そして誰もテレビを見なくなる時


月間ユーザー数187万人


月間平均利用者ランキングでトップとなったキリンのホームページユーザーの話。前年対比17%の伸びとなっている(日経産業新聞1月17日)。これぐらいのユーザー数を集めているサイトは、もはや一つのメディアといっていい。もちろんまだまだアクセスユーザーには偏りがあるだろうから、ホームページがすぐにテレビCMに取って代わる、とまではいえないけれど。


しかし、たとえばキリンのホームページで人気を集めているのはレストラン情報やレシピ情報などだという。これがこれからの企業サイトの一つのあり方を示しているように思う。すなわち、価値の高いコンテンツを掲載することでアクセスを集め、ブランディングに役立てる。いずれアクセス数の伸び、アクセスユーザーの構成によっては自社サイトを最強のメディアに育てるといった方向性だ。


同ランクで三位となった日産自動車では各車種ごとにユーザーボイスを掲載している。ざっとみた限りでは、お褒めの言葉集であり、乗り換え理由とかほかに検討した車との違いなども網羅されている。日産ファンにはなかなか楽しいページになっているわけでこれなどは一種のCGMといえるのだろう。


ユーザーの声を販促情報として使うやり方を始めたのは、たぶん「旅の窓口」あたりが先駆者ではないか。そこに泊まったお客さんの生の声は、そのホテルに泊まろうかどうしようかと迷っている人にとってとてもわかりやすい判断材料になる。「旅窓」がうまいなあと思うのは、寄せられたお客さんの声に対して、ホテル側からの対応コメントもつけられるようにした点だ。


ホテルサイドからのコメントを読めば、そのホテルがどんな雰囲気なのかがだいたいわかる。木で鼻をくくったようなコメントしか出さないホテルもあれば、誠実さがにじみ出てくるような書き込みがされているホテルもある。それらを読んでいけば少なくとも「ハズレ」のホテルを避けることはできるし、アタリのホテルにぶつかる確率は高くなるだろう(もっとも最近ではコメントがどんどん増えてきていて、それらを全部読んでいては時間がかかって仕方がないような状況になってきているけれど)。


もとよりこれはホテル自らが顧客の声を集めて掲載しているわけではない。あくまでも「旅の窓口(いまでは楽天トラベルですね、正確には)というブローカーがユーザーボイスを集約しているだけである。とはいえこういう形でユーザーのコメントが掲載されるようになれば対応せざるを得ないというところに、これからの企業対応のあり方が示されている。


これを一歩踏み込むなら、たとえば日産自動車のように自社サイトでどんどん顧客の声を受け入れればいいわけだ。もちろん、顧客がいつも自社を誉めてくれるわけではない。中には言いがかりをつけてくるユーザーもいるだろう。妙な書き込みをされて、企業サイトが「祭り」状態的に火が点くようなことになればイメージダウンにつながるリスクもある。


とはいえ、企業はトレンドを読んで今後の対応準備を進めて行った方が良いはずだ。なぜなら企業サイトのメディア化が進む一方では、テレビ離れが加速度的に進んでいるからだ。日経産業新聞の調査によれば、三年前と比べてテレビ視聴時間が減った人が39%とある(日経産業新聞1月19日)。


しかもメインターゲットであるF1層に限れば、減少組が約47%にもなる。若い女性のほぼ二人に一人は、テレビを見る時間が減っているのだ。時間は明らかにゼロサムの世界である。ではテレビ視聴を減らした彼女たちが代わりに何に時間を使っているのか。ネットである。

テレビ視聴が減ったと回答した人に、代わりに増えた時間の使い方(複数回答)を聞いたところ、一位は「インターネットサイト利用」の71.0%、ネットに時間を奪われた格好だ。
日経産業新聞1月19日)。


もっと多いかと思ったメールが三位で24.6%。少なくともこの調査の対象となったF1層はテレビを見る代わりにネットを見るようになっている。そして問題なのは、これがトレンドだということだろう。さらにいえばテレビ番組も、特におもしろいものであるほど後からネットで見ることができるようになってきている。YouTubeがあるからだ。


となれば、テレビ離れは今後も進むと考えておいた方がいい。同時におもしろいコンテンツを揃えることができれば、企業サイトが自らをメディア化することもできるわけだ。F1層を集めることも可能である。しかもこのメディアはやろうと思えば双方向性を持たせることもできる。


自社サイトをどう活用して行くのか。予算配分(たとえば広告宣伝費の中の媒体コストをサイト充実にあてるとか)も含めて、企業サイトは新しいあり方を模索する時期に入っている。ポイントはおそらくCGM的メカニズムをいかにうまく取り入れるのかという点になるはずだ。



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