父の日vs母の日


毎年欠かさずが15%


父の日のプレゼントの話。毎年きちんと贈っている方が15%いるのに対して、一度も贈り物をしたことがない人も約22%いる。しかし、そもそも父の日とは何ぞや?


ウィキペディアによれば、父の日とは父に感謝を表わす日とある。6月の第三日曜日が、これにあたる。今から百年ほど前にアメリカで始まった風習のようで、1972年にアメリカでは正式に祝日となった(→ http://ja.wikipedia.org/wiki/父の日)。


本家アメリカでは父の日の花はバラである。ふ〜ん。なんか、ほとんどピンと来んな。たぶん私の父親と義父には家人が何かを毎年贈っているのだろうけれど、自分が何かもらった記憶は残念ながらない。実際にはもらっているのかもしれないがともかく覚えていない。


そういえばかつて、広告代理店で働いていたときに紳士服チェーン店の販促企画として「父の日」にちなんだプランを出せ、と命じられたことがある。何かのプレミアムキャンペーンをひねり出したことは覚えているが、その詳細は遠く忘却の彼方である。


このところ週末にどさっと折込まれるチラシには、確かに『父の日』をネタにしたセールが盛り込まれている。が、ちっとも魅力的じゃない。クールビズだとか、サマースーツだとかそんなのもらってもちっともうれしくないし。そもそも贈り手サイドのノリが、母の日とは根本的に違うような気がするのは単なるひがみだろうか。


ここで少し思考実験である。


母の日の夕餉の席で、あれこれ考えて用意したプレゼントを手渡すシーンを想像してみよう。子どもが「おかあさん、ありがとう」とリボンの包みでも差し出し、受けとったお母さんが「ありがとう」といってパッケージを開く。なかなかに麗しく心温まる風景ではないか。そこにお父さんもいるのだろうけれど、その存在はあくまでも刺身のつま、みたいなもんである。いないとなるといろいろ困るが、しゃしゃり出て来られてもうざいといったところか。


では父の日はどうなるか。これがどうにも浮かんで来ないのだ。とりあえず中学生以上の子どもさんがいる家庭では、まずあり得ないシーン設定である。「オヤジィ〜? けっ!」みたいな感じですね(お子さんの性別を問わず、今どきの中学生以上ならいかにもフィットしそうなセリフだと思いませんか)。子どもが小学生の女の子ぐらいなら、まだ考える余地がないこともない。とはいえそこにお母さんが同席している状況を思い浮かべることはこれまた難しい。


なぜ母の日に母親がプレゼントを受けとるシーンはピタッとはまるのに、父の日に父親がプレゼントを受けとるシーンは想定外という非日常的となってしまうのだろうか。


これはもしかしたら、日本の家庭における父親のポジショニングが実に過渡期にさしかかっている証ではないのか。日本に「父の日」なるアメリカの風習が持ち込まれたのは、ウィキペディアによれば1950年代のことだという。もちろんそんな時代に父の日などというちゃらちゃらした習慣が日本に根付くはずもなかった。まだ家庭内では父親が絶対的家父長を保っていた時代のことである。それこそ父親には絶対服従、父親が「黒だ」といえば白いものでも黒ということが家庭内暗黙のルールとなっていた。


しかるにニューファミリー(すなわち今話題の団塊の世代の方々ですね)が、そうした旧日本的家族制度を根底から覆していく。お父さんに付く形容詞は「恐ろしい」とか「鬼のような」といった恐怖系から「やさしい」とか「友だちのような」といったライト&マイルド系にシフトしていく。と同時に父親の権威失墜が始まる。家庭内でのパワーバランスは基本的にトレードオフの関係が成立しているから、父親の力が下がれば相対的に母親と子どもの力が強まって行く。


これである。母の日が日本に定着しているのは、父親絶対権力時代に「お母さんは大変なんだ、かわいそうなんだ」的意識が、父親も含めた家族全員の合意として形成されたからだろう。その後、母親のポジションは格段に向上していったが彼女たちが既得権益をそうやすやすと手離すはずもない。あの手この手で巧妙にキープしてきたからこそ母の日は定着しているのであある。


ところが父親の場合は、以前家庭内で強権を発動していたがために今ひとつ「ご苦労さん」とか「お父さんも大変なんだ」と素直にいってもらえるポジションにまでは未だにたどり着けていない。だから笛吹けと兵踊らず。いくらスーパーやデパートが「父の日」を商機にしようと企んでも、贈り手となる妻子がまったく反応しないのではないだろうか。


父の日がすんなりと受け入れられるためには、世のお父さん方はもう少し同情に値するレベルにまでいたぶられなければならないということだろう。という状況になって「父の日」プレゼントをもらったってあんまりうれしいことではないような気もするが。



昨日のI/O

In:
大阪天満宮宮司さん取材
Out:
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某社ソフト添付小冊子原稿


昨日の稽古:

・レッシュ式腹筋、腕立て