
最大5人までの同時通話(=電話会議ができる)、テキストによるチャッ
ト、ファイル転送などもスカイプを使えば簡単にできる。スカイプ専用
の使いやすい周辺機器も販売されつつある。さらにはスカイプを利用で
きる携帯電話型の無線LAN端末も開発が進んでいるという。


NTTドコモ関係者は、キリキリと胃がさすように痛んでいるのではな
いだろうか。


携帯電話が街の公衆電話を一掃したように、スカイプは、まず企業内の
電話を一掃するだろう。やがて使いやすい機器が普及し、オフィスでス
カイプの使い方に慣れた人たちが増えた時点で、わずかに残っている家
庭の電話が一掃される。


そして携帯電話型の端末が普及し、インフラとしての無線LANが整っ
てきた時点で、携帯電話が一掃される。すべての電話がスカイプに切り
替わる可能性も決してゼロではない。


注目したいのは、このスカイプ自体のビジネスモデルがGoogleタイプで
あること。つまりGoogleが検索システム自体では収益を得ず、広告掲載
などの関連サービスで収益を得ているのと同じく、スカイプも基本的に
は通話料収入を当てにはしていないようだ。


インターネットという公共(=無料)のインフラを使う。高性能/低価
格化するコンピュータ性能をフル活用する。そして新しい価値を世の中
に提供する。対価は提供するその価値自体に対してではなく、周辺サー
ビスから得る。


これがネット時代に成功するビジネスモデルではないだろうか。ただ一
つ、スカイプに心配な点があるとすれば、これがアメリカ発ではないこ
とに尽きる。アメリカがスカイプ普及を許すのかどうか。この点も注視
すべきポイントだろう。



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