子どもが急に伸びるとき


春休みに算数問題集120ページ完遂


学校の先生でもないのに偉そうなことを言うのはあれだが、子どもって爆発的に伸びる時がある。どの子にもそういう時期があると強く思う。私が知っている限りではということになるので、寺子屋でお勉強を見ている子と空手を見ている子だけの話だけれど。


とりあえず算数の問題集をやってきた子にたまげた。はっきりいって勉強の嫌いな子だった。素材は悪くないから、たとえば4年生ではやらないようなわり算(4ケタ÷2ケタとかですね)でも、横についてじっくり取り組ませればきちんと理解できる。できるんだけれど、これがまたとてつもない面倒くさがりやさんである。だから「おぉ〜、できるやん。すごいやん」と誉めでもすると「そやろ、かんちんや、こんなん」となり、その次に「ほんだら、もうちょっと練習しとこか」と誘い水をかけても「できるねんし、ええやん。できる、できる」とそれ以上の練習を拒否されてしまう。


仕方なく宿題として計算問題をあてがっておくと、次の週に一応やってはくるのだけれど、とんでもなくでたらめな計算になっている。「違うやんか、ここは答えに0をおいて、だから割られる数にも一つゼロをつけて、ほら、こうやって計算するんやんか」とやると「そやそや、勘違いしとったわ」と、またできるようになる。その場ではできるんだけれど、少し計算問題を続けると「もうええやん、できるねんし。飽きたで」となり、じゃあ宿題でとやらせると・・・。といったサイクルに入っていた。


しかし5年生進級を前に、わり算だけはきっちりと習熟しておかないとならない。小学校算数でつまづくのはまずわり算であり、分数である。だから4年生の問題集を渡して、とりあえずわり算の20ページ分ぐらいをがんばろうなといった。春休み前のことだった。


すると春休み後最初の寺子屋で、その子がとても得意そうに「宿題やったでぇ〜」と問題集を出してくる。「そうかあ、ようがんばったなあ」と応えながら、問題集を見てビックリ。最後まで全部やり遂げているではないか。宿題として指示したのはわり算の20ページ分ぐらいだったのだが、一冊丸々、120ページぐらいの問題すべてに答が書かれている。


「どないしたんや?」「最初はイヤやし、めんどうくさかってんけどな。まあ、ちょっとだけがんばろかな思てやってみたら、簡単やってん。そしたら一日に何ページもできたし」と。この子の場合、面倒くさいと思うと途端に字が荒れるのですぐにわかる。特に数字なら8をめっちゃ適当に書く。なのに問題集をみると数字がきちんと書かれている。


春休み以降、5年生になってからは大嫌いだった漢字の書き取りにも挑戦するようになった。大化け一号である。


あるいは空手に来ている子にもそういう大化けがある。ウチの道場は非営利団体である。だから強い選手を育てて大会で勝たせて名前を売ってという考え方がまったくない。そのせいかどうかはわからないのだが、入ってくる子どもたちも基本的にはおとなしい子が多い。


もちろんおとなしいからといって一生懸命にやらないということではない。みんな、それなりに頑張っている。一応フルコンタクト系なので、実際に当てあう痛い稽古もある。上段を回し蹴りで蹴られることもあるし、中段の鳩尾に前蹴りが刺さることだってある。やられた子はたいてい泣く。泣くけれども、またがんばって組手に取り組んでいる。


そんなことを繰り返しているうちに「エッ!」と思うような動きを、いつの間にか身につける子どもがいる。あるいは「気合いを出せ、声を出せ」といい続けても一向に小さな声しか出せなかった子があるとき急に自分から声を出す。または、試合前の稽古で「よし、今日は回し蹴りをフェイントに使って、決め業は回し蹴りからの後ろ回しでいこう」と20分程練習させて、試合でいきなりそのコンビネーションで勝ってしまう子。


たった、これぐらいの事例で一般論を語るつもりもないのだけれど、子どもの成長って「非線形」なんじゃないだろうか。正確にいうとほんの少しずつ、じっと注意してみてあげてないとわからないぐらいの右肩上がりではあるのだけれども、とりあえず成長を続けていることがたぶん大切で、そうした時期を経ることであるとき、何かがキッカケとなってグ〜ンと一気に伸びる。そんなイメージだろう。


ここで難しいのが親、もしくは先生の接し方ではないか。


つまり普段の成長が極めてミクロなレベルだと、それは日常的に接している人には感じとれない可能性がある。逆にいえば、毎日その子を見ていると気付かないぐらいの成長度合いだということだ。それでも、私のように一週間ごとぐらいのサイクルでその子に会うと、少しずつだけれど成長していることがはっきりわかる。たとえばその子の三ヶ月前はどうだったか、半年前はどうだったかと、過去の姿を思い起こしてその成長度合いを考えてあげれば確実に伸びているわけだ。


それぐらいのスパンでみれば、たいていの子どもはいろんなことに伸びているはずだ。それをきちんと見てあげながら、何かキッカケになるようなことはないかとつねに探してあげる。それがうまくハマったとき、子どもはバカ〜ンと伸びるんじゃないだろうか。それぐらい子どもの伸びシロってすごいし、伸びる時の爆発力もすごい。これは間違いないと思う。


じゃ大人はどうなんだろ。あるいはオッサンは、あるいはジジィは。と考えるのは、かなりテリブルであるな。




昨日のI/O

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サントリー清宮監督インタビューメモ

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