オジサンが通販にはまるとき


つま恋に集まったオジ、3万5千人


いい「じさま」になった吉田拓郎かぐや姫を見るために集まったおじさん(というか、プレおじいさんと言うべきか)の数である(日経産業新聞9月27日)。このおじさんたちが、実に9時間もコンサートで熱狂したという。そのパワーたるや恐るべし。消費の主役は、というとすぐにF1なんて答が返ってくるのだが、案外オジサンたち(この場合はやや広義に30代半ばぐらいから60代手前ぐらいをさす)も頑張っているのではないか。


たとえば最近、よく耳にする言葉に「大人買い」がある。陰では「大人げない買い方」などともいわれているらしいが、これは子どもの頃にちょびっとずつしか買うことができなかったオモチャ、オマケ付きお菓子からCDにDVD、あるいは欲しくてもなかなか手の届かなかったギターなどを、ちょいとばかし小遣いにゆとりを持つ大人(って、一体いくつぐらいを指すんだ?)が、ガバッと一気買いすることを指す。


これ、個人的にも結構納得がいく話。思い返せば高校生の頃、毎月の小遣いではLPレコードを1枚買うこともままならない。だから「よし今月はLPを買うのだ」などと鼻息も荒くレコード屋さんに乗り込んだはいいが、2500円ほどの小遣いをはたいて何を買うべきか。その一枚の選択には究極の決断が要求されたものだ。あれこれ迷いに迷った末、結局何も買えずに帰ってきた、なんてこともたびたびあった。


だから30過ぎになり、CDを一度に5枚ぐらいなら買ってもいいかな、なんて身分になれたときのうれしかったこと。こうなると少々のアタリ外れは織り込み済みで、それが結果的にはかえって「へぇ〜、こんなのあったんだ。いいじゃん」なんて発見にもつながった。


という具合に、実はオジサンたちは十万単位のお金を自由にできることは決してないのだけれど、2〜3万ぐらいなら、意を決しさえすれば何とかできるぐらいにはなっているのである。だから、意外にもオジたちのiPod所有率は結構高かったりする。携帯電話だって、新しいのがでるたびにわりととっかえひっかえしているのではないか。


そして、このオジサンたちこそが、実はネット通販の隠れた主役ではないのだろうか。昼間は仕事をしているのだから、ゆっくり買い物をしているような余裕はない。が、夜はこっちのものである。しかも、それが帰宅後となればちょいと一杯ひっかけてのほろ酔い気分ということは大いにあり得る。


これがどれだけヤバいかは私がよく知っている。


こっちはほぼご機嫌さんでCDなどを聞きながら、関連情報はないのかな、などと惚け状態であちこちのサイトを見て回っている。音楽関連のサイト等はマニアックなものが山ほどあり、書かれていることも独断と偏見に満ちている。だからおもしろい。つい引き込まれて読んでいると、CD買いたくなってくる。そしてうまいことにそれらのサイトは実に巧妙にAmazonへとつながっているのである。


かくして酔眼朦朧となりながらも「オオ〜ッ、こんなのが今ごろCDとなっておるのか!」「あれあれ、30年前に欲しかったレコードがCDになっているではないか」などと感激したオジサンは、いつの間にかあれこれクリックしてしまっていたりする。やがて数日後、Amazonからえらい分厚いパッケージが届く。「あれま、えらいことしてしまった」とばかり、届いた荷物が家人の目に触れる前にそそくさと自室に持ち込むなんて羽目に陥る。


もちろん、いくらその場を取り繕っても、締め日にはカード会社からきっちり請求書が送られてくるのであり、そこで酔っぱらいのバカ買いがバレて、えらく怒られることになるのだが。


しかし、似たようなケースはたぶん、たくさんのオジたちが経験していることと思う。買い物の対象がCDなのか、DVDなのか、本なのかオモチャなのかはおくとしても、こうしたおじさんたちの月々2〜3万出費というのは、確実にネット通販市場を拡大させている。そう確信するのである。そして、こうした購買活動がロングテールにつながっているとも確信する次第である。



昨日のI/O

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某企業・社内研修企画書
メルマガ原稿

昨日の稽古:

・腹筋