ナナロク世代はユーザーオリエンティッド


ネット企業の経営者は「ナナロク世代」の時代だそうだ(日経新聞6月21日)。


ナナロク世代とは76年前後に生まれた経営者たちを指す。具体的には「はてな近藤社長」「mixi・笠原社長」「ドリコム・内藤社長」「gree・田中社長」などなど。


なるほど確かに共通点がある。共通するのは既存技術をうまく使いながら、コミュニケーションサポートをビジネスとしている点だ。たとえば「はてな」は「人力検索」からスタートして、今や「はてなダイアリー(このブログのことですな)」から何じゃかんじゃと知らぬ間に12ものコミュニケーション関連サービスを展開している。


はてな近藤社長は水曜を休める週休二日制を採用したり、社内会議を公開したり、あるいは開発合宿を行ったりと相当にユニークなマネジメントスタイルを取っている。がユニークだからといって肩肘張っているわけではまったくなく、とても自然体なところがいい。


あるいはmixigreeといえばこれはソーシャルネットワークサービス。本家はアメリカだが、日記&コメントやコミュニティなどいかにも日本人にフィットするコミュニケーションサービスを付け足すことで成功した。mixiなどは今や立派なポータルサイトとなっていて会員数は435万人もいる。
http://d.hatena.ne.jp/atutake/20060622/1150927562
http://d.hatena.ne.jp/atutake/20060621/1150850816


そしてドリコム。ここの内藤社長が一番若くて78年生まれ、上場しているのはここだけ。はてなmixiが生活者を相手としたサービスを提供している(だから収益モデルは基本的に広告になる)のに対してドリコムは、BtoBの世界でビジネスを展開している。今のところ業績の伸び具合に関しては、このドリコムが一番だろう。


内藤社長は目の付けどころがいい。昨日リリースされたニュースでは、特に中小企業のサイトをデザインを維持したまま、丸々移転するサービスを始めたとある(日経産業新聞6月26日)。マーケティング的にはセグメント・ターゲット・ポジショニング共に抜群の目利きだと思う。


今や中小企業もホームページを持っていないと、まともな企業じゃないぐらいの扱いを受ける時代だ。数年前の第一次ホームページブームの時にサイトを立ち上げた企業もたくさんある。が、立ち上げたままのところも実に多い。だからブラウザーによってはとんでもない見え方をしたり、フレームの使い方がまずくてまともに表示されない、なんてサイトも結構ある。ドリコムが狙ったのはこうした中小企業だ。


作り直したいのは山々だけれども、一から作り直すとなるとまた百万単位のコストがかかってくる。そんな企業のサイトをデザインやサイト機能は維持したままコピーして、ドリコムのサーバーに移転する。然る後にはドリコムが開発したコンテンツマネジメントシステムCMS)を使ってブログ感覚でサイト更新できるようにする。


これにかかかるコストが初期費用7万弱、一月当たりの利用料金がたったの1万8千円ときた。このサービスはプロモーションと営業の展開次第では、相当なヒットとなるのではないか。これは「サイト更新はしたいけれども面倒くさい」とか「ちょこっとでもHTMLのわかる奴が社内にはいなくて。でも外部の業者に頼むのもアレだし」といった『不満』『不便』『不具合』を一挙に解消するサービスとなる。


実に絶妙のポジショニングではないか。ビジネス的な嗅覚は内藤・ドリコム社長がいちばん鋭いのだろう。そのあたり、エスグラントの杉本社長にも同じニオイを感じる。杉本社長から聞いた話では、相当なやり手らしいし。
http://7starventures.com/episteme/archives/06/index.php


顔つき、装いその他から醸し出される雰囲気をみても内藤社長は、ほのぼの系の近藤社長や笠原・mixi社長とは一線を画しているようだ。とはいえみんな、コミュニケーションまわりにビジネスチャンスを見出している点では同じ。さらに徹底したユーザーオリエンティッドなスタンスも共通している。


こうした感覚をもった経営者は、これまでの日本にはいなかったんじゃないだろうか。特にベンチャー系となると、たいていが技術(力)を全面に打出して勝負していた。しかし彼らは違う。もちろんバックヤードには相当な技術力の裏付けを持っていながらも、そこはまったくアピールしていない。彼らの売りはあくまでも技術ではなく、技術を使ったコミュニケーション促進である。


これを日経の記事では「ネットを仲間との交流や情報交換の道具として使いこなしてきた世代だけに、コミュニケーション分野に特に強い」と分析している。


もう一歩突っ込むなら、コミュニケーションに強いのはコミュニケーションに敏感だからだろう。おそらく十代後半のもっとも多感な時期に、ポケベルに始まって携帯やインターネットが所与のツールとなった世代である。コミュニケーションへの感度は、それ以前の世代とは違った次元に達しているはずだ。コミュニケーション感度が高いということは、相手を思いやることができるということでもある。


そして、そろそろ86年生まれ(日経風にいうなら「ハチロク世代」)が二十歳を迎える。最近の傾向から考えれば、次はこの世代が新たなベンチャービジネスの担い手となってくるのだろう。彼らが、どんなビジネスを興してくるのか。そのコミュニケーション感度はどうなっているのか。ナナロク世代とはどう違うのか。


このあたりをしっかり見ておかないと、オッチャンとしてはオマンマの食い上げなんてことにもなりかねない。大変な時代となったものだ。


昨日のI/O

In:
『子どもはわかってくれない/内田樹
Out:
メルマガ

昨日のBGM

Black & Blue/The Rolling Stones
Exile on Main Street/The Rolling Stones
→結局中1のときに聞いてぶっ飛んだ「Rocks Off」がいつまで経っても、マイナンバーワン・ストーンズってこと
Revolver/The Beatles
alto madness/richie cole
three cheers for our side/Flipper's Guitar
Pelican West/Haircut One Hundred
Too old to Die young/Kevin Ayers

昨日の稽古:

・カーツジョグ&ダッシュ
・レッシュ式腹筋、腕立て

Exile on Main St.

Exile on Main St.