絵を描くことから始める


フィンランドメソッドを寺子屋で集中的にやっている。


算数の教科書が二月半ばで終わり、そのあとずっと『フィンランド国語教書』を読んできた。その中で、かなり画期的におもしろいやり方にぶち当たった。こんなやり方があるのなら、もっと最初に書いておいてくれればいいのにと思うぐらいである。


説明文を読ませるコーナーである。具体的にはフィンランドの大衆魚『アハベン』に関する説明文を読んで、いろんな問いに答えていく。その問いの中にはマインドマップを描け、という課題も含まれている。そのプロセスがよく考えられていると思うのだ。


教科書には『アハベン』と呼ばれる魚の絵が描いてある。説明文を読む前に、まずその絵をしっかりと見させる。教科書本文では

アハベンの絵を見て、魚のかたちや色など、とくちょうを覚えましょう。それから、目をとじて、アハベンの姿を思いうかべてみましょう。
(メルヴィ・バレ/マルック・トッリネン/リトバ・コスキバー『フィンランド国語教科書』経済界、2005年、60ページ)


このあと第1段落、第2段落と説明文を読みながら問題に答えていき、最後にマインドマップを描かせる構成になっている。そこで一工夫してみた。


最初に魚の絵に集中させるところまでは一緒。しっかりと覚えさせて、次に本文を読ませる前に、覚えた魚の絵をスケッチブックの真ん中に描いてごらんと。すると意外なほどに、すんなり描く。「え〜、そんなん無理」ともいわずに、すらすらと描いていく。鉛筆で下書きをして、そこに色をつけていく。楽しそうだ。


これをマインドマップのスタートにした。要するにまずテーマをビジュアルに表現することになる。すなわち右脳に定着させることになる。そのあと、本文を読ませていき問題に答えていく(=左脳を使って理解することになる)。最後に自分が描いた魚の絵を中心としたマインドマップを完成させる(右脳と左脳の合体!)。


続けて『コンピューター教室』の説明文でも、おなじことをやってみた。最初にモニターの写真(ネットで拾ってきたパソコンの象徴的ビジュアル)、もしくは教科書に描かれているパソコンのイラストのどちらが、自分にとってのパソコンイメージに近いかを選ばせる。


選んだビジュアルを、よく見て、しっかり覚えましょうねと。そして覚えたら、やはりスケッチブックの真ん中に絵を描く。モニターの写真はほとんどモノクロイメージだから、これには好きに色をつけていいよというと、モニターの中に絵を描く子もいる。推測だけれど、好きなように色をつけたり、絵を描き込むことは楽しいのだろう。と同時に右脳が刺激されているんじゃないだろうか。


そうやってマインドマップのテーマとなる絵を描いた後で、本文を読んでいく。本文を読みながら、パソコンの説明で大切だと思うところには赤線を引いていく。読み終わったら、マインドマップを完成させる。


これだけで説明文の内容を完全に理解できたとは思わないけれども、説明文を楽しみながら読む。自然な流れの中で分析する。マインドマップを描きながらなので、右脳と左脳と少しは同時に使いながら。そして何より、問題文を読んでその答を書いていきなさい、というこれまでの国語のやり方とはちょっと違った、子どもたちにとっては「なんとなく」おもしろいやり方で説明文に取り組んでいく。


とりあえず、これまでなら問題文を読んで、後の問いに答えなさいというやり方では「え〜っ。そんなんイヤ」と拒否してた子も、なんとなく楽しそうにやっている。これがもしかしたらすごく画期的なことなのではないだろうか。


話は大きく飛躍するが、以前必要に迫られて『経営学』の大著を読まなければならないことがあった。そのときに「そうそう、マインドマップはもともとノートテイキングの技術として開発されたのだから、本を読んで理解するメモ取りにも使えるはずだ」と考えて実践してみたことがある。


まずテーマ『経営学』を真ん中におき、目次をまわりに散りばめたマップを一つ作る。これが全体の羅針盤みたいなものだ。この全体像マップを横に置いて、一章ごとのマップをまた描いていく。学術書なので各章も細かく分けられている。最初にざっと各章がどれぐらいのブロックに分けられている、ブロッックのテーマは何かといったことを大まかなマップに書いておき(テーマと最初の枝ですね)、そこから重要な言葉を枝に付け加えていく。


テーマが経営学という極めてノンビジュアルなものだったのと、こちらの絵画的表現力の著しい欠如のために絵は付けなかった。キーワードだけを置いていったのだが、それでも難解な大著を読み通すことができ、あとからマインドマップノートを見返すと、大まかな話の筋は思い出すことができる。


このやり方の最初の一歩をやったということになるのだろう。この『最初にテーマの絵を描いて、文章を読んで、マインドマップを書き込む』文章の読み方(分析のやり方)が使えるのは、説明文を読むときだけじゃない。というか物語文を読むときの方が、ビジュアルなシーンを思い浮かべることができて、よりおもしろいかもしれない。


なかなかにマインドマップ、すごしである。


昨日のI/O

In:
ダウンロードアイデア整理
→古川亨・元マイクロソフト社長のブログから落としておいた「私の知っているビル・ゲイツ」シリーズを再読。おもしろいし、すごい。いろいろいわれるけれど、やはりビル・ゲイツは突出した才能と、努力する能力を持っている人だとつくづく感銘する
『松下流起業家精神/ボブ・ジョンストン』
Out:
ビエラ取材メモ


昨日の稽古:西部生涯スポーツセンター

<少年部>
・コーディネーショントレーニン
・基本稽古
・受け返し稽古(回し蹴りの受けを集中的に)
・組み手稽古(突きのみで)
<一般部>
・基本稽古
・移動稽古
・顔面稽古
・突きに対する受けの稽古(柔らかく、突きを吸収するように)
・組み手稽古
・補強
少年部の指導から連続3時間はきつかったです。