2.0ブームが開く未来


DoCoMo2.0


素直に読めば「どこもにいてんぜろ」。キーボードでこの通りに打って変換すれば「ドコモに移転ゼロ」。オォ〜、すごい。これでもその昔、コピーライターなどと名乗っていたこともあるので、こうした言葉遊び的な感覚にはとても魅かれる。


このキャンペーンを手がけているのは、クリエイティブ業界で知らない輩はモグリとみなされるぐらいの大御所「TUGBOAT」さんである。当然、この言葉の裏には何か画期的な仕掛けやカラクリが潜んでいるに違いない、などと一部で盛り上がっている(→ http://internet.watch.impress.co.jp/static/yajiuma/2007/05/15/)。


個人的には、「2.0」が未だに旬の言葉といわれると、それは違うんじゃないでしょうかと疑問に思わないでもないが、日経MJ新聞に「2.0」に関して気になる記事があった。ものすごくばっさりと要約すると、ポイントは次の二点。その一、少なくともアメリカでは「Web2.0」がブームである。その二、「Web2.0」ブームで情報発信者となっているのは、中高年である。

米ヒットワイズが四月半ばに発表した調査(十八歳以上が対象)によれば、インターネット全体のアクセス量のうちWeb2.0サイト関連が占める割合が二〇〇五年四月時点で二バーセントにすぎなかったのが、二〇〇七年四月には十二パーセントを占めるようになったという。
日経MJ新聞5月16日)


昨日のエントリーでも書いたように日本でもブログ人口が一年で2.6倍にも増えているのだから、日米共通してまだ2.0ブームと呼んでもいいのだろう。こうしたブームが起こるのは、次のような理由を考えればおそらく当然だと思う。思うのだけれど、そこが第二のポイントと絡んで、非常に引っ掛かる点でもある。


つまりWeb2.0とはいろんな側面があるけれども、とりあえずは情報(というか、とりあえずは自分の言いたいことを)を大っぴらに、しかも極めてローコストで世間に向けて発信できるメディアが、人類始まって以来無条件に提供されるようになったので、たくさんの人がやや興奮状態で、思うがままのテキストを書き散らかしている状態、だと個人的には認識している(悪文の典型みたいな文章になっちまった)。


中には極めて戦略的かつクールに、ブログを書くこと自体をうまくビジネスに結びつけている方もいらっしゃるし、もちろん尊敬する内田先生のように自らの「知」を無料で惜しげもなく公開されている方もおられる。あるいはアフィリエイトで小遣い稼ぎしちゃおうなんてブログもたくさんある。そして多くのブログが(このブログも含めて)、とりあえず自分の言いたいことを(その日あったささいな出来事の記録までを含めて)パブリックに対して述べられることに何らかの快を感じるだけの動機で書かれている。


ここで引っ掛かるというのは、その書き手である。少なくともアメリカでは35歳を境に明らかな傾向があるという。以下はあくまでもアメリカのデータであり、それが日本に当てはまるかどうかはわからないのだが

ユーザーが書き込む百科事典サイトのウィキペディアでも、「見るだけ」なら三十四歳以下と三十五歳以上をくらべた場合は、四十五・九%対五十四・一%と大きな差がないが、「編集する」となると三十五歳以上が八十一・七%を占めるのである。
(上掲、日経MJ新聞)


一つの調査だけから結論づけることはできないが、アメリカではWeb2.0ブームと言いながら、コンテンツ制作担当=中高年といった図式があるようだ。日本では一体どうなのだろうか。


35歳で区切ったときに、いわゆるアルファブロガーと呼ばれる人たちがそれ以上の中高年に多いのか、それ以下の方々の方がたくさんいるのか。自分が「Hatena::RSS」に登録しているブログを見直してみると、約30のブログの中で書き手が35歳以下と思われるのは、わずかに4つに過ぎない。自分を基準にして判断しても意味はないので、これを読まれている方はご自分がチェックしているブログを書いている方の年代にいちど、思いを巡らしていただきたい。


独断と偏見的直観でいってしまうと、若年層はある程度のボリュームを持った文章を使った表現を極めて苦手としているのではないか。であるが故にWeb2.0ブームと言われながらも、情報発信の担い手となれないでいる。そこで思い当たるのはケータイである。20代以下の人たちは、ネット接続にもPCではなくケータイを使う。もちろんメールもである。ケータイーメールは当然、長文を書くのには適していない。


ケータイと若い人たちの長文書けない傾向はおそらく「ニワトリ&たまご」論争と同じで、どちらが原因とはいえず複合的に絡まりあっているのだと思う。そしてその根源にあるのは、おそらく教育である。


これはあくまでも勝手な想像に過ぎないけれども今後もし、Twitterがさらに人気を集めていくとすれば、その支持層はおそらく35歳以下の方に集中するのではないか。これをコミュニケーションの活性化であり善きことかなといわれても、素直にそうですかとうなずくことはできない。単文、短文を投げかけ合うだけの行為は本来の、双方向的理解を深めていくコミュニケーションとはまったく違うと思う。


日経MJ紙の記事の結論はWeb2.0のアクセス量が増えていくと、ネットとリアルの世界にどんな変化が起こるのか楽しみだと結ばれていたが、その変化は少なくとも若年層のコミュニケーション能力を劣化させる方向に働くのではないだろうか。


だとしたら、その先に描かれる未来像は、いささかダークな色合いを帯びるのではないだろうか。



昨日のI/O

In:
『狼少年のパラドクス/内田樹
Out:
某社ソフト添付小冊子原稿


昨日の稽古:

・ジョギング
・レッシュ式懸垂