金時マトリクスで考える


理想余暇時間10時間以上


国産ミニバン、RVの保有率がいちばん高いのは「理想の」余暇時間が10時間以上のグループだった(日経MJ新聞6月13日)。

ミニバンは野外レジャーの時間が「ある人」というより、そうした時間が「欲しい」人が買う商品のようだ。
(前掲紙)


これからの消費を決めるカギはお金と時間にある。すなわち可処分所得と可処分時間である。この「金時(きんとき)マトリクス」を考えることが今後のマーケティングではとても重要になってくる。しかし、ここがポイントなのだが単純に考えてしまうと失敗するリスクがある。現に可処分時間が多い人向けとメーカーがターゲティングしたミニバンが、実際に余暇時間の多い人ではなく余暇時間をたくさん取りたいと願う人たちに売れているのだから。この複雑微妙な消費者真理を考えるのはなかなかおもしろい。


では、質問。


洗濯乾燥機の保有率が高い女性は「金時マトリクス」のどこに入るでしょうか。少し考えればわかると思うけれども「金あり・時間なし」マトリクスに入る人たちである。これは簡単ですね。では、続けて食器洗い乾燥機はどうか。これが意外なことに「金あり・時間あり」マトリクスに入る女性たちとなる。なぜだか、おわかりになりますか。


ここがおもしろいところだ。食器洗い乾燥機といえば、やはり時間を節約するためのツールである。だからどちらかといえば時間に限りのある人が使うものと考えがちだが、実はさにあらず。食器洗い乾燥機の場合は、その前工程まで遡って考える必要がある。つまり食器洗いが必要だということは、家庭で食事をする=基本的には女性が料理を作ることが前提となる。ここで忙しくて料理を作っている時間などない主婦は、外食もしくは出来合いのお惣菜を買って来て済ませたり、デリバリーに頼るということなのだろう。であれば、それほど食器を汚さずに済むではないか。単純発想ではダメなのだ。


一方男性の場合はどうか。洋服を「青山」などのディスカウント系ショップで買っているのはどんな層か。これまた単純に考えると、時間のあるなしではなくどちらかといえば洋服にかけられるお金の少ない人が多いように考えてしまいがちだ。しかし実際のユーザー層は年収にはあまり関係がないらしい。要するに収入の多寡に関わらず、時間がない人がちゃちゃっと買い物する店として利用されるケースが多い。


かと思えば似たような低価格ファッションショップだったユニクロが、女性にとってのポジションを変えてきている。なぜならユニクロはここ最近、とみにファッション性を追求するようになってきており、CMなどでも明らかにファッション感度の高さを訴求してきている。その結果ユニクロは今や女性にとって「時間をかけて商品選択を楽しむ店(前掲紙)」となりつつあるらしい。


であるなら、たとえばフィットネスクラブでもこれから可処分時間をもて余すであろう団塊の世代を狙うのは本筋としてあるものの、逆ばり発想も十分に成り立つ。つまり時間はないけれどもお金は持っている(ということは、自己研鑽意識の高い人が多いはずの)忙しい人たちを狙うことも十分にアリだろう。言うまでもなく差別化を図るのなら、狙うべきはこちらの方だ。


すでにお金を持っている彼らにとっては何より大切なのは、時間である。時間、イコール健康で過ごせる時間であろう。であるなら、パーソナルトレーナーやカスタマイズメニューなど付加価値の高い(高い対価を取れる)サービスをすんなりと受け入れてくれる可能性が高い。いま流行りの30分コンビニフィットネスにしても、リッチな女性たちを狙ったワンランク上のサーキットトレーニングといった設定があり得るはずだ(どこかがすでにやってるかも)。


この「金時マトリクス」で考えたときに、最も狙い目となるのは明らかに「可処分所得多し、でも、可処分時間少なし」層である。ここを狙った商品、サービスなんて考えてみればいくらでもある。いろんな商品、サービスが考えられるけれども最終的に問われるのは、人の手を介したクォリティの高さではないだろうか。時間がないからこそ機械的な対応ではなく、ヒューマンタッチあふれる接遇を人は望むものだ。


加えて、金で時間を買えるならどんどん買ってやろうじゃないの、といった考え方をする人たちがこれからの消費リーダーになっていくんじゃないだろうか。必死で働いてがっちり稼いで、でも稼いだ金を溜め込むのではなくてわずかな余暇を楽しむために惜しげも無く使う。


と考えると、それってあんまり楽しそうな人生じゃないかもしれんなあとも思うけれど、それはともかく。とりあえずは「金ない♪、暇ない♪、どうしよっもなぁ〜い♪。 ビンボヒマナシローキック(しか蹴れませ〜ん)」から、一刻も早く脱出せねばと強く思う今日この頃である。


昨日のI/O

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大阪天満宮寺井宮司インタビュー記事
某社ソフト販売用パンフレットデザイン

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