なぜデジカメが売れ続けるのか


国内出荷台数予測:約67万台


前年対比20%の伸び。と景気のいい予測を立てているのがカメラ映像機器工業会、その対象はデジカメ一眼レフである。一眼レフというからには、入門者用のデジカメとは、少し違う。何が違うのかといえば、上がりの画質が違うのだ。


ひと言でいえば「キレイ」な写真を撮れるのである。とはいえわざわざ高いお金を出し、一眼レフを買ってまで「キレイ」な写真を撮りたい人は、そうそう多くはない。そんな人たちはすでにフィルムカメラ時代の一眼レフを持っていて、その大多数はすでにデジタルへの乗り換えも済ませているはずだ。


つまりマーケッティング的にみればデジタル一眼レフカメラは、すでに成熟(飽和)市場だったはずだ。にも関わらずこのところ市場規模は拡大基調にある。成熟市場が伸びる時には、必ずそこに何らかの変化が起こっている。その変化とは何か。それがブロードバンドだという(日本経済新聞9月3日)。


カメラを使う目的が、従来とは大きく変化してきているのだ。そしてその変化を促しているのがインターネット、それもブロードバンドの普及である。


これまでなら撮った写真を見せる相手は、あくまでも自分の身の回りの人に限られていた。ごく一部のマニアは写真展等に出展して、不特定多数の人に見せていたが、そんなのは写真人口の中のおそらく1%にも満たなかっただろう。写真とは基本的には個人の記録である。だから、その記録を共有する相手は家族、親族からせいぜい知人ぐらいまでに限られていたのだ。


ところがネットがこうした写真のありようを根底から変えた。その要因は二つある。一つにはブロードバンド化が進み大容量の画像データをストレスなく送受信できるようになったこと。さらにそうした流れの中で、ネット上で画像データを共有・閲覧できるサービスが登場した。


撮った写真を写真公開サービス(プロバイダーが提供するものから、Flickrのような写真共有コミュニティサイトまでいろいろある)を使って片っ端からネットにあげておけば、すごく便利である。まず自分自身がネットにつながる環境さえあれば、いつ、どこからでも必要に応じて自分の写真を見ることができる。


しかも楽しい。プライバシーに関わる問題のない写真であれば、それを世界中に向かって公開することができる。言語の制約を受けるテキストとは違って写真ならば、世界中の誰が見ても一目瞭然。それが「キレイ」な写真であれば、あるいは何らかのインパクトがある写真であれば、世界中の人が何かのレスを付けてくれる可能性がある。大げさにいえば写真を通じて、自分の美意識を世界中にアピールすることができ、その行為を通じて世界中の人とコミュニケートする可能性が生まれたのだ。


つまり、いまデジカメ一眼レフが売れている理由は、人々のコミュニケーションニーズによるといっていい。そのニーズを活性化したのが、ブロードバンドとウェブ2.0的サービス、いずれもネット社会のインフラである。


この事例から学べること、それは人はコミュニケーションに対して飽くなきニーズを持っていて、そのニーズを満たす新しいサービスを考えだすことができれば、それは必ずビッグビジネスになるということだ。ブログ然り、SNSもまた然りである。Web2.0的世界とは、世界中のコミュニケーションがもっともっと活性化される世界なのだと思う。



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