凸版のウェブ2.0が狙うのは


100社4000店舗1000万ページビュー


凸版が展開するチラシサイト『Shufoo!』の現状である。
http://www.shufoo.net/
これが実はなかなか奥の深いビジネスモデルをめざしているのではないか。


現時点では、郵便番号を入力すれば、その地域に配布されるチラシを一覧で見ることができる。その中から見たいチラシを選べばそれが大きく表示される。さらにそのチラシの中でもじっくり見たい部分をクリックすれば、その部分だけが拡大表示される。ここがミソだ(日経産業新聞5月31日)。


このクリックデータがサーバーに記録される。つまり、チラシの中のどの部分がどれだけクリックされたかがわかる。クリックされる、つまり拡大して見られた部分(=商品)は、消費者の関心を集めたものと仮定できる。であるなら、クリック数と実売データを併せてみていけば、次の展開を考える上でのベーシックデータになるだろう。商品の見せ方、キャッチコピーの考え方によって反応率がどう変わるかを比較することもできる。


さらには夜間、すなわち開店前にどの商品のクリック数が多いかがわかれば、その商品の陳列を変えることもできる。関心を集めた商品を目立つように展示すれば、売上アップにつながる可能性は高い。スーパーやホームセンター、家電量販にスポーツショップなど流通業にとっては使い勝手のいいサービスだ。


しかも、このサービスを凸版はちょっと考えられないぐらいの割安価格で提供する。チラシ掲載の基本料金は1店舗あたりわずか月額5万円、効果測定は追加で月額1万円だという。ということは1店舗で月額6万円の販促予算を組めば、売上アップを期待できるわけだ。


凸版はこのビジネスと同じシステムを使う通販カタログサイト『カタログでパートparaly』の両サイト併せて3年後に30億の売上をめざすという。まあ、この数字は相当に控えめというか、いい加減というか。凸版の狙っているのは、こんなものじゃないはずだ。


なぜなら現状でも
1店舗当たり年間:(5万円+1万円)×12=72万円
すでに4000店舗が利用しているから
凸版の年間売上額:72万円×4000=28億8000万円
となる。


しかし凸版の本当の狙いは、こんな売上だけじゃない。めざすのはチラシポータルサイトとしてのポジションを確立することだろう。このサイトに行けば、自分が見たいチラシをたいてい見ることができる。という評判になれば、チラシ提供者が集まってくる。掲載されるチラシが充実すれば、一方の消費者によるページビューも増える。


さらに本当に狙っているのは、その先だろう。3年後ということは、携帯ブロードバンドが当たり前になっていると予測される。繰り返しいっている携帯2.0の世界である。携帯が定額(=使い放題)ブロードバンドになっている。


今のところこの『Shufoo!』は携帯に対応していないが、いずれ携帯でも見れるようになるはずだ。というか主婦にとっては携帯で見れてこそ価値がある。そのときに、このチラシ”ポータル”『Shufoo!』は、どんなパワーを持つか。


片方には自分の住んでいる地域の郵便番号を入力したユーザーをつかんでいるわけだ。ということは特定地域の主婦が、毎日携帯でアクセスしてくるサイトになる可能性が高い。そのとき、そのサイトでどんなビジネスを展開することができるか。


主婦に見せることができるのはスーパーのチラシに限らないだろう。それこそ、特定地域で主婦に対して広告を出したいクライアントはいくらでもいる。仮に月額5万円で自分の店の商圏内の主婦に広告を出せるなら、いろんな店が乗ってくるはずだ。紙のチラシを高い印刷代と折込みコストをかけてバラ撒くことを思えば、費用対効果の差は明らかだ。Googleがグーグルマップで狙っているのと同じ戦略である。


と考えてくれば、これは凸版印刷が、印刷業の次世代ビジネスに乗り出したと考えることもできる。これからの時代にわざわざ紙のチラシを作る必要があるのかという話でもある。携帯でチラシを見ることができるようになれば、その時点で遂に紙のチラシは終わりとなるのではないだろうか。残るとすれば情報誌型、フリーペーパースタイルのチラシだけだろう。


この凸版の『Shufoo!』は、印刷業界にパラダイムシフトを引き起こす。そんな予感がする。


昨日のI/O

In:
『グーグル Google佐々木俊尚
Out:
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自立循環型住宅インタビュー記事


昨日の稽古:

 腕立て・カーツ散歩