Beer & BRICs


年間3049万リットル


2005年、中国の人が飲み干したビールの量である。いまや中国は世界でも最大のビール消費国となっている。2位のアメリカが2388万リットル、日本は6位で634万リットル。中国はすでに日本の約5倍のビール大国だ(日本経済新聞12月14日)。


しかも日本やアメリカでのビール消費量が前年対比でマイナスとなっているのに対して、中国は5.2%増と増える一方である。ちなみに4位はブラジル、5位はロシアとくれば、これはいわゆるBRICs諸国ではないか。インドは順位こそまだ31位にとどまっているが、その伸び率は15.9%にもなるという。


経済成長とビール消費はリンクするのかもしれない。


中国といえばほんの7、8年ぐらい前までは、店でビールを頼んでも冷えていないことがよくあった。そんなときには「ヤオ、ピンクワィ(氷塊)」と氷をもらって飲んだものだ。まだビールを飲む習慣が根付いていなかった頃の話で、それを思えばずいぶんと変わったものである。


レストランに入ると、生ビールのサーバーを背負ったキャンペーンガールが出て来たりしたのが4、5年ぐらい前のことだろうか。ビールメーカーにとっては、残されたパラダイスのようなマーケットである。各社が知恵を絞り、あの手この手のプロモーション合戦もかけた結果が、今のビール大国につながっているのだろう。


ではビール以前、中国の人は何を飲んでいたのか。紹興酒と白酒である。紹興酒ならまだしも、白酒で「乾杯(=カンペイ)」が始まると、とんでもないことになる。特に天津や大連などで北の方では強い酒が好まれる傾向があり、ちょっとした宴会などで人が集まって飲むとなると、この白酒乾杯がお決まりのパターンだった。


知人の仕事を手伝って中国へ行っていたころにこの白酒攻めにあい、まったく記憶をなくしたことが何回かある。気がついたらベッドの上だったとか、あるいは大連から天津へ渡るフェリーで同室になった人たちとやはりカンペイを繰り返し、目が覚めたらパスポートがなかったとか(二段ベッドの下に落っこちてただけで助かったのだが)。


さすがに白酒というぐらいのことはあって、ある程度の量を超えると頭の中が真っ白にすっ飛んでしまうぐらいの強い酒であった。もちろん、いまでも白酒を飲む人はいるのだろうが、割合で見ればもしかしたらビール派の方がふえているのかもしれない。


日常的に飲むアルコールのライト化は、食事が豊かになることとリンクしているように思う。味わうことをそれほど楽しめない食事なら、手っ取り早く酔っぱらうことが好まれるだろう。ところが微妙な味わいを楽しめるような食事になってくると、強いアルコールは食事の味を麻痺させるから好まれない。


これが日本なら食中酒といえば本来は日本酒に尽きる。焼酎やウイスキーの水割りは、どう考えても食事と喧嘩する。せいぜいがワインか、あるいは軽くビールを嗜むぐらいが特に日本食をおいしくいただくコツではないか。


と考えれば、食べることを享楽的にまで大切にするラテン系の国々でワイン文化が栄えたことも納得がいくだろう。あるいは食べることに喜びを見出してはいけないと禁欲的な方向に走ったイギリスでは、味のきついギネスビールやスコッチがメインの飲み物となっていることも(あれは食事と一緒に楽しむ飲み物ではなく、さっさと食事を済ませて、食後のひと時をくつろぐためのドリンクだろう)。


そしていまBRICs諸国でビールが求められるようになって来たのだとすれば、次はワインやもしかしたら日本酒にチャンスが巡ってくるのかもしれない。近い将来日本酒がどんどん中国に輸出され、日本ではとてつもなく高価で手に入らない飲み物となる。なんてチャイナクライシスが起こらないことを祈るばかりだ。


最近騒がれているようにマグロだって中国で大人気なのだ。彼らがトロを肴にに大吟醸で一杯、などというシーンがもうすぐそこまで来ているのかもしれない。




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