プチプチの日


8月8日は「プチプチの日」


といわれても知らない人の方が多いかもしれない。このプチプチ記念日は気泡緩衝材メーカー最大手の川上産業が制定したらしい(日経MJ新聞2007年8月6日付け)。プチプチが何かといえば、誰もが知ってるあの「プチプチ」、要するに粒々の気泡が付いた透明シートのことだ。ほら、暇があったらついその「プチプチ」を潰したくなる、あれのことですよ。


このプチプチがなぜか今、ブームらしいのである。


そこで最大手メーカーの川上産業では、本来の包装用途ではなく暇つぶしアイテムとして加工されたプチプチシートを売り出した。誰がそんなもんわざわざ買うねん! と思うでしょ。ところがこれが売れたらしい。


「ひまなとき、イライラしたとき、失恋したときにスカットしましょ」というキャッチフレーズが付いた「プッチンスカット」は10センチ角のシートが15枚入って231円。さらに潰した時の音が通常の3倍という「プッチンスカットセレブ」は600円。「プッチンスカット」はテレビや雑誌で取り上げられ(冗談みたいな話だけれど、どうも本当らしい)、週間販売数が1000個に達したという。


これをたった1000個と取るか、この先に伸びシロのある1000個と取るかで「プッチンスカット」引いてはプチプチ関連グッズのマーケットサイズが見えてくる。ここまでいうといささか大げさかもしれない。仮に1週間に1万個売れたなら売上ベースで231万円。てことは年間ベースなら×52となるから1億2000万。
 

ということは、仮に倍々ゲームぐらいで伸びていくと、2年後ぐらいには年間ベースで5億円マーケットになる。これぐらいまで伸びるとなれば、もしかしたら年商120億円の川上産業にとっては相当なヒット商品ということになりうる可能性はある。


そこまで見越してのことなのかどうかは不明だが、同社はプチプチ文化研究所なるシンクタンク(!)を発足させてもいる。おもしろい。こういうことをやれる企業というのは、率直に好きだ。その研究所で所長を務める杉山彩香所長がプチプチについてなかなか含蓄のある説明をなさっている。

「言葉が通じなくても、シートを渡すと笑顔でつぶし始めるのは万国共通。モノを包むクッションだけでなく、人と人とが交わるクッションにもなるんです」
(前掲、日経MJ新聞)


この説明はいわゆるアフォーダンスに通じる話ではないか。アフォーダンスとは心理学用語であり「そのものをどのように使うことができるかを決定する最も特徴的な意味(D.A.ノーマン『誰のためのデザイン』新曜社、2000年、14ページ)」である。たとえばドアのノブを見れば、それは回すものだとたいていの人は直観的に理解できるだろう。


これをプチプチに当てはめれば、人はプチプチを見れば粒々を潰すものだと直感的に理解するということになる。本当か知らんと疑う人は、自分がプチプチを初めて潰した時のことを思い出されたい。たぶん、何も考えずにプチプチ潰しを始めた人が大半のはずだ。この何も考えずにやってしまえることが、アフォーダンスの肝である。


そして人がアフォーダンスを感じるものは、病み付きになる可能性もある。そこに目を付けたのがバンダイだ。バンダイはなんと「むげんプチプチ」なるオモチャを9月に売り出すという。この手のひらサイズのオモチャにはプチプチが8個ついていて、何度でもプチプチ潰しを楽しむことができる。そして音に仕掛けがあって、100回に1回の割合でおならだとか女性の声とかの効果音がする。


この「むげんプチプチ」は1個819円。これをバンダイでは発売半年で100万個売る予定らしい。小売りベースで8億の売上である。この目論見がうまくいくかどうか、ちょっと見物だ。


個人的には「プチプチ」の魅力は、一度潰してしまったプチプチは二度と元通りには戻せない点にあると思っている。あえて言葉を当てるなら「諸行無常」感とでもいえばいいだろうか。「あぁ〜、また一個潰してしまった。と同時に二度と戻ってこない時間を、プチプチ潰しなんかに費やしてしまった」という切ない感覚である。


だから使い切りの「プッチンスカット」は売れるだろうけれど、「むげんプチプチ」は売れるかどうか微妙なところだと見ている。とりあえず明日8月8日は「プチプチの日」、川上産業では全国の主要駅でプチプチグッズを配ってくれる予定らしい。明日、出かける予定のある方は、ちょっと探されてみてはいかがだろう。



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昨日の稽古:富雄中学校武道場

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