40円か40億か


日本の富裕層―お金持ちを「お得意さま」にする方法

日本の富裕層―お金持ちを「お得意さま」にする方法




1.6%が15%


何の話かといえば、これが日本の富裕層の姿。世帯数にして78万世帯の富裕層が、日本の個人金融資産の15%、金額にして163兆円ほどをもっている。単純平均すると、一世帯あたり2億円とちょっとになる。


さらにくわしくみると、全体の0.1%にあたる6万世帯は、資産5億円以上の超・お金持ちだ。こうした人たちを対象としたビジネスはどんなものかといった話が書かれている本を読んだ。
→『日本の富裕層/臼井宥文』宝島社


この中におもしろい例えがある。


それが冒頭の40億か、40円かの話。富裕層を対象として1機40億円のプライベートジェットを売るのと、一般消費者を対象として40円のガムを1億個売るのでは、どちらが楽か(上記の本の中では、1個10円のガムを4億個となっていたけれど、こちらの方が語呂がよいので数字は変えさせてもらいました)。


仮にどちらの場合も販促費を一般的な売上の3%使えるとすると、1億2千万円になる。これだけあればガムの販促としては、十分とはまではいえなくても、そこそこのことができるだろう。タレントを使ったテレビCMも選択肢に入ってくるはずだ。セオリー通りの展開でも、商品がそれなりの力を持っていれば合格点は取れるだろう。


では、1億2千万円の販促費をかけて、プライベートジェットを買ってくれるお客さんを掴むためにはどうすればいいのだろうか。自分がやるビジネスとして考えて、ガムを売るのとどちらが楽かと問うなら、こちらの方がはるかに難しそうだ。まず40億をポンと出せる人と、どうやって接点をもつか。ここがキーポイントである。


同書によれば、富裕層の58%が企業の会長、社長、役員だ。あと20%が医師や弁護士などの専門職となっている。となると、接触するためのルートは見えないこともない。


あるいは、こうした人たちがどんなところに住むかを考えてみてはどうか。これもこの本に書いてあったことだけれど、富裕層は「庶民」のマンションには、住みたくないそうだ。仮に最上階のペントハウスでもイヤだという。


なぜならペントハウスが1億円だったとしても、それ以外の部分が3000万円ぐらいのマンションだとすると、建物全体としては3000万円クラスである。ということは、まず立地がそのクラスになるし、セキュリティもその程度でしかない。とても富裕層を満足させるものとはならない。


富裕層が好むのは、そうした人たちのために特別に建てられたマンションだというわけだ。それならばそういうマンションを探すのも一案だ。


同じようなことが一戸建ての家についてもいえるだろう。東京なら田園調布、関西なら芦屋の六麓荘、富裕層は富裕層同士で固まって住む傾向がありそうだ。住んでいるところがわかれば、接点を作れないことはないだろう。


ずっと前のエントリーに書いた『福袋マーケティング』も使えると思う。
http://d.hatena.ne.jp/atutake/20050624


いずれにしても1億あまりの販促費をかけて、超特定少数の人を相手としたビジネスを展開することになる。40円のガムを1億個売るのと、40億円のプライベートジェットを1機売るのと、ビジネスモデルとしては、どちらが難しいだろうか。あるいはどちらがおもしろいのだろうか。


とりあえず難易度については、プライベートジェットの方が難しそうだ。でも、こちらの方が、はるかにおもしろそうでもある。そして商材としては、たぶんアンチエイジングとかの「美しく快適な長生き」願望に訴えかけるようなものが当たりそうだ。


それにしてもプライベートジェットねえ、ホリエモンももってたらしいけれど、彼はどんなルートで買ったんだろ。



昨日のI/O

In:
『日本の富裕層/臼井宥文』宝島社
『やまとことば』河出文庫
Out:
新富裕層レポート



昨日の稽古: