「かみまど」が示す未来


たびまど、じゃなくて、かみまど


「髪の窓口」なるサイトがオープンした。「旅の窓口」の美容室バージョンである。昨日の日本経済新聞の記事によれば

オンライン予約サイト「髪の窓口」では、店の外観や内装、スタッフを写真入りで紹介。地域や駅のほか、得意な技術や経験年数など自分にあったスタイリストがいる店を選べる仕組みだ。
日本経済新聞4月3日朝刊)


どれどれ、どんなサイトかとのぞいてみると。網羅されている情報は、やはり「たびまど」に準じたものとなっているようだ。となると、ポイントはお客様の声になるのだろう。
http://www.kamimado.com/


これはしかし、もしかすると美容室業界にとってパンドラの箱になるのではないだろうか。すなわち、今後この「かみまど」がどれぐらいの営業力を発揮するのかによるだろうが、もし仮に「美容室探すなら、かみまど」といった認識がユーザー側に生まれたらどうなるか。


「かみまど」経由で予約すると、ユーザーは会員限定の割引プランを受けることができる。美容室ユーザーである女性たちは、こうした割引に敏感に反応するだろう。であれば、今まで行きつけの美容室を決めていたユーザーも、その美容室が「かみまど」に掲載されたなら、当然「かみまど」経由で予約するはずだ。


これでお店側は何%かの利益カットになる。さらには「かみまど」経由で予約が入った場合には、店側は客の利用代金の5%を手数料として運営企業であるアップヒルズ社に支払わなければならない。ただし、この手数料については、どうも「このお店を登録してください」とユーザー側から登録要望があった店については2%でいいらしい。


これまた実に巧妙な仕掛けである。つまりアップヒルズ社がわざわざ営業に行かなくとも、あるいは店の方から掲載希望を申し出なくとも、ユーザーが「あの店でカットするときに割引が効くようになるから」ということで、勝手に自分の通っている店を登録してくれと要望できるようになっているわけだ。


これを「たびまど」になぞらえて考えてみると、どうなるか。まず自分の行きつけのホテルがあると。そのホテルは、今のところ「たびまど」に登録されていない。しかし「たびまど」に登録されれば、いくらか宿泊料金がディスカウントされることが決まっている。そしてユーザーが、自分の利用するホテルを登録(推薦だろう)できるようになっている。推薦者にはいくばくかのキャッシュバックがあり、さらには晴れて登録されれば、継続的に割引を受けることができる。そのホテルの常連さんなら喜んで推薦するだろう。


こうしたシステムはユーザーとアップルヒルズにはメリットがあるけれども、肝心のお店サイドにとっては手数料や割引の分だけ利益が削られることになる恐れもある。もちろん、ネットを通じた広告、集客、予約といったメリットもあるわけで、そのあたりのバランスが最終的にどうなるかは、これからの話だろう。


特に店側にとってメリットがありそうなのは予約だろう。すなわち、お客さんの方から自発的に、お店の空いている時間帯を探して予約してくれる。これがどれぐらいありがたいことかを考えてみれば、この予約システムのメリットだけでも店側としては十分に元が取れる可能性もある。


それにしても、である。


では、仮にこの「かみまど」が「たびまど」のようなデファクト的な存在となったとき、ここに掲載されていない美容室はどうなるのだろうか。「うちは、そんなサイトで宣伝してもらわなくてもいいから」とか逆に「そんなサイトで宣伝してもらっちゃ困るから」ぐらいのことをいえる美容室ならいい。しかし、何らかの理由で掲載拒否される美容室があったとすれば、これは「ネット八分」的なケースとなる。


「ネット八分」というのは、いま思い付いた言葉だけれど、これは「Google八分」からの連想ですね。要するに検索をかけてGoogleに引っ掛からないサイトが、インターネット上では存在していないがごとき(とまでいうといい過ぎだろうけれど)扱いとなるのと同じことを意味する。つまり美容室業界でなら「かみまど」に載っていない美容室は存在していないも同じとか、下手をするとそんな美容室で大丈夫なの? とか思われたりはしないか。


さらにくせ者なのは、お客さまの声である。


ホテルの部屋ならともかく、ヘアースタイル、カットのうまい下手などという評価については、相当に主観的な判断が混ざるだろう。そうした対象についてのお客さまの声は、どちらかといえば極端に振れがちなのではないだろうか。しかも、演らせが混ざるリスクもありはしないか。


しかし「かみまど」はスタートしてしまった。考えてみれば「ぐるなび」も仕組みとしては同じである。ということは今後、たとえば「塾窓(学習塾の総合評価&申し込みサイト)」とか「学窓(学校そのものですね)」、あるいは「医者窓(お医者さん編)」などができてくるのではないだろうか。



昨日のI/O

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『人間と聖なるもの/ロジェ・カイヨワ
ザ・サーチジョン・バッテル
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昨日の稽古:

・レッシュ式懸垂/腹筋/スクワット