顧客のまわりの顧客を狙え


総投資額114億円。


千葉県にある亀田総合病院の話。そんなに投資して大丈夫なのかとは思
う。巨額投資だが、めちゃめちゃ差額ベッドが高いわけでもない。一日
1万5千円程度のベッドが250室とある(日経MJ新聞11月16日)。


仮に稼働率(病室について、こんなホテル用語をあてはめていいのかど
うかはおいとくとして)80%とすれば、一日あたり差額ベッドでの売
上が300万。年間では11億ぐらいだ。


これと投資額114億円が見合うのかどうか。病院経営はよくわからな
いのでひとまずパス。それよりも注目したいのは、この病院のビジネス
モデルである。


要するに病院として誰に、どんな価値を提供するのか。


そこが病院である限り、もちろん患者さんを元気にすることに最上位の
価値がある。しかし、特に闘病生活が長引く場合などは、病に臥せって
いる本人が苦しいのはもちろんだが、付き添いや見舞いに訪れる人の心
労も生半可なものではない。


どうやら、亀田病院では、こうした周辺顧客への価値提供も考えている
ようだ。だから病院の最上階には本格派の料理人が腕を振るうレストラ
ンがあり、アルコールを出すバーもある。


総合病院だから病の種類によって少しぐらいお酒を飲んでも構わない、
なんてこともあるだろうけれど、やっぱりこれは付き添いや見舞いにき
た人のための施設と考えるべきだろう。


そこで考えるべきは、入院する病院を誰が決めているか。仮に患者が子
どもなら、当然親が決める。そしてこの場合の子どもというのが、実は
かなりな年齢までを指すのではないか。少なくとも30代ぐらいまでな
ら、どこの病院に入るかを決めるときに親が口出しする可能性が高いの
ではないだろうか。


しかも、この世代ぐらいまでの親はどちらかといえば金持ちである。子
どもの健康を取り戻すためなら、自分がお金を出そうと考えるタイプも
多いはずだ。となると、医療技術がそこそこだとすれば、そこがどんな
病院かで入院先が決まるケースが、これから増えてくるのではないだろ
うか。


そこで亀田病院である。付き添いやお見舞いの人からも選ばれる病院を
狙ったのではないだろうか。普通の病院は、どうひいき目にみても、憂
鬱になる。疲れる。ところが、この病院なら病室は快適で、食事はおい
しくて、お酒だって飲めてしまう。


一日あたり5万円ちょいの差額を払えば、海を見渡せるジャグジーバス
付きの病室にだって入れるのだ。これって、ちょっとしたリゾートホテ
ルよりいいかも、なんて思ってしまうのは不謹慎なのでしょうか。


顧客のまわりの顧客を狙う。ビジネスモデルを考える時の重要なポイン
トだと思う。


昨日のI/O

In:
日経アソシエ
Out:
S社社長インタビュー記事


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