プレスリリース効果


『携帯からもウェブメール
〜100年分メール保存も(毎日新聞7月31日朝刊)


『ネット事業「au」に統一 KDDI』(日本経済新聞7月31日朝刊)


『グーグル無料ウェブメール 携帯で利用可能』
KDDI、保存容量100年分(日経産業新聞7月31日朝刊)


とりあえず手元にある昨日の朝刊を比べてみると上記のようになった。元ネタはもちろん、KDDIのプレスリリースである。ちなみに同社のホームページに掲載されているプレスリリースのタイトルは、次のようになっている。


Googleの技術を活用した「au one メール」の提供について
〜一生分のメールを保存できる大容量 (2GB) の「100年メール」(注1) へ〜
http://www.kddi.com/corporate/news_release/2007/0730a/index.html


プレスリリースに書いてあった通りに記事を書いてちゃ新聞記者の価値が下がるとでも言わんばかりの書き方だと思わないこともない。あるいは当然、各紙ごとに想定読者が異なっているのだから、その読者に対してもっとも「ピン」と来る見出しをつけているのだろうとも思う。


が、日経の見出しはちょっとないんじゃないだろうか。記事を最後まで読んでいくと、一番終わりのところに

容量は二ギガ(ギガは十億)バイトで一日のメールの送受信量が二十通程度であれば、百年分を保存できるという
日本経済新聞7月31日朝刊)

と書かれてはいるんだけれど。毎日新聞なら、「100年分メール保存も」と見出しにはっきり出ているのだから、この違いは大きい。


もちろん各紙ともに、KDDIのプレスリリースを見て記事を書いていることに違いはない。もしかしたらプレスリリースを見て緊急取材の電話ぐらいはかけているかもしれない。その結果が記事として書かれているわけだから、プレスを出した側には文句を言う筋合いはない。仮に文句を言ったとしても、各紙の記事に明らかな間違いがあるわけでもないのだから、訂正してくれるはずもない。


ついでに言っておけば、新聞記者が取材に来て原稿を書いた場合に、その原稿をチェックできる可能性はゼロである。何しろ彼らはマスコミという第四の権力を背負っている。しかも握っているのは正義のペンである。自分たちが書くことに対してケチをつけられるなどとは夢にも思っていない。そして新聞記者のすごいところは、取材に来てもたいていの場合はテープを録らないことだ。テープを録らないということは、こちらが何を喋ったとしても、原稿のネタになるのは記者の関心に触れた部分だけということになる。同じように人に話を聞いて、そこから原稿を書くことを生業としている私からすれば、新聞記者っていろんな意味ですっげぇ〜なとしか思えない。


話がそれたが、このケースでちょっと惜しいなと思うのはKDDIのプレスリリースである。そのタイトルは次のようになっている。


Googleの技術を活用した「au one メール」の提供について
〜一生分のメールを保存できる大容量 (2GB) の「100年メール」(注1) へ〜


当然、社内で吟味を尽くした結果の表現なんだろうけれど、わずかに二行の文章が逆になっていたらどうだったろうかと思わずにいられない。というか、もし私がこのプレスリリースを任されたとしたら、こんなふうに書いたと思う。


一生分のメールを保存「100年メール(容量2GB)」提供について
Googleと提携し「au oneメール」サービスを9月よりスタート〜


もちろん、これでも日経の記者にかかればどんな見出しになるかは神のみぞ知る、といったところではあるが。またKDDIぐらいの大企業になれば、普通にプレスリリースを流せば、まず各紙に掲載されることが決まっているわけで、となると一つ一つのプレスリリースにあまりこだわらなくなるのかもしれないけれど。


でも、プレスリリースなど打ったこともないという中小企業にとっては、プレスを打てるだけのネタがあること自体が千載一遇のチャンスなのだから、ここは一番目一杯に知恵を絞って書くことが大切だと思う。ポイントはM&C研究所の弘中勝さんが言っているFMOに尽きる。
http://m-c-ken.net/labo01.html


FMOすなわちFirst、Most、Onlyである。世界初、日本初、〜で最も、そして業界唯一といった案配だ。そしてFMOに何か加えるとしたら、SつまりSocialを提案したい。つまりその、○○の社会的価値、社会的貢献は何なのかといった要素である。最低限、これだけの要素を網羅できるプレスリリースなら、取り上げられる可能性はかなり高くなる。


たかがプレスリリース、されどプレスリリースだ。せっかくプレスを打てるネタがあるときには、ぜひ吟味の上にも吟味を重ねて書いていただきたい。そして、最後に広告となって申し訳ないが、そんなプレスリリースの書き方がわからない、という方は、ぜひ気軽にご相談いただきたい。




昨日のI/O

In:
関西学院大学社会学部 武田丈准教授インタビュー
『Think』No.22
Out:
某ソフト開発物語
えきペディア原稿


メルマガ最新号よりのマーケティングヒント

「達人の動きに学べ」
http://blog.mag2.com/m/log/0000190025/
よろしければ、こちらも。

□InsightNow最新エントリー
 「次世代リーダー育成PJとしての社内報制作」
http://www.insightnow.jp/article/328

FPN最新エントリー「ネット=時間泥棒説」
 ※なぜか週間人気トップ2にランクインしました
http://www.future-planning.net/x/modules/news/article.php?storyid=2527


昨日の稽古:

・レッシュ式腹筋、懸垂