タダコピは成功するか


通話料0円、じゃなくてコピー代0円


主に首都圏の大学で稼働しているコピー機がある。

使い方
1. コピーしたい原稿を用意する。
2. 原稿を指定場所にセットする。
3. 10円を入れる場所を探す。
4. 10円を入れる場所がないことに気付く。
5. 不思議に思いながらスタートボタンを押す。
6. コピーが起動する。
7. タダコピの出来上がり。
http://www.tadacopy.com/toha.html


という案配。なんでそんなことができるかというと、このコピーは裏面が広告になっているから。つまりタダのコピーは広告メディアになったというわけだ。このビジネスを展開しているのは株式会社オーシャナイズ、慶応大学の現役4回生が社長を務めている。
http://www.oceanize.co.jp/index.html


なるほど、その手があったか。と思うのだが、案外誰も思いつかなかったアイデアなんだろう。タダでコピーをとってもらう、その裏面が広告になっている。これでコピー代をカバーする。学生に対象が絞り込まれているから、学生相手にビジネスを展開している企業なら広告を出すはずだ。実際、取引先実績をみれば、錚錚たる企業が名を連ねている。


学生がコピーする対象はいろいろある。まずはノート、テキストから始まって、サークルの案内やイベント告知などなど。これまでなら一枚10円ぐらいかかっていたものが、タダになるのだから学生にとってのメリットは大きい。裏に広告があろうがなかろうが、そんなことは関係ないはずだ。


そしてたまにはコピーしたノートの裏側を見ることもあるかも知れない。メディアのリーチ力を考えた時に、このタダコピにどれぐらいの訴求力があるのかはわからない。とはいえ仮にそこにクーポンでも付けておけば、レスポンス率を測ることは簡単だ。さらにはコピーの裏をファックスさせる手もある。企業サイドにとっても使い勝手はいろいろ考えられる。


広告料金がどんな設定になっているのかは知る由もないが、タダコピの経費を推測することは可能だ。まずコピー機がいる。そして用紙にあらかじめ広告を印刷しておく必要がある。さらには用紙補給などのメンテナンスにかかる人件費が必要だろう。これらにかかるコストが原価だろう。あとは販管費。驚くほど低コストで運用しているんじゃないだろうか。


しかも、これぐらい話題性のあるビジネスなら広告費はゼロに近いはず。営業活動も地道にはやっているのだろうが、すでにいろんなメディアで取り上げられているようだから、今では企業サイドの方から進んで引き合いが来ているのではないだろうか。初めの何社かをクライアントに抱えるまでは苦労したとは思うが、このビジネスモデルは秀逸だから案外、企業サイドの担当者もハンコを押しやすかったと思う。


でも、こんなビジネス誰でも簡単に真似できてしまう、と思いきやとりあえず商標は取得済みで、ビジネスモデル特許出願中、及び周辺特許出願中とのこと。このあたりは学生さんにしてはなかなかしっかりしている。


では、このビジネスに将来性はあるのだろうか。オーシャナイズ社ではとりあえず全国の大学へのタダコピ設置をめざしているようだ。もし、これをある程度以上のスピード(たとえば今後半年以内とか)で実現できるなら、かなり強固なポジションを確保できるんじゃないだろうか。


いうまでもなくコピーの裏面は広告にしか使えないわけじゃない。これは明らかにメディアである。だからさまざまな細分化戦略を今後、展開することができる。たとえばコピー機を男子用・女子用に分けることも可能だろう。あるいは学年別、学部別に分けることもあり得る。学部生用、院生用という区分けもできる。


そうやって細かくターゲットを絞り込んでいくことができれば、それはこのメディアのスポンサーサイドにとっての価値を高めることになる。つまりメディアフィーを上げることができる。


それより何より、学生に対してリーチ力の強いメディアを支配することによって得られる可能性の方が高いのかもしれない。これまでになかったメディアを創りだし、そのメディアを完璧にコントロールする。こうしたポジションに立てた企業が得る力は、とても大きい。


このモデルをコンビニに持ち込むことも考えられるんじゃないだろうか。コンビニのコピー代から上がる収益と、コピーをタダでとってもらってその代わりに得られる広告収入を考えれば、どちらがコンビニにとって魅力的か。もしかしたらオーシャナイズ社はすでに、どこかのコンビニチェーンと話を進めているかもしれない。


とりあえずネットにみんなの目が向いているときほど、そこじゃないところにアイデアのネタは転がっている。これもまた逆転の発想の一つなんだと思う。



昨日のI/O

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のだめカンタービレ
(とうとうガマンできずに大人買いをしてしまった。ついでに家にあるクラッシックピアノのCDを次から次へと聞いてしまった)
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