不滅のテーマパークなんてあり得るのか


年間2500万人


先頃発表されたディズニーリゾートの2006年3月期の入園者数見込
みである。単純に日割りすれば、一日あたりで6万8500人。とんで
もない数字だと思うのだけれど、これでも実は開業以来の二期連続減少
となるそうだ(日経新聞11月27日)。


いよいよ、あの不滅のディズニーランドにも凋落の兆し、なのだろうか。


数あるテーマパークの中でもディズニーはダントツに異色の存在だ。ど
こがよそと違うかといえば、赤字になっていないこと。テーマパークと
は基本的に採算の合わないビジネスモデルだと思っている。もちろん勝
手に思っているのではなく、これまでに造られたテーマパーク、レジャ
ーランドをみれば倒産していないところの方が圧倒的に少数派である。


オープン当初からお客さんが来ない、なんてところは滅多にない。初め
は珍しいから、どこもそれなりに人を集めるのだ。それどころかかなり
華々しく取り上げられるところもある。ほら北九州にあったスペースな
んちゃらとか、四国に鳴り物入りで建てられたレオマとか。


ところが、いずれもオープン初年度こそ予想以上の入場者を稼いだりす
るものの、あとはじり貧の一途。5年も経たないうちに、このままでは
経営が成り立ちません、なんて状態に陥るところが多い。


なぜか。理由は簡単で、投資額+経費と収入のバランスが取れないから
だ。最初にど〜んとメディアに取り上げてもらい、入場者に勢いをつけ
るためには、大掛かりな初期投資が必要になる。どれだけおもしろくて、
これまでに見たこともないようなアトラクションを揃えられるかが勝負
なのだから、これは仕方がない。


しかし、いくら初期投資をかけたところで、せいぜい2回も行けば飽き
る。ところがそこで飽きられたんじゃ、初期投資を回収できない。初年
度から赤字が続くわけだ。その上、3年目ぐらいからは新しいアトラク
ションをどんどん入れていかないと、さらに客足が遠のいていく。


アトラクションを追加すればさらに投資がかさんで赤字、何もせずに客
が減れば売上が減っていって赤字。どっちに転んでも赤字になる。


ディズニーでは、シーがオープンした03年以降も、設備投資を150
億、300億、470億と増やしている。今後も毎期、200〜300
億の投資を続けるようだ。これだけの巨額投資をかけられるのは、減っ
たとはいえ毎年2500万人ものお客さんを集めているからである。


ちなみに大阪にあるUSJの開業時資本金が400億。これと比べれば
ディズニーの投資がいかに大きいかがわかるだろう。毎年ここまで、お
金をかけて新しいアトラクションを入れているから2500万人をキー
プできるというわけだ。付け加えておけばディズニーの場合は、スタッ
フの接客サービスも日本で一二を争う高いレベルにあり、これも集客力
に大きく貢献している。


だからディズニーはテーマパークの中では異質の存在なんだと思う。逆
にいえば、たいていのテーマパークは最初から成功する確率が極めて小
さいビジネスモデル、ということだ。そして不思議なのは、そんなこと
はわかっているはずなのに、なぜか未だに新しいテーマパークを造ろう
とする経営者がいること。


テーマパークビジネスには、経営者の冷静な判断を狂わせる媚薬のよう
なものがあるのかもしれない。


人口そのものが減っていき、さらには香港ディズニー開業から上海ディ
ズニーの計画も立ち上がっている中で今後、ディズニーがどう生き延び
ていくのか。


ここをしっかりとみていけば、新しいビジネスモデルのヒントを得られ
るかもしれない。08年にはオープン25周年を迎える。企業寿命30
年説をディズニーがどう打ち破っていくのか。とても参考になる生きた
教材だと思う。




昨日のI/O

In:
『街場のアメリカ論/内田樹
Out:
NPOミーティング用レジメ



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