人材で成長する


3年以内に転職したい人が6割


24歳以下では7割が3年以内での転職を検討しているそうだ(日経MJ新聞6月25日)。インタリジェンスが行なった現役会社員千人を対象としたアンケートで、定年までいまの会社で勤めると答えた人は、わずかに9%にとどまった。


かつての日本企業の代名詞でもあった終身雇用制度は、もはや完全に崩れさったと考えていい。すでにパラダイムシフトが起こったのは明らかだ。大学を卒業してどこかの会社に入ること、すなわち定年を迎えるまでの約40年間そこで過ごすことという定式はもう成立しない。


私が大学を卒業した23年前は、そうじゃなかった。たいていの人が終身雇用を信じていた。それなりの企業に就職した同期の連中は今でも、ほとんどみんな同じ会社にいる。なかには出向を命じられた奴、あるいは社名がまったく変わってしまった奴もいる。けれども、それは吸収・合併などによるものであって、自ら会社を辞めたのではない。つくづく偉いなあと思う。


私の場合は、はなから同じ会社でずっと働くなんて想像もできなかった。そんなの絶対に耐えられないと確信していた。だから、基本的にはどこの会社に入ってもあまり変わらないだろうと考えていた。挙げ句、商船会社、旅行会社、広告代理店と一流どころを受けては立て続けに落ち、最後に引っ掛かった中小印刷会社に潜り込んだ。もちろんそこで一生を過ごすつもりなどさらさらなかった。


とはいえ入社してからは、とりあえずがんばって営業マンとしてそれなりの成績を上げるところまでは行った。基本的に根がまじめだし、要領も悪くはないし、競争のレベルも低かったからそれぐらいは何とかできたのだろう。が、やっぱり営業は飽きてくる。ちょっとつまんないなあと思い始めたときに、外注先で仲良くなったデザイン事務所の社長から悪魔のささやきを吹きかけられ、コピーライターへと転身。以降、転職を二回繰り返して独立するに至っている。


まあ、転職自体がどちらかといえばネガティブに捉えられていた時代の話である。転職者=落伍者みたいなイメージもそこはかとなくあったような気がする。一回会社を辞めて、次により規模が大きかったりレベルの高い会社に入り直す、なんてことはほぼあり得ない話だった。


ところが今はそうじゃない。転職して当たり前、なのである。転職する側も転職される側も、あらたに転職を受け入れる側も、これを前提として制度設計していく必要がある。特に受け入れサイドはしっかり考えておかなければならない。もしかしたらうちにも中途でいい人が来てくれるかも、なんて期待しているだけでは絶対にいい人なんか寄っては来ない。


そうじゃなくて、ここはせっかくのチャンスなんだから、そのチャンスをいかに活かすかを考えるべきだ。活かすためには転職してきた人が、自社でならどんなキャリアパスを得られるかをきちんとプレゼンすることである。これは逆に考えれば、これから自社を伸ばすためにはどんな力を持った人が必要なのかを見極めることでもある。


つまり業界内での自社のポジションを測り、持てるリソースを値踏みし、これから目指したいところを思い描いた上で、いま欠けているピースは何なのかを見つけることである。もちろん面倒くさい。が、ビジョンをきちんと描けない企業が行き当たりばったりで何とかやっていけるほど、これからの環境は甘くないんじゃないだろうか。


いい人が来てくれないから、うちはダメなんだとマイナス思考の企業と、こういう人が来てくれたら、うちはこんなふうに成長することができるとプラス思考の企業。今後さらなる二極分化が進んでいく。


転職があたりまえになる社会というのは、求職者と企業がイーブンの立場で、お互いの成長のためのベストパートナーを探しあう社会になるはずだ。これはなかなかに良いことだと思う。



昨日のI/O

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